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なまらあちこち北海道|北海道にゆかりのある人たちだけのバレエ始動・札幌市

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北海道で、北海道の人たちによるバレエ公演が催されます。このほどそのオーディションが実施され、メンバーが確定しました。北海道に新しいバレエ文化の誕生です。

ダンサーは北海道ゆかり バレエ「くるみ割り人形」12月に札幌で

 札幌文化芸術劇場ヒタル(札幌市中央区)が地域と連携してつくり上げる「ヒタルバレエプロジェクト」の第1回公演「くるみ割り人形」全幕(12月9、10日)に向けた準備が本格的に始まりました。
 道内在住・ゆかりのダンサーを対象としたオーディションが行われ、出演者が決定。ゲストには日本を代表するダンサーの一人、上野水香さんらの出演が発表されました。稽古も間もなく始まります。主要キャストに決まった出演者や演出・振り付けを担当する札幌舞踊会の千田雅子代表に、プロジェクトにかける思いを聞きました。(文化部 中村公美)
オーディションで選ばれた山田優七さん、佐々木麻菜さん、鳴海絆菜さん(右から)=小室泰規撮影

オーディションで選ばれた山田優七さん、佐々木麻菜さん、鳴海絆菜さん(右から)

 ヒタルバレエプロジェクト
札幌文化芸術劇場ヒタルを運営する札幌市芸術文化財団が主催し、地元のバレエ団体や芸術家らと協力してバレエ作品を制作・上演する企画。札幌の冬の風物詩を目指し、オペラ(ヒタルオペラプロジェクト)と毎年交互に行う。道内の若手ダンサーや指導者、スタッフの育成とともにバレエファンの拡大を目指す。

北海道ゆかりが条件

 「次は260番、261番…」。観客のいないヒタルに、オーディション参加者の番号を告げるマイクの声が響きます。舞台上では参加者が3~5人ずつ、その場で直前に示された課題をピアノ演奏に合わせて踊ります。
 3月18日に行われたオーディションのひとコマです。応募の条件は北海道在住か、ゆかりがあることですが、プロジェクトへの関心の高さを反映するように、事務局の予想を大幅に上回る219人が参加しました。女性が200人、男性は19人。年齢も10歳から55歳までと、幅広い世代が集まりました。
直前に示された課題の振り付けを覚えるオーディション参加者たち。この後、小グループごとに審査が行われた=3月18日、ヒタル(桶谷駿矢撮影)

直前に示された課題の振り付けを覚えるオーディション参加者たち。
この後、小グループごとに審査が行われた。

 オール北海道で夢の舞台をつくりあげる―。その一員に加わることを願う気持ちが、会場で出番を待つ参加者の表情からひしひしと伝わってきます。張り詰めた空気の中、道内のバレエ指導者ら審査員4人も、真剣に動きを見つめます。
 午前10時半から始まったオーディションは、子役と大人に分かれて行われ、すべて終了したのは午後7時。その後審査員で協議し、午後11時には89人(女性71人、男性18人)の合格が決まりました。審査員らは「応募者数の多さと、その水準の高さに驚いた」と振り返りました。
小グループごとに審査を受ける参加者たち=3月18日、ヒタル(桶谷駿矢撮影)

小グループごとに審査を受ける参加者たち

 

真剣なまなざしで参加者の動きを見つめる審査員ら=3月18日、ヒタル(桶谷駿矢撮影)

真剣なまなざしで参加者の動きを見つめる審査員ら

クララは札幌の鳴海さんと山田さん

 「くるみ割り人形」は、クリスマス・イブにくるみ割り人形を贈られた少女クララが、人形に姿を変えられていた王子とともに夢の世界を旅する物語。心が浮き立つようなチャイコフスキーの音楽と、華やかで多彩な踊りが特長です。クリスマス時期になると、世界中で上演されるクラシック・バレエを代表する演目で、「白鳥の湖」「眠れる森の美女」とともに「3大バレエ」と言われています。静かな美しさをたたえた雪の精の群舞や、きらきらと輝くような「こんぺい糖の精」の踊りなど、見どころが絶え間なく続き、バレエ愛好家だけでなく、初めて見る人も楽しめる演目です。
 オーディションで選ばれた89人のうち、注目を集めるのが、全幕を通じて物語の中心的な存在を担うクララ役です。演じるのは、ともに札幌市在住の鳴海絆菜(きずな)さん(中1)と山田優七(ゆな)さん(小6)で、2人とも小林絹恵バレエスタジオ(札幌)所属です。
 鳴海さんも山田さんも、すでに数々のバレエコンクールでの受賞歴があります。それでも鳴海さんは「(舞台の)オーディションを受けるのは初めてで、上手な人がたくさんいたので自分がクララに決まるとは思わなかった」と振り返り、「まっすぐな明るい雰囲気が持ち味なので、自分ならではのクララを表現できたら」と意欲を燃やします。山田さんは「舞台や映像で『くるみ割り人形』を見ていて、ずっとクララをやりたいと思っていました」と念願の役だったそう。「今でもすぐ踊り出したいくらい、わくわくしています」と笑顔を見せました。
Wキャストでクララ役を演じる鳴海絆菜さん=小室泰規撮影

Wキャストでクララ役を演じる鳴海絆菜さん

同じくクララ役の山田優七さん=小室泰規撮影

同じくクララ役の山田優七さん

 第2幕のクライマックスで登場し、観客を魅了する踊りを披露する「こんぺい糖の精」には、帯広市在住の佐々木麻菜さん(28)が選ばれました。佐々木さんは、ロシア連邦を構成するブリヤート共和国の国立オペラ・バレエ劇場の研修生を経て、2018年に同劇場に入団。ファースト・ソリストとして活躍していました。
 しかし、ロシアのウクライナ侵攻の影響から、2022年4月に帰国。その後は故郷の帯広を拠点に公演や指導などの活動をしています。「ブリヤート共和国の劇場で、初めて主役として出演したのも『くるみ割り人形』。北海道が誇る素晴らしいヒタルという劇場で踊ることができるのは本当にうれしい。全力を尽くしたい」と思いはひとしおだと言います。
「こんぺい糖の精」役の佐々木麻菜さん=小室泰規撮影

「こんぺい糖の精」役の佐々木麻菜さん

日本のトップダンサーも客演

 オーディションで選ばれた出演者に加え、ゲストダンサーとして、東京バレエ団のゲストプリンシパルの上野水香さん、英バーミンガム・ロイヤル・バレエの元プリンシパル、厚地康雄(あつじ・やすお)さんが参加することも決まりました。
 上野さんは「こんぺい糖の精」を、厚地さんは王子を演じます。「こんぺい糖の精」の振り付けは、ダンサーそれぞれの持ち味を生かすため、オーディションで選ばれた佐々木さんと上野さんとでは異なるものになるそうです。
 上野さんはモーリス・ベジャール振り付けのバレエ「ボレロ」で、主役を踊ることを日本人女性で唯一許されたダンサーで、常に第一線で活躍し続けています。高い技量と繊細な表現力で世界中を魅了してきた上野さんの踊りは、この作品をより印象的なものにすると期待されています。王子役の厚地さんは、長身を生かした躍動感のある踊りと気品あふれるたたずまいが持ち味です。
ゲストダンサーとして「こんぺい糖の精」役を務める上野水香さんⒸKENTARO MINAMI

ゲストダンサーとして「こんぺい糖の精」役を務める上野水香さん

 

ゲストダンサーで王子役の厚地康雄さん

ゲストダンサーで王子役の厚地康雄さん

 4月中旬からは、ヒタルと同じ建物にある「クリエイティブスタジオ」で、場面ごとの稽古が始まる予定です。舞台装置や衣装も、ヒタルの雰囲気にふさわしいように新たに制作することが決まっています。
 ヒタルは「同プロジェクトを地域に根付いた息の長い取り組みにしていくためにも、さらに認知度を高めていくことが重要」と考えています。今後さまざまな関連事業を展開し、広く一般市民に北海道バレエの魅力を発信していく方針だと言います。公演回数や各キャストの出演日程などは、随時発表されます。

「バレエ王国」北海道を発信

 演出・振付担当の札幌舞踊会代表の千田雅子さんの話
 「今回のオーディションには道内全域から予想を超える数の踊り手が集まりました。出演者はその中から選ばれた人たちなので、踊りの水準がとても高い。これは道内各地にバレエスタジオが多く存在し、長い間、熱心に活動を続けてきたからこそ。そんな背景があるからこそ北海道は『バレエ王国』なのだと実感しました。
 本プロジェクトの『くるみ割り人形』の演出の特徴は、クララを軸に話が進むこと。クララと王子の淡い恋を、二人が旅する夢の世界の中で描いていきます。クララは出ずっぱりとなり、非常に重要な存在。当初はクララの配役は1人だけの予定でしたが、鳴海さん、山田さんともに非常に技術や表現力が高く、かつ持ち味が大きく違いました。それならばと、最終的にはダブルキャストとなったのです。複数回観劇することで、踊り手により作品の印象が変化することを楽しんでもらえるのではと思います。
 そして佐々木さんはブリヤート共和国で経験を積んだことで、ますます魅力的な踊り手となり、審査員の全員一致で『こんぺい糖の精』に決まりました。ゲストダンサーには抜群の知名度があるカリスマ的存在の上野水香さん、知的で美しく人間的にもすばらしい厚地康雄さん。そして音楽は北海道が誇る札幌交響楽団が盛り上げてくれる。出演者にとっては、一流のものを生で学ぶ良い機会です。」

「オール北海道の力ですばらしい舞台を作り上げたい」と力強く締めくくりました。

(参考:北海道新聞ニュースエディター)

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