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インバウンドの影響もあり、函館山の山頂展望台が混雑しています。様々な工夫をしていますが、今のところ効果的な対策が見つかっていない状況です。
3連休初日の9月14日午後6時、日没直後の函館山山頂展望台は観光客でごった返した。10分、20分とたっても前列の客はスマホを夜景に向け続けるなどしてその場にとどまり、人垣は五重、六重へと膨れあがる。後ろの客は懸命に背伸びをしてスマホのシャッターを切り、中にはいらだって舌打ちする人もいた。
■滞在時間長く
函館山ロープウェイの利用客は昨年度は153万7千人。本年度はこれを上回るペースだが、過去最多だった2016年度の197万8千人には及ばない。それでも混雑は慢性化しており、同社は「交流サイト(SNS)の普及で動画や写真を撮るために滞在時間が長くなる傾向も影響している」と話す。
旅行形態の変化を指摘する声もある。13年度は半々だったという個人客と団体客の割合は23年度は個人客が74%に。滞在時間が限られる貸し切りバス客が減り「客の入れ替えが進みにくくなった」と話す観光関係者もいる。
観光客の満足度低下も懸念される中、市や函館山ロープウェイが力を入れるのが分散化だ。9月10~16日は、展望台より低い場所にある「漁火公園」などを発光ダイオード(LED)で彩るイベントを初開催。14日に函館山を訪れた苫小牧市の会社員羽生洋也さん(24)は最初は展望台に行ったものの「混みすぎてしばらく(夜景が)見えなさそうなので諦めた」といい、漁火公園へ。眺望は山頂駅の建物に一部遮られるが、羽生さんは「十分きれい。満足です」と笑顔を見せた。
イベント期間は漁火公園など展望台以外のチェックポイント3カ所を巡るデジタルスタンプラリーも企画。ただ、14日に漁火公園を訪れた人はまばらで、市観光企画課も「本格的な分散につながったとまでは言えない」と漏らす。市は今春から定期的に、同公園の魅力向上などについて地元の高校生や大学生らと意見交換を重ねており、若者を引きつけるPR方法も探っている。
譲り合い促す
函館山ロープウェイは展望台に誘導員を配置するが、主な役割は通路の確保で、見学マナーの呼び掛けまで手が回らないのが現状だ。8月からは展望台の手すり計12カ所に「ゆずり合って景色を楽しみましょう」と4カ国語で書かれたサインを設置。索道サービス部の杉田圭夫部長は「がっかりして帰られるのが一番つらい。少しでも心に響いてくれれば」と願いを込める。
市は8月1日から9月30日まで、午後8時以降に搭乗したロープウエーチケットを山麓の西部地区の飲食店10店で提示すると割引などが受けられる「ゆったり夜景とヨルメグリ」を開催した。展望台が空いている遅い時間帯の来訪を促す狙いだが、参加店の一つのクラフトビアバー「ホワイト シード」(末広町)にチケット持参で訪れた人は期間中で3~4組ほど。店主の平松祐太郎さん(36)は「狙いはいいと思うが、夜景観光後は大門、五稜郭の両地区で食事をする人が多い印象」と話す。
市は本年度、ロープウエーの混み具合を示す電子看板を市電十字街電停に設置するなどハード面での対策も講じる。函館山ロープウェイの浅井忠美社長は「これ一つで全ての問題が解決するという対策はない。観光の質を低下させないよう、市と連携しあらゆる取り組みの検証と改善を重ねていく」と力を込める。
(参考:北海道新聞 朝のヘッドライン)
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