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函館湯本啄木亭で行われた将棋の「王位戦」。その流れを野月八段が分析しています。
渡辺九段が藤井七冠に完勝 将棋の王位戦第２局 副立会人の野月八段が振りかえる
将棋の藤井聡太王位（22）=竜王、名人、王座、棋王、王将、棋聖との七冠=に渡辺明九段（40）が挑んでいる「伊藤園お～いお茶杯第65期王位戦7番勝負」（北海道新聞社など新聞三社連合主催）。
7月17、18日に函館・湯の川温泉のホテル「湯元啄木亭」で指された第2局は、渡辺九段が勝利し、1勝1敗のタイに戻しました。副立会人を務めた野月浩貴八段（51）=札幌市出身=にこの1局を振り返り、寄稿していただきました。
第65期王位戦第2局で初手を指す渡辺明九段（右）。左は藤井聡太王位。
後列右端が筆者の野月浩貴八段
北海道将棋界で夏の恒例行事といえば、王位戦北海道対局です。今年の舞台は函館。湯の川温泉のホテル「湯元啄木亭」で17、18日に、「伊藤園お～いお茶杯第65期王位戦7番勝負」第2局の対局が行われました。
対局前日の16日には前夜祭が行われ、関係者と将棋ファンあわせて約180人が参加しました。大泉潤函館市長も歓迎のあいさつをしました。
藤井聡太七冠=王位、竜王、名人、王座、棋王、王将、棋聖=と挑戦者の渡辺明九段も交流を楽しんでいました。
前夜祭の前には五稜郭を訪問。タワーの展望エレベーターが開くと多くの報道陣とファンの方々に出迎えていただきました。
対局前日、五稜郭タワーを訪問し、報道陣や観光客の前で函館の
印象を語る藤井王位（右）と渡辺九段
宿泊は隣接する「HAKODATE海峡（うみ）の風」で、展望温泉付きの部屋は広くて快適でした。
対局1日目は午前9時開始となります。立会人は森内俊之九段。副立会人は私で、勝浦修九段（紋別市出身）の弟子二人によるコンビで対局を管理します。
立会人、副立会人の業務は対局が問題なく行われるように努めて、トラブル等があった場合の裁定をします。対局室が不便なく快適に過ごせるか？のチェックも管理します。また、主催紙に対局の現状を伝え、紙面記事の将棋部分の解説も行います。
現地大盤解説会で聞き手を務める妹弟子の久津知子女流三段（札幌市在住）や、日本将棋連盟の非常勤理事で本局を担当する行方尚史九段も対局開始を見守りました。
対局は先手番の渡辺九段が相掛かりの戦型に誘導しました。第1局の千日手指し直し局と同じ進行で、両対局者が前局を踏まえて、研究をアップデートした戦いとなりました。24手目に後手番の藤井七冠が手を変えて、前局の前例から離れて未知の局面を迎えました。
詳しくは「前局に続き相掛かりの戦型に 函館で王位戦第2局1日目」
52手目☖3四角と打った局面で午後6時を迎えて差し掛け。先手番の渡辺九段が封じ手用紙に指し手を記入して、立会人の森内九段に渡しました。封じ手は2通用意されて、1通は森内九段、もう1通は主催の担当者が厳重に管理します。
2日目も午前9時に対局が再開。初手から前日までの指し手を再現して、9時少し前に森内九段が開封して封じ手を読み上げます。
立会人の森内俊之九段（右）が示した封じ手を指す渡辺明九段（中央）。
左は藤井聡太王位。左から2人目が野月浩貴八段
2日目は渡辺九段のペースで中盤戦が進行していきました。午後3時からはホテルで現地大盤解説会が開催されました。私と久津女流が担当して、森内九段もゲストとして登壇しました。
道内外から約300人の将棋ファンが集まり、勝負の行方を見守ります。近年の大盤解説会は女性の参加が増えて、会場によっては女性の参加者が多数を占めることも少なくありません。
対局を終え大盤解説会場に訪れた両対局者。右から野月八段、藤井王位、
渡辺九段、久津女流三段
１日目の指し掛け図。この３手前、渡辺は５六角（４９手目）と打ち、ペースを握った
対局は渡辺九段が49手目☗5六角と好位置に角を打ってペースを握り、61手目☗7四歩や、65手目☗3五歩から以下☖同銀☗3四歩☖4五桂に☗2五飛と浮いた手などの指し方が冴（さ）えわたり、優勢を拡大してそのまま押し切りました。ほぼノーミスで完璧な勝利といっても過言ではありません。藤井七冠にはチャンスがありませんでした。これで1勝1敗のタイ。
（参考：北海道新聞：デジタル発）
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