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「こーれとこーれで合った人、うえー! したー!」。班分けなどで2組に分かれる際、稚内には手のひらと甲を見せ合う独特の掛け声がある。一方、最近の小中学生には、グーとチョキを使う道内でもなじみ深い「グーチー」が浸透。みなさん、チーム分けってどうしていますか―。
班分けの「手」あなたは何出す? 「うえー!したー!」裏表見せる稚内流 若者は「グーチー」多数派に
初めて見るチーム分けに驚いていると、「稚内にいるのに、知らないの?」と返されてしまった。手のひらと甲を見せる「裏表」方式が稚内では主流なのだろうか。
「境界」20代半ば?
実態を探るべく、まずは最も多用する年頃であろう小学生の元に足を運んだ。
稚内南小の体育館で遊んでいた児童10人超に尋ねたところ、答えてくれた全員が「グーチー」派で、「裏表」派はゼロ。5年の紅屋梨杏(りあん)さん(11)は「バドミントンの少年団ではダブルスのペアを作る時に、先輩から教わった『裏表』を使うけど、学校だとみんなも分からないから『グーチー』」と話す。
稚内中央小出身で、同スポーツパーク館長の飯田俊哉さん(27)は「小学校時代、ドッジボールやサッカーをする時はいつも『裏表』でチーム分けをしていました」と振り返った。現在、同スポーツパークでカーリングのチーム分けをする時は「10代の子に『裏表』は全く通じない」と苦笑い。
この施設で、小学5年生から50代まで稚内出身の10人に尋ねたところ、年代が上の世代は「裏表」、若い世代は「グーチー」と二分され、どうやら20代半ばあたりに境界がありそうだ。
なお、留萌出身者に聞いてみると、25歳の会社員女性も、59歳公務員男性も、市内在住の中学1年生も「グーとチーで合った人」だった。
なぜ稚内では世代間で違いが生じたのか。稚内以外からの転校生によって「グーチー」がもたらされ、若い世代に急速に広まったのだろうか。あるいはインターネットや漫画の影響か。小学校の教諭らに心当たりを尋ねたが「そういえば、最近『裏表』は見ないね」とは言うものの、はっきりとした理由は突き止められなかった。
北海道子ども会育成連合会(札幌)の担当者は「チーム分けの掛け声は年長者から子どもに自然とつながっていくもの。札幌近郊で『裏表』はなじみがないですね」という。
「天ぷらこっこコケコッコ」「グーパー」 掛け声 地域ごとに個性豊か、九州では。
全国に目を向けると、掛け声は違えども、「裏表」の動作をする地域は他にもあるようだ。絵本作家で児童文化研究者の故加古里子(かこさとし)さんの著書「伝承遊び考4 じゃんけん遊び考」によると、宮崎や鹿児島など九州地方でも使うと記されている。

稚内で取材した佐賀県出身の男性(26)は「うーらかおーも天ぷらこっこコケコッコ」という掛け声を教えてくれた。宮城県出身の複数の知人も「裏表」を使うという。 ちなみに青森県出身の記者が使っていたのは、グーとパーで分ける「グーパー」だ。
加古さんは、著書の中で次のように分析している。「(子どもたちは、チーム分けのための)『じゃんけん』の掛け声に、これからの希望を託す。(中略)さまざまな思いが、長短の言葉に託され、多彩な音韻に綴られる」。掛け声の背景には、めくるめく世界が広がっているのかもしれない。お正月、家族や友人の集うだんらんのひととき。思い出の掛け声で座席やグループを決めてみるのも一興ではないでしょうか。
(参考:北海道新聞 有料記事)
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