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高校球児と言えば、丸刈りの頭というイメージがありますが、それも様変わりして行くようです。昨年夏甲子園で優勝した慶応高校の部員は自由な髪形で話題を集めました。今は全国的にその方向に進んでいるようです。
「丸刈りにしたくない」 札幌の高校球児、多様化する髪型 背景に何が
道内の高校球児で「脱丸刈り」が近年、急速に進んでいるようです。北海道新聞社が今夏、北海道高校野球連盟(道高野連)札幌支部に所属する全57校を対象に行った調査では、部員の頭髪について、丸刈りを求めず「自由」としたのは8割に上りました。「高校球児といえば丸刈り」との従来のイメージは、変わりつつあるようです。その背景を探りました。
部員確保へ「強制の時代でない」
調査は、秋の高校野球札幌支部予選が開幕する前の8月下旬~9月中旬に実施。全57校に電話などで調査したところ、部員の頭髪について、全員が「丸刈り」と回答したのは19.3%(11校)、「自由」「本人の意志に任せる」など丸刈り以外としたのは80.7%(46校)でした。
一律の丸刈りを見直した理由に「丸刈りが嫌で野球をやめる選択をしてほしくない」「丸刈りを強制させる時代ではなくなった」などを挙げる学校がほとんどで、野球の競技人口の減少を念頭に置いた意見が目立ちました。
「20年前は札幌支部のほとんどの学校が丸刈りだった」。札幌南が2000年夏の甲子園に出場した当時の主将で、同校野球部監督の田畑広樹さん(42)は、こう振り返ります。道高野連札幌支部の渡部弘幸事務局長も「ここ10年間で選手の髪形は劇的に変わった。丸刈りを嫌がる傾向は強まっている」と話します。
日本高野連(大阪)が全国の硬式野球部を対象に昨年度実施した「高校野球実態調査」では、部員の頭髪を「丸刈り」と回答した道内の高校は15.2%で、10年前の72.2%から約60ポイントも減少。全国も傾向は同じで、13年度の79.4%から昨年度は26.4%と大きく減りました。
部員不足を背景に、恵庭北は22年から丸刈りのルールを廃止しました。野球経験者が20人以上入学した年に、「丸刈りにしたくない」と5人しか入部しなかったのがきっかけです。
頭髪を一律に丸刈りとしたルールが野球の裾野を狭める一因となっているとして、頭髪を自由化したところ、部員の髪形は丸刈りやスポーツ刈りなど多様に。その後の部員確保にも結びついているといいます。石狩南も同様の理由で、24年度から一律のルールをやめました。
「伝統」「覚悟の意思表示」の意見も
強豪校でも脱丸刈りの流れは進んでいます。22年夏の甲子園に出場した札幌大谷は、23年から頭髪を自由化しました。「自己表現の多様化など時代の流れを踏まえた」(金沢大亮部長)といい、前髪が眉毛にかからないなど細かなルールは選手たちが自主的に決めているといいます。立命館慶祥も22年から一律の丸刈りルールを廃止しました。
一方で、一律の「丸刈り」にこだわりを持つ学校もあります。北海は「伝統で当たり前のように丸刈りにしている」。北星学園大付属は「(丸刈りは)3年間苦しいことを乗り越える覚悟の意思表示」、札幌国際情報は「帽子をかぶった時に楽だから」としています。
一時は自由化された頭髪を再び一律の丸刈りに戻したところもあります。春夏の甲子園出場計6回を誇る札幌第一は「新しいことに挑戦しよう」(菊池雄人監督)と19年に一律の丸刈りをやめたが、部員や保護者から「手間がかからない」「経済的負担が少ない」など復活を求める声が上がり、元のルールに戻しました。
専門家「当然の流れ 今後も進む」
高校野球の歴史に詳しい高知大の中村哲也准教授(地域スポーツ社会学)によると、1990年代に高校球児の間で全国的に脱丸刈りの流れが広がった。93年開幕のJリーグの影響で、サッカー人気に押される危機感から、丸刈りをやめるチームが増えたといいます。
部員の頭髪が技術力や一生懸命さを表すものではありませんが、中村准教授は「花巻東(岩手)や中京大中京(愛知)など全国の強豪校でも脱丸刈りが進んでおり、今後も進む」と指摘します。その上で「頭髪は外見に関わるものであり、緩和の動きは当然の流れとも言える。これが高校野球のさらなる進化につながるのでは」と話しています。
(参考:北海道新聞夕方のニュース)
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