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なまらあちこち美味いもの|柑橘類の個性・札幌卸売市場

グルメ

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札幌市中央卸売市場の近くにある「さっぽろ青果館」には、市場で取引された青果を売る店が並んでいます。その一角、果物を扱う中野商店の店頭に、オレンジ色も鮮やかに、さまざまな種類の柑橘(かんきつ)類が並んでいました。

2月は柑橘(かんきつ)類がたくさん並ぶ、「さっぽろ青果館」内の中野商店の店頭

2月は柑橘(かんきつ)類がたくさん並ぶ、「さっぽろ青果館」内の中野商店の店頭

 

名前は?

「2月は柑橘がたくさん店頭に並びます。種類も多いので、ぜひいろいろ試してみてくださいね」(中野商店の中野功代表)

でも、名前は聞いたことはあるけど、見分けはなかなかつきません。甘いのか酸っぱいのか、個性が分からぬまま。なんとなく敬遠されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 下の写真は筆者が購入した4種類の柑橘です。さて、全部の名前、分かるでしょうか?

市場近くで買ってきた4種類の柑橘。どれがどれだか分かりますか?

市場近くで買ってきた4種類の柑橘。どれがどれだか分かりますか?

 

「左のデコポンは分かる、でも残りは自信がない…」という方、きっと一番多いのではないでしょうか。最初に取り上げるのは、一番手前、この中で最もオレンジ色が濃いイヨカン(伊予柑)です。

その名の通り、収穫量の9割以上が、かつて「伊予国」と呼ばれた愛媛県が産地です。札幌市中央卸売市場には1月末から入荷が増えています。3月まで販売されていますが、2月中旬が最もボリュームの多い時期に当たります。

「実は、イヨカンはシーズンの初めほど産地から大きな玉が出てきます。昨年末に8割方を収穫していますが、大きい玉ほど実の水分が抜けやすく、パサパサになりやすいんです」(札幌みらい中央青果の木沢岳志常務)。シーズン前半の方が、より大きい果実を楽しめそうです。

今シーズンは産地で夏場に雨が少なく、実が大きくなっていないところに、秋口に雨が多く降り、果皮が割れてしまうなどの障害が多く出たそうです。小玉傾向に加えて、果皮障害によってジュースなどの加工用に回るものが多く、市場への出荷量は前年の9割程度、価格も前シーズンより少し割高になっています。

札幌みらい青果が扱うイヨカンの多くを生産する愛媛県のJA西宇和の三崎柑橘共同選果部会、朝井伸事務所長にも今シーズンのイヨカンの出来を聞きました。「昨シーズンより生産量は少ないけれど、昨冬の天候条件が木によい刺激を与えたため、糖度は近年にないほど高くなっていますよ」と教えてくれました。

しかし、イヨカンは近年、生産量が減少傾向にあります。農林水産省が直近の調査で示した2018年の出荷量は2万8千トン。10年前の半分以下にまで落ち込んでいます。

 

なぜ、これほど急激に減ってしまっているのでしょうか。朝井事務所長に産地の様子を聞きました。「生産する組合員が減少してしまっているのが大きな理由です。10年前に500人いたのに、今は210人ほどに減ってしまいました」

イヨカンの不振には、消費者の好みの変化もあるようです。2月中旬になると、卸売市場でイヨカンと入れ替わるように量が増えてくるのがデコポン。より甘くて、皮が薄くて食べやすい。柑橘類の中でも人気となっているデコポンは最近、イヨカンより生産量を増やしています。

「甘くて食べやすい」 イヨカンに替わってトップに浮上

 北海道内のスーパーでは時々、デコポンと似た形状の柑橘(かんきつ)が「不知火(シラヌイ)」という名前で売っていることがあります。どう違うのでしょう。

 「不知火もデコポンも同じです。糖度が13%以上などの条件を満たしたものが、『デコポン』として売られています。果皮やじょうのう(果肉の粒を包んでいる袋)も軟らかく、ミカン感覚で食べられることから、最近ではより人気がありますね」(札幌みらい青果の木沢常務)

写真左端のデコポンをむいてみました。皮が軟らかく、爪を立てなくてもサクサクとむくことができます。甘さも十分。ただ、イヨカンより酸味は少なく感じます。

出荷量の減少が続くイヨカンに対し、不知火(デコポン)は減少幅が小さく、2016年から出荷量の逆転が続いています。

 

店頭では不知火と表記されている果実の中にも、デコポンに負けない甘味の強いものも含まれているとのことです。「産地に十分な数の、糖度を測るセンサーがないなどの理由で、ほとんどを不知火として出荷している産地もあります」(札幌みらい中央青果で柑橘類を担当する小笠原康人課長)。不知火の卸値はデコポンより3割ほど安いのですが、それでも、イヨカンよりは3割ほど高くなっています。

酸味とサクサク食感、懐かしい味わい

 イヨカン、デコポン。写真にある残り二つは何でしょう。

手前がイヨカン、左がデコポン。さあ、あと2種類は?

手前がイヨカン、左がデコポン。さあ、あと2種類は?

 

奥にある大きな果実は甘夏(アマナツ)です。年末から5月ごろまで長い期間市場で売られています。果皮が厚くて硬く、手でむくのはかなりたいへん。包丁で切れ目をつけてから、むいていただきました。

イヨカン、デコポンと頂いた後に食べると、色の薄い果肉の甘夏は酸っぱさが際立ちます。どことなく懐かしい味わい。甘い味が支配していた口の中に、爽やかな酸味の甘夏の風味が広がります。さっぱりとしてとても心地よく頂けました。

最後、右端に写るのはハッサク(八朔)でした。道内では3月ごろまで流通しています。こちらも果皮は硬く包丁で4分の1に割っていただきました。ほかの柑橘より果肉の粒がしっかりしており、サクサクとした食感。甘味と酸味がほどよくて、私は一番のお気に入りでした。

4種の柑橘を連続で頂いてみて、その個性の違いに改めて気がつきます。そして、甘夏やハッサクとは、ずいぶんとご無沙汰だった気がしました。

いつも、何気なく買っていると、子どもたちもむきやすくて食べやすいミカンやデコポンを無意識に選んでいました。酸味が強い柑橘のおいしさに改めて目が向くと、最近の生産量が気になってきました。

負のループ「売れない→作らない→単価高」

農林水産省の「特産果樹生産動態等調査」によると、甘夏を含むナツミカンもハッサクも出荷量は減っていました。直近のデータがある2018年の出荷量はいずれも10年前より3割近く減っていました。

ミカンの収穫が終わった年明けから5月ごろまで流通する中晩柑と呼ばれる柑橘類を8年ほど担当する札幌みらい青果の小笠原課長はちょっと寂しそうな様子で話してくれました。「中晩柑は年々売れなくなってきています。手で簡単にむけないものは消費者に好まれず、スーパーの棚に上らなくなっているのです。

売れないから産地も作らない、量が減ってしまうと単価が高くなってしまう。そうするとまた売れなくなる、悪いループになってしまっています」

中晩柑にとってライバルだった輸入グレープフルーツの不振も影響しているといいます。「薬との飲み合わせなどが指摘され、グレープフルーツの市場は5~6年前から、急速に小さくなってしまいました。それに合わせて、スーパーの棚面積が中晩柑も小さくなってしまいました」(小笠原課長)。

ライバルが失速し、市場を広げたのではなく、一緒に市場が縮小してしまったのだそうです。では、柑橘が失ったスーパーの棚を埋めているのは何でしょう。「輸入ブドウですよ。洗ってすぐ食べられるため、手軽なんでしょうね」(木沢常務)。

特産果樹生産動態等調査では90種類近くの柑橘類の出荷量が調査されています。大きな文旦(ブンタン)や、これから出荷が本格化するジューシーな清見(キヨミ)、年明けに多く流通していたポンカンなど、まだまだ個性派はたくさんありました。

 

しかし、残念なことに、加工用の需要が増えているユズなど一部を除き、多くの生産量は減少傾向にありました。

「酸味の強い果実はどんどん食べられないものになっています。産地ではちょっと酸があった方が、甘味も強く感じられると思うのですが、都市部を中心になかなか、受けいれられなくなっているんですよね」。JA西宇和の朝井さんも残念そうです。

多種多様な柑橘を味わうことができる2月。ちょっと包丁で切れ目を入れる手間だけで、新たな個性に出会うことができます。

あなたも、新しい出会いに挑戦してみませんか?新たな発見があるかもしれませんよ。

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