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海水温の上昇が、思わぬ魚の漁になって、浜を困惑させている。温暖化の影響はどこまで私たちを惑わせるのか。
函館市の南茅部地区などの太平洋沿岸で8月31日以降、通常はほとんど漁獲されないカツオがまとまって水揚げされ、「こんなことは初めて」と水産関係者を驚かせている。専門家は暖流の黒潮の勢いが増した可能性もあるとみている。
南茅部地区では31日、ブリなどを漁獲する定置網にかかり、カツオ1.2トンが水揚げされた。函館市水産物地方卸売市場はこのうち540キロを入荷。1キロ900~1050円で取引された。
10キロを競り落とした紺地鮮魚(函館)の紺地慶一代表(62)は「函館産と聞き、まさかと思った。脂が乗って身も締まり、得意先からも好評」と話す。
同地区では今月3日にも300キロ、椴法華地区でも5日に50キロがそれぞれ水揚げされた。
カツオは例年、餌のイワシを追い、暖流の黒潮に乗って8、9月に三陸沖北部まで北上する。カツオの生態に詳しい茨城大の二平章客員研究員は「北海道でまとまって漁獲があったという話は聞いたことがない。今年は何らかの要因で黒潮の勢いが強く、たどり着いたのではないか」とみる。
函館近海はスルメイカの漁獲が激減し、温暖化による海水温の上昇で来遊が減ったとの指摘がある一方、従来北海道より南方で漁獲されていたブリやサバなどが増えている。
温暖化でフグやシイラ、カマスも水揚げ
海水温上昇に伴い、道内では近年、山口県などで水揚げされてきたフグや、九州特産のシイラ、カマスなど、暖かい海を好む魚が次々に水揚げされる。
昨秋、大量のフグが水揚げされた網走市。網走漁協によるとその大半は道外で消費された。北見食品工業(網走)の田中京佑部長は「フグをさばくには調理免許が必要で、地元で持っている人は少ない」と語る。
黒潮の支流、東北沖まで北上
海洋研究開発機構(神奈川)によると、近年、国内では海流の著しい変化が起きている。北海道沖の寒流の親潮の勢いが弱まり、2022年から太平洋沿岸を流れる暖流の「黒潮続流」が東北沖にまで北上した。
なぜ海流がここまで変わるのか、いつまで続くのか、詳細はわかっていない。
ただ美山透主任研究員は「地球温暖化の影響で、こうした異常は今後も続発する可能性がある」と指摘。水産研究・教育機構の由上グループ長は「経験したことのない海水温の上昇で魚が捕れるサイクルが壊れ始めている」と警鐘を鳴らす。
豊かな水産物に支えられてきた日本。急速な海の変化は、水産業界を翻弄(ほんろう)している。
(参考:北海道新聞 朝のヘッドライン)
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