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このところ、クジラの肉を目にすることも口にすることもなくなりました。今夏から脂の乗りが良いとされるナガスクジラが捕獲対象に追加されたため、関係者は味をPRすることで消費増の起爆剤にと期待を寄せています。
ナガスの刺し身「本当においしい」 鯨肉消費の盛り上げに期待
鯨肉の消費低迷が続いている。商業捕鯨の再開から丸5年以上たったのに、調査捕鯨だった時期と比べても振るわない。かつては北海道にも大量に水揚げされ、手頃なタンパク源として重宝されたが、現在は豚肉などと比べても安いとは言えなくなっている。
11月中旬、東京・池袋で開かれた全国の名産を扱う物産展に、ナガスのステーキやシチューが並んだ。刺し身やベーコンを味わった東京都府中市の西原りのさん(27)は「うまみが上質。本当においしい」と刺し身を追加購入した。
ナガスを捕獲する共同船舶(東京)は道内でも普及させたい考えだ。12月に道東沖で捕獲できれば、ナガスの生肉を初めて札幌市中央卸売市場に卸す。所英樹社長は「ナガスを食べて北海道の人にも改めてクジラのおいしさを知ってほしい」と意気込む。
関係者がナガスの味に期待するのは、クジラの需要減が続いているためだ。農林水産省によると、ピーク時の1962年度に23万3千トンだった消費量は、調査捕鯨が始まった87年度に6千トンまで減少。2019年7月の商業捕鯨再開後は1千~3千トンで推移している。14、15年度が5千トンだったのと比べても寂しい状況だ。
24年度の捕獲枠上限は4種類で計413頭。日本捕鯨協会によると、道内ではこれまでのところ釧路市と根室市、根室管内標津町にミンクとニタリが計45頭水揚げされた。全国の1割以上が道内で流通している計算だ。ただ全盛期と比べると、やはり消費は落ちている。
釧路市ではかつて、年間千頭近くのクジラが水揚げされ、1952~61年には日本一の水揚げ頭数を誇った。同市によると、クジラの赤身は当時、牛や豚、鶏肉の価格の3分の1~4分の1程度。市民に身近な食材として、刺し身や竜田揚げなどに調理されていた。
大量捕獲によって安価に生産する態勢があった頃と比べると、現在は鯨肉価格が上昇。一方で畜産の生産性は向上したため、豚肉などはかつてより買い求めやすくなった。木村鮮魚店(釧路市)の小林勝行社長は「今は牛や豚など安くておいしい肉がある。店頭で1キロ5千円近くするクジラはなかなか売れない」と話す。同店では現在、国産の鯨肉を扱っていない。
水産庁は鯨食の普及を図るため、25年度予算で本年度と同じ51億円を要求している。学校給食での提供や資源調査を進めていく方針だ。
(参考:北海道新聞電子版)
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