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言われればそうだ、何故あ・と思います。何故列車の窓は曇ったようになっているのでしょう。実は北海道ならではの訳があるんです。
JR北海道の列車窓の曇り 雪国ならではの事情を調査
「北海道を訪れた知人に『列車の窓が汚くてがっかりした』と言われた。道民として悲しい」。みなぶん特報班にこんな声が複数寄せられました。確かに窓が白く曇り、汚れていることがあります。汚れの原因を調べると、雪国ならではの鉄道運行の苦労が浮かび上がってきました。
記者も、3月30日に開業したプロ野球日本ハム新本拠地「エスコンフィールド北海道」
(北広島市)の建設中に、新千歳空港と札幌を結ぶJR千歳線の快速エアポートに乗ると必
ず、車窓からすぐ側の建設現場を見ていましたが、窓が曇っていて、もどかしく思うことが
度々、ありました。快速エアポートは、新千歳空港に降り立った人が多く利用する列車です。
北海道を訪れた観光客が、窓の曇り具合を気にすることは少なくないのではないでしょうか。
JRでは1990年代、走行中の車両から、氷雪が線路上に落下し、線路に敷き詰められた石をはね上げたり、氷雪自体が跳ね返ったりして窓ガラスが割れるトラブルが相次ぎました。乗客がけがをする事故も発生しました。
乗客の安全確保のため、対策を迫られたJRは、樹脂製品の加工会社と、プラスチックの一種「ポリカーボネート」製の頑丈な窓を共同開発して2000年に導入しました。ポリカーボネート製の窓は、通常の強化ガラスの窓と比べ、200倍超の強度があるといいます。エアポートや特急など、高速で走行する車両に取り付けています。車両により、強化ガラス製の窓の外側にポリカーボネートを取り付けるケースと、強化ガラスはなく、窓にポリカーボネートだけをはめ込むケースがあります。

特急車両「キハ283系」。車両をよく見ると、外付けされた四角い窓枠に気づく
新造時の「キハ283系」。ポリカーボネート製の窓はまだ取り付けられていない
樹脂製品の加工会社「東邦シートフレーム」(東京)の北海道ポリカグループリーダー
の佐藤仁彦(きみひこ)さん(46)は「試行錯誤の連続でした」と、ポリカーボネート
製窓の開発に当たった当時を振り返ります。
ポリカーボネート製窓の導入当初は、石狩市内の同社工場で手作りし、JRの苗穂工場に
持ち込んで手作業で、車両に取り付けていました。軽量化や結露防止などの技術が進歩し
たため、現在はより性能の高い製品になっており、千葉県の同社工場のクリーンルームで
製造しています。


列車の窓ガラスの相次ぐ破損を報じる当時の北海道新聞の紙面
JRによると、鱗状痕を取り除くには、専用の薬剤を塗る必要があります。その薬剤を繰り返し塗ることで、ポリカーボネート表面のコーティングを傷めてしまい、白く濁った状態になります。修復は難しいそうです。読者の方から「ちゃんと車両を洗っているのか」という声も寄せられましたが、車両をきれいにしようとすることで、窓が傷んでしまうという皮肉な状況になっています。
JRによると、おおむね3日~6日に1回、車両を洗っていて、窓は表面の劣化状況をみながら10年~16年で交換しているそうです。
破損から乗客を守るという大切な役割を担う半面、汚れが付きやすいという弱点があるポリカーボネート製の窓ですが、その高い技術は、海外で評価されています。マレーシアのマレー鉄道は、列車に投石して乗客を驚かせるいたずらに頭を悩ませていたことから、破損に強い窓に目を付け、2018年から同鉄道の一部車両で導入しました。21年には韓国鉄道公社の車両でも採用されました。
JR北海道は、ポリカーボネート製の窓について「お客さまにケガをさせないための安全対策として必要なのでご理解いただきたい」としつつ「鱗状痕の原因となる車両の洗浄水を改善することも検討しています」と説明します。
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