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全町が停電になると、病院をはじめ役場、企業、商店等が全く機能不全におちいることになります。それを防ぐためにこの取り組みが行われました。
北海道松前町にマイクログリッド稼働、停電時に再エネ電力を供給
風力発電併設の蓄電池から市街地に託送で電力を供給
全道ブラックアウトの教訓
北海道の最南端に位置する松前町は、道内で唯一の城下町として知られる。町の中心を占める松前公園の高台には松前城がそびえ、北側には寺町と松前藩屋敷、南には昔ながらの雰囲気を再現した城下通りの商店街があり、古都観光の名所になっている(図1)(図2)。
町の行政機能を担う松前町役場や警察署、松前町民総合センターは、松前公園の東側エリアにある。観光客が訪れることは少ないが、通り沿いには病院や飲食店、地元企業の本社や事務所が軒を連ね、地域社会を支える重要な施設が多い(図3)(図4)。
今年3月、このエリアで「松前町地域マイクログリッド」が構築され、運用が始まった。といっても、平常時は、これまでとまったく同様、道央に多い北海道電力の火力発電所などから北海道電力ネットワークの送配電線を経由して電気が送られている。
「松前町地域マイクログリッド」が本領を発揮するのは、地震など大規模な災害で、松前町を含めて広範囲が停電に陥ったようなケースだ。そうした緊急時、町内に稼働する「リエネ松前風力発電所」に併設された容量130MWhの大型蓄電池から、町役場周辺の施設や住宅に風力で充電された電力が供給される。
対象となるのは、高圧需要家として松前町役場と松前町民総合センター、そして両公共施設を結ぶ通り沿いに位置する商店や民家などの低圧需要家が約56軒となる。いずれも同じ6.6kⅤの高圧配電線に連系されている(図5)。
供給対象となる施設の需要想定は約400kWで、最低でも2日間(48時間)、蓄電池から電力を供給できる。町民総合センターは災害時の避難所になり、約200人を収容する計画になっている。災害時の重要拠点となる松前町役場、そして避難所で通常通りに電気が使えれば復旧活動の大きな助けになり、避難した住民にとっても利便性は大きい。
2018年9月に北海道で発生した胆振東部地震による全道ブラックアウト(全域停電)がまさにこうした緊急時に該当する。この時は、松前町も停電し、全面復旧まで約2日を要した。ブラックアウトからの復旧では、火力発電所が多く需要の大きい道央エリアから優先的に送電が再開し、送電系統の末端に位置する道北や道南、道東の復旧が遅れることになった。
実際に、この時の苦い経験を教訓に「松前町地域マイクログリッド」の計画が動き出した側面も大きい。
(参考:環境ビジネス)
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