この記事を読むのに必要な時間は約 5 分16 秒です。
札幌発のバーチャルシンガー「初音(はつね)ミク」の派生キャラクターで、北海道を応援する「雪ミク」が根強い人気を保っています。2010年の「さっぽろ雪まつり」で、同社が「初音ミク」の雪像を作ったのをきっかけに誕生。雪ミクを札幌市の路面電車(市電)の車体にデザインした雪ミク電車は札幌の冬の風物詩にもなりました。9月には札幌市の観光大使に就任し、活躍の場をますます広げてます。
愛される雪ミク電車 もはや名誉北海道民? デザイン公募には1千件応募
初音ミク 北海道大学発のベンチャーで、札幌のIT企業「クリプトン・フューチャー・メディア」が2007年発売した音声ボーカルソフトのバーチャルシンガー。ソフトを使って歌を作り、初音ミクに歌ってもらう。歌手を育てる感覚を楽しめる。キャラクターとしても世界中から人気を集める。
1年ごとにリニューアル
「この電車は外回りを循環します。次は中央図書館前です」。雪ミク仕様にラッピングされた電車は、通常車両のアナウンス音声に替えて、初音ミクを担当する声優の藤田咲さんの声が車内に流れる。
市電は札幌市中央区の市街地を循環し、1周におよそ1時間かかる。雪ミク電車は毎年の運行を楽しみにする愛好家も多いため、電停ごとの発着時刻がホームページ(https://www.stsp.or.jp/event/yukimiku2025/)に掲載されている。
■デザイン応募は5倍に
通常の初音ミクが青緑色の髪が特徴で世界中で活躍する一方、雪ミクは北海道を応援するキャラクターという設定。透き通った青いツインテールで北海道の冬をイメージしている。
衣装は毎回替わる。デザインは12年から公募。12年は約200件が集まり、24年は約千件の応募が国内外からあった。応募件数は年々増加している。最終候補からファンによる投票で決めている。
25年の衣装のテーマは「キラキラスノーマテリアル」。デザインにクリスタルや雪玉などの髪飾りが取り入れられ、ツインテールの色合いや形状が特徴的だ。ねこねこさん(本名非公開)がデザインし「特徴的なシルエットになるように試行錯誤した。猫のような口がお気に入り」と話す。
もはや「名誉北海道民」
北海道の応援キャラクター・雪ミクは活躍の場をどんどん拡大させている。この5年間でも「札幌モーターショー公式アンバサダー」(20年)、「札幌市制100周年記念事業PRアンバサダー」(22年)など、数々の職に就いた。名誉札幌市民、名誉北海道民といえる働きぶりを見せる。
「札幌市制100周年」のPRアンバサダーでは、お笑いコンビ錦鯉・長谷川雅紀さん(札幌出身)と共に「こーんにーちはー!」のポーズを決めた。市は起用理由を「錦鯉の長谷川さんも雪ミクも札幌出身で若者から人気がある。100周年記念事業は特に若い世代を中心に札幌への愛着を深めてもらう、誇りを持ってもらうというのがメインコンセプトだったので、若者に波及できる2人を選んだ」と振り返る。
9月に就任したのは札幌市の観光大使。任命した札幌商工会議所は「認知度が高いキャラクター」と期待を込める。23年には札幌市内5カ所のマンホールのふたのデザインになった。
最初は「一度きりの予定」
雪ミクが誕生したのは2010年2月だった。当時を知るクリプトン・フューチャー・メディアの目黒久美子さん(38)は「いろいろな事情が重なって誕生した」と振り返る。
同社は当時、札幌市と連携して、都市の魅力を国内外に売り込もうと模索していた。市から初音ミクの雪像作りと路面電車や地下鉄、バスで利用できる磁気式共通乗車券「ウィズユーカード」(カードは15年に利用終了)でのコラボを提案された。
同じ頃、初音ミクのグッズを手掛ける企業からも「本社が北海道にあるのだから、ご当地キャラクターを作ったらどうか」と提案を受けたという。「せっかくだからやってみよう」。雪像作り、カードとフィギュアの限定販売を決め、「雪ミク」はフィギュアを作成する際に誕生した。
カードとフィギュアは雪まつりのつどーむ会場に近い地下鉄東豊線栄町駅で販売。午前8時の発売開始に、前日からの徹夜組が出るほどの人気を集めて完売した。
「反響の大きさに驚いた」と目黒さん。一度きりの予定が、翌年以降も続き、「北海道を応援するキャラクター」にまで成長した。13年には雪ミクのペットキャラクターとして、エゾユキウサギをモチーフにした「ラビット・ユキネ」も生まれた。
北海道中に広がる活躍
新千歳空港の「雪ミク スカイタウン」は初音ミクの歩みをたどるミュージアムやオリジナルショップ(ミュージアムは19日まで改装のため休館)。イラストを自由に描けるホワイトボードは幅5メートル、高さ3メートルで、ファンのイラストであふれている一画には、今にも踊り出しそうな雪ミクの等身大フィギュアを全国で唯一常設する。
香川県から修学旅行で訪れた熊谷颯真さん(17)は「空港でも街中でもあちこちにミクを見かけて、北海道になじんでいると感じた。またゆっくり来て見たい」と話した。
22年には、函館市と青森県弘前市は周遊観光のキャンペーン「ひろはこ」のキャラクターに雪ミクを採用。函館の金森赤レンガ倉庫や、弘前城などを背景にした雪ミクのポスターやパネルを各地に設置し、スマートフォンのスタンプラリーも開催している。
世界で人気を集める初音ミクの派生バージョンとして生まれ、息の長いキャラクターとなった雪ミク。「北海道を盛り上げたい」と貫く姿勢が、ファンや道民の心に届いたのかもしれない。
(参考:北海道新聞デジタル発)
コメント 感想やご意見をお願いします