この記事を読むのに必要な時間は約 5 分23 秒です。
国内外の大会で優秀な成績を収め、今後も一層の活躍が期待される若手選手らを顕彰する「第4回北海道新聞みらいスポーツ賞」の受賞者が決まりました。
陸上の畠山このみ選手(立命館慶祥高)、スピードスケートと陸上の宮本哲朗選手(帯広第一中)、デフ卓球の木村亜美選手(合同会社HOS、札幌龍谷高出)の3個人。
第4回北海道新聞みらいスポーツ賞 まなざし、常に前へ 3人が受賞
畠山選手は昨年の全国高校総体で、女子の400メートルと400メートル障害を制して2冠を達成した。宮本選手は昨年の全国中学大会スピードスケート男子500メートルで優勝。さらに同年夏の全国中学大会陸上100メートルでも3位に入り、高いレベルで夏冬競技の「二刀流」を実現する。木村選手は今年11月に日本で初めて開催される聴覚障害者の国際総合スポーツ大会、夏季デフリンピック東京大会の日本代表を確実にしている。
贈呈式は3月6日午後、北海道新聞本社で行う。受賞者を紹介します。
ハードル転向 才能開花 畠山(はたけやま)このみ選手(18)=陸上
高校最後の夏となった昨年7月、全国高校総体(インターハイ)女子400メートルと400メートル障害でいずれも自己ベストを更新して2冠を達成した。本命の400メートル障害では北海道高校新記録も樹立。インターハイの最優秀選手にも輝いた。今春からは筑波大に進学予定で、「全日本大学選手権の優勝や、海外レースでも戦えるようになりたい」と意気込む。
釧路市出身。釧路鳥取西中では走り幅跳び専門だったが、全国中学大会には出場できなかった。進学した立命館慶祥高では1年時のインターハイで七種競技に出場したものの31位。芽が出なかった。それでも、中距離を走りきる力や跳躍力の高さを同校陸上部の日裏徹也監督(43)に見いだされ、400メートル障害に転向した。
持ち味は後半にかけて伸びる加速力だ。練習で短・中距離走を組み合わせた走り込みを重ねてスピードと体力を鍛え、ハードル間の歩数を減らして推進力を失わない走りを身につけた。本命の400メートル障害でのスピードを上げるため、昨春から400メートルに取り組み始めたことも奏功した。
どちらの種目もキャリアは浅いものの、急速な成長で二つの栄冠をつかみ、「練習は本当にきつかったけど、報われた」と笑って振り返る。
将来的には五輪出場も見据える。これまで五輪の400メートル障害で日本人選手の入賞はないが、「挑戦しがいはある。いけるところまでいきたい」と目を輝かせる。
陸上は昨年8月、全国中学大会(全中)の男子100メートルで10秒84の好記録をマーク、3位に入った。スピードスケートはまず昨年2月、全中の500メートルで初優勝すると、今年2月の全中は500メートルの日本中学記録を14年ぶりに塗り替える36秒32で2連覇。「やっと達成できた」と喜びを語る。
この新記録が驚異的だった。14年前の日本中学記録はカナダ・カルガリーの36秒45。標高約千メートルと空気抵抗が少なく、スピードが出やすい高地リンクで生まれた。一方、全中を行う長野市エムウェーブの標高は約340メートル。関係者の間で「一生抜けない」と言われた大記録だったからだ。
それを、国内で上回った。前代未聞の快挙だったが、本人は「3年間、日本中学新を目指してきた」と本気で狙っていた。そのために今季は、氷上練習開始を例年より1カ月早めて昨年9月下旬から調整。180センチの長身を生かした推進力に加え、低い姿勢でスムーズな加速力を磨いた。
帯広市出身。指導者の父・信唯さん(49)の影響で、小学1年でスピードスケートを始めた。夏場の筋力アップなどを目的に同3年から陸上に取り組み、相乗効果を生んでいる。
春から白樺高に進む。スピードスケートに軸足を置くが、陸上も続ける。「スケートで、世界でどれだけ通用するか試したい」。2030年冬季五輪で、金メダル獲得を夢見る。
小樽市出身。兄と姉の影響で4歳から卓球を始めた。生まれつきの感音性難聴で両耳が聞こえず、左耳は7年前から人工内耳を使う。札幌龍谷高では健聴者に交じり、全道高校大会の女子シングルス5位、団体3位と活躍した。
音が聞こえづらいとボールの回転量や速さなどを判断しづらいため、「相手が打った動きを見てから動く難しさがある」。長年の練習で、相手の戦型や打球速度に応じた返球技術を培ってきた。
日本ろうあ者卓球協会の強化指定選手に19年度から選ばれている。現在は、就労支援事業を行う合同会社HOS(札幌)に所属し、プロ選手として活動する。サーブ強化のほか、体全体を連動させてボールに力を伝えることや、バランスを崩さず素早く動くことなどを意識して練習を重ねる。
今後は実戦経験を多く積み、デフリンピック東京大会ではダブルスや団体など四冠を目指す。「かっこよくもありたいけれど泥臭く、みんなに応援してもらいながら楽しくプレーしたい」。愚直な姿勢で頂点を目指す。
過去のみらいスポーツ賞の受賞者(敬称略)
■第1回
【個人】
▽太田捺=近代五種
▽瀬川瑠奈=重量挙げ
▽高橋来海=デフバドミントン
【団体】
▽常呂ジュニア=カーリング
【特別賞】
▽開心那=スケートボード
▽斉藤雄大=パラスポーツ指導者
【個人】
▽太田捺=近代五種
▽瀬川瑠奈=重量挙げ
▽高橋来海=デフバドミントン
【団体】
▽常呂ジュニア=カーリング
【特別賞】
▽開心那=スケートボード
▽斉藤雄大=パラスポーツ指導者
■第2回
【個人】
▽森岡ほのか=バスケットボール
▽石原美海=デフバレーボール
【特別賞】
▽堀川桃香=スピードスケート
【個人】
▽森岡ほのか=バスケットボール
▽石原美海=デフバレーボール
【特別賞】
▽堀川桃香=スピードスケート
■第3回
【個人】
▽渡辺一気=自転車
▽笠井季璃=バレーボール
▽松田華奈=車いすカーリング
【個人】
▽渡辺一気=自転車
▽笠井季璃=バレーボール
▽松田華奈=車いすカーリング
有望な若者表彰
「北海道新聞みらいスポーツ賞」は、国内外で顕著な成績を収め、今後も活躍が期待される北海道ゆかりの若手選手や団体を表彰している。パラスポーツ分野では競技経験の浅い選手らも含め、五輪出場など既に世界レベルの実績を持つ若手選手や団体も対象で、選手の育成に長年尽力する指導者らは特別賞の対象としている。
北海道新聞社は1970年に創刊1万号を記念して「北海道新聞スポーツ賞」を制定し、2019年の第50回までに300を超える個人や団体を顕彰した(20年は新型コロナウイルスの感染拡大で選考取りやめ)。
21年度に同賞をリニューアルし、「みらいスポーツ賞」を新設。昨年度までに計1団体・8個人を表彰し、計3個人に特別賞を贈っている。
(参考:北海道新聞 メールサービス)
コメント 感想やご意見をお願いします