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札幌の地酒「千歳鶴」で知られる日本清酒(札幌)が、道産酒米「吟風」を使い今春発売した「なまら純米辛口」。酒蔵の建て替えに伴い製造をやめた人気商品「本醸造 なまら超辛」の後継商品で、本醸造酒の辛口の味わいを純米酒で表現し、左党から変わらぬ支持を集めています。
超辛の後継、純米でキリッと 日本清酒の「なまら純米辛口」<ほっかいどう商品分析>
酒米とこうじ、醸造用アルコールで造る「なまら超辛」は、2002年の発売。飲食店を中心に全道で販売すると、スッキリとした味わいが評価され、1升瓶換算で年間約3万本売る「ベストセラー」(同社)に育った。新型コロナウイルス禍に伴う外食需要の低下で販売量は落ちたが、それでも根強いファンに支えられ年間約2万本を維持していた。
転機は酒蔵の建て替えだった。国内の日本酒消費量は30年間で3分の1に減り、コロナ影響で2020年以降はさらに落ち込んだ。1959年から使われてきた酒蔵の製造能力は年間約3600キロリットル。酒蔵の維持費もかさむことから、同社は製造能力を約360キロリットルに縮小するとともに、純米酒に特化した酒蔵として23年春に稼働した。
製造量を減らす代わりに、商品の質を高めて単価を上げる戦略。桑原晶幸常務(60)は「純米蔵は近年のトレンド。お客さんに喜ばれる高付加価値商品を目指した」と振り返る。一方、本醸造酒の製造に不可欠な醸造用アルコールを保管する施設を無くしたため、「なまら超辛」は製造できなくなった。そこで桑原常務は新しい酒蔵に移行した昨春、当時の責任者だった杜氏(とうじ)に「純米で近い酒を造ってほしい」と依頼した。
日本酒造りでは、米のでんぷんをこうじ菌が糖に変え、その糖分を酵母が食べることでアルコールができる。甘さを抑えた辛口の純米酒を造るためには、酵母ができるだけ糖分を食べられるような品質管理が必須だ。一度バランスが崩れると発酵が止まったり、渋みや苦みが出たりする難しさがある。このため、辛口の酒を造る際は、醸造用アルコールを加えて風味や香りを際立たせるのが一般的となっている。
杜氏は難色を示したが、桑原常務は「売り上げもあり、支持してくれるお客さんもいる」と説得。酵母がアルコール発酵を続けられるよう、原料米の処理やこうじ造り、酵母を大量に増殖させる「酒母」造りでも、温度管理や成分の変化に細心の注意を払うことで、キリッとした「なまら純米辛口」が出来上がった。完成までに約1年を要した。
現在、酒造りを統括する竹花利貴杜氏(44)は「前の商品に比べて辛さは少し抑えられ、うま味が増した」と話す。720ミリリットル入り1430円。今春から販売を始めると、飲食店を中心に注文が相次ぎ、以前と同じ年間2万本ペースで売れているという。桑原常務は「商品の切り替えがこんなにうまくいったことはない」と喜ぶ。竹花杜氏は「食中酒にぴったり。焼き鳥や鍋料理と一緒に楽しんでもらえれば、造り手冥利(みょうり)に尽きる」と話している。
(参考:北海道新聞デジタル)
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