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空知管内の南西端に位置する南幌町。人口8千人弱のマチは今年、2年連続で日本人移住者が北海道内で最多となりました。
住宅高騰の札幌圏から移住者増加 バブルの遺産に再び脚光 空知管内南幌町の宅地
「子どもが生まれて家が手狭になったため、予算内で広々とした戸建てを建てられる南幌に決めた」。昨年8月に札幌から移住した公務員の男性(49)はそう語る。
札幌市厚別区の戸建てを売却し、南幌で新築した家に妻と4人の子どもと暮らす。家の延べ床面積は90平方メートルから120平方メートルに広がり、敷地面積も1.5倍に。建築費と土地代約4千万円は売却代金でまかなった。通勤は高速バスで40分ほど。通勤時間は以前とほぼ同じだという。
南幌への移住者は近年急増している。総務省の1月時点の人口動態調査によると、同町の日本人人口は前年比222人増加。日本人人口の増加率2.97%は、全国の町村で最大だ。町人口は2022年に7366人で底を打って以降、増加に転じており、今年10月現在、7919人まで増えている。
移住者の受け皿となっているのが、町中心部を囲む全2248区画の住宅団地「南幌ニュータウンみどり野」。年間10区画程度だった販売は21年に79区画、22年に127区画、23年に89区画となった。
毎年7月時点の基準地価では21~23年、清田区や手稲区、東区など札幌市内の郊外地域で毎年10~20%の地価上昇が継続。江別、恵庭、北広島の近隣各市では20%を超える上昇率も相次いだ。
コロナ禍で戸建ての人気が高まったことに加え、世界的な木材不足や人手不足で住宅本体の価格も上昇。土地と建物を合わせた住宅購入価格を抑えようと、札幌から地価の安い周辺地域へ宅地需要が流れた結果だ。
南幌への移住が顕著なのは、札幌圏の地価上昇に加え、町の住宅建築助成金制度が注目を集めていることも大きい。中学生以下の子どもがいる移住世帯などを対象に、住宅新築に最大200万円を助成し、宅地の価格も50%割り引く仕組みだ。
南幌ニュータウンみどり野では、1区画の平均面積は90坪(約297平方メートル)で、価格帯は400万円台が中心。助成金を宅地購入費に置き換えると、制度を最大限活用すれば土地代は事実上ほぼゼロとなる。今年の基準地価では札幌市の住宅地の平均価格は1平方メートル当たり10万7500円で、90坪では約3200万円。価格の優位性は明白だ。
制度を始めた16年度には1件だった利用件数は22、23年度に90件と急増。町の制度が移住者を呼び込み、人口減に歯止めをかけた。しかし、町まちづくり課の前田洋佑係長は「30年前と同じ結果に終わってはいけない」と厳しい表情だ。
同町の人口が急増するのは初めてではない。北海道住宅供給公社が住宅団地の分譲を開始したのは1974年。日本中が好景気に沸いた90年以降、札幌のベッドタウンとして移住が増え、人口はピークの98年に1万人を突破した。だがバブル崩壊で団地の販売も停滞。住宅供給公社は02年度に660億円の債務超過に陥り、特定調停に至った。同町の人口も右肩下がりが続いた。今売れているのは当時分譲されずに残っていた宅地だ。
さらに同町は5月、約24ヘクタールの準工業用地「南幌流通団地」の造成に着手した。土地は未造成だった住宅団地の一画で、高規格道路「道央圏連絡道路」南幌ランプから約700メートル。来年春には江別東インターチェンジ―南幌ランプ間が開通するほか、全線開通時は新千歳空港から南幌を経由して、石狩湾新港まで結ばれる計画だ。
千歳市で次世代半導体製造を目指すラピダス(東京)は、苫小牧から石狩までの道央圏一帯を産業拠点とする「北海道バレー構想」を掲げる。南幌は両地域の中間地点として物流関連などの企業誘致を進め、ベッドタウンからの脱皮を実現できるか注目される。
(参考:北海道新聞 夕方のニュース)
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