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なまらあちこち北海道|指は動かなくても続けたい演奏・二田浩衣さん

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病気になって指が動かなくなっても、音楽を愛すること、演奏を楽しむことで精力的に活動をしている二田浩衣さん。聴く人の心に響く演奏を続けています。

音色は喜びに満ちて 指は動かなくても 病と向き合う札幌の演奏家二田浩衣さん

 病気になる前は出せなかった音がある―。思い通りに指などが動かせなくなる疾患「フォーカルジストニア」の発症から13年。札幌市の演奏家二田浩衣(ふただひろえ)さん(42)はいま、道内外でクラリネットとピアノの演奏活動を精力的にこなす。
 以前のように「完璧な音」は出せない。でも苦しみを乗り越え、音楽を奏でられる喜びに満ちた音色は聴く人の心を揺さぶる。

キャリアを重ねていた矢先

 6月下旬、札幌市中央区の豊平館で開いたソロコンサート。約80人の聴衆で満席となった会場に、力強いピアノの音色が響いた。二田さんはノルウェーの作曲家グリーグの「春に寄す」など10曲を披露し、自身の病気についても語った。
6月下旬、初のピアノコンサートに臨んだ二田さん。力強く美しいピアノの音色が会場に響いた

6月下旬、初のピアノコンサートに臨んだ二田さん。
力強く美しいピアノの音色が会場に響いた

 3歳からピアノを習い、北海道教育大札幌校でクラリネットを専攻。ノルウェー留学を経て、パリで活動した。
 帰国後、札幌交響楽団と共演するなどクラリネット奏者として順調にキャリアを重ねていたが、2011年に何らかの原因で脳と神経伝達に異常をきたすフォーカルジストニアを発症。左手の人さし指が勝手に伸び、思い通りの演奏ができなくなった。
 「ばれたら二度と音楽の世界には戻れない」。完璧な演奏で周囲に「ミスパーフェクト」と呼ばれていた二田さんは病気を隠しながら演奏活動を続けた。だが発症から1年ほどたったある日、コンサート中に人さし指が全く動かなくなった。
 その後、札幌で会社員として働き、クラリネットから10年ほど離れた。指が治らないと人前に出られない、きちんと演奏できない自分は生きている価値がないとさえ考えていた。

「完璧だけが価値じゃない」

 20年に活動を再開したのは、友人の言葉がきっかけだった。「完璧じゃなくても、浩衣ちゃんの音が聞きたい人は多いと思う」。北見市の会社役員橋口愛さん(40)は演奏のインターネット配信を提案した。
 初めての配信では、クラリネットでクリスマスソングを披露した。「変な音が出たり、止まってしまったり。ボロボロの演奏だった」(二田さん)。だが視聴した人からは「浩衣ちゃんの音がまた聞けてうれしい」「雪が降っている景色が見えるよう」と称賛のメッセージが届いた。
 以来「完璧に演奏することだけが価値じゃない」と、演奏活動を再開。6月下旬の札幌でのソロコンサートは、クラリネットを手にせず、疾患の影響が比較的少ないピアノのみを演奏する初の試みだった。
発症から13年たち「『病はギフト』という言葉を受け入れられるようになった」と話す二田さん

発症から13年たち「『病はギフト』という言葉を受け入れられるようになった」
と話す二田さん

 これから症状が改善するかは分からない。でも二田さんは言う。「指が1本使えないと考えるか、9本も使えると考えるか。それは自分の捉え方次第」と。クラリネットやピアノ、歌など、どんな形であっても音楽は続けていくという。
 「失敗や困難に直面しても、希望を持ち続けてほしい」。二田さんは自らの経験に基づく、そんなメッセージを演奏を通じて届けたいと思っている。演奏は二田さんのインスタグラム(@hiroe_futada)で聞くことができる。
(参考:北海道新聞 道新デジタル)

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