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クラフトビール(地ビール)がブームとなり、全国各地にブルワリー醸造場)が増える中、老舗のオホーツクビール(北見市)の存在感が高まっている。今年12月で国内初の地ビール製造本免許取得から、来年3月で発売から、それぞれ30年を迎える。
オホーツクビール30年 北海道・北見の味探求、高まる
「かんぱーい」。爽やかな秋晴れの下、JR北見駅周辺のあちこちで歓声が響いた。
10月中旬に北見市と市観光協会が市内で開いた、「食」などを通して季節を楽しむイベント「北見秋祭(あきまつり)」。目玉の一つで、国内外の地ビールを味わえる「オホーツクマルシェ2024」の会場は、多くの市民らでにぎわった。
40種類が提供されたが、その中で根強い人気だったのがオホーツクビール。市内の自営業小林飛雄馬さん(43)は「いつ飲んでもおいしいけど、今日は最高」と笑顔を見せた。
「地元民が地元のためのビールを造る」。オホーツクビールが創業時から掲げる方針は、年間出荷量約60キロリットルのうち、工場に併設するレストランを中心に地元消費が8割という数字に表れている。
その製造現場の朝は早い。午前6時半、ガラス張りの中の仕込み釜に、大量の粉砕した麦芽を投入する。お湯を加えて混ぜていくと、芳しい香りが広がる。麦芽のでんぷん質を酵素の働きで糖に変える「糖化」で、ビール造りの最初の工程だ。
麦芽100%(オールモルト)にこだわり、生酵母を使うのが特長。ビールによって麦芽の種類などを使い分ける。工場内には、創業時から使い続けるドイツ製の赤茶けた釜が3基。糖化、麦汁ろ過、麦汁にホップを投入して苦みと香りを付ける「煮沸」など、工程によって使い分ける。作業を行うのは基本的に阪内さん1人。年季の入った設備を自分の手足のように操る。仕込み作業は約10時間に及ぶ。
煮沸後の麦汁は発酵タンク内でアルコールを生み出す。1~2カ月後、ビールの風味が出た麦汁をイタリア製のワイン用ろ過機に流し込み、透明感のある色合い「照り」を出して完成だ。
もちろん、味に妥協はない。阪内さんは「時代ごとにビールの好みも変化する。同じ銘柄でもホップの種類や量などで微調整してきました」と振り返る。
主力銘柄は、中濃色でカラメル香の「エール」、淡色でマイルドな「ピルスナー」、酵母由来の香りでドイツビールに近い「ヴァイツェン」、濃色で深い香りの「マイルドスタウト」の4種。レストランで最も注文が多いのはピルスナーだが、飲み比べてお気に入りを見つける客が目立つという。
また、健康志向や若者のアルコール離れなどを受け、2016年12月、オールモルトのノンアル「オホーツクフリー」を発売。地ビールメーカーが、手間のかかるノンアルを開発するのは異例だ。本物に迫る味わいでファンを増やし、23年度の製造量は約2.8キロリットルに。本年度はさらに上を行くペースで消費されている。
ノンアル ビール酢が決め手 醸造責任者・阪内さん
オホーツクビールのノンアル「オホーツクフリー」は、大手メーカーなどとは異なる独自の製法でつくっている。開発した阪内順逸さんに着想から完成に至るまでを聞いた。
――醸造に詳しいオホーツク圏地域食品加工技術センター(北見)が、味と風味、ユニークな製法を高く評価しています。
「一般的なノンアルは味をビールに似せた飲料で、さまざまな香料や酸味料などの添加物を加えています。自社のビール同様、オールモルトでノンアルを作れないか模索する中、完成したビールからビール酢をつくり麦汁に添加することを思い付きました。苦みと香りがある麦汁にビール酢を少量加えることで、普通のビールと同程度の酸味を感じるとともに味わいが深くなります。多種多様な酢がありますが、手間はかかっても麦芽由来のビール酢にこだわりました。大学で化学を専攻した知見から、『いけるのでは』と思い、3年かけて商品化にこぎ着けました」
――水と麦芽、ホップ、炭酸で仕上げたのですか。
「そうです。麦芽由来の酵素や酵母菌、酢酸菌の発酵で自然な風味を出せました。ビールのような味わいはもとより、麦汁には整腸、ホップに鎮静効果、酢に血圧を下げる作用があるので、健康的な飲料である点も売りです。瓶詰をまとめ買いする人もいます」
――製法をホームページで公開しています。企業秘密ではないのですか。
「一連の製法は特許取得済みです。会社の収入になるので製法の採用は大歓迎ですが、手間がかかるので挑戦する醸造場はなかなか出てこない気がします」
(参考:北海道新聞 会員限定記事)
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