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なまらあちこち北海道|ラピダス、作業員集めに「月給100万円」

産業

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ラピダスの着工から1年。状況はどうなっているのでしょうか。

<ラピダス着工1年>作業員集めに「月給100万円」 オフィスも不足

ラピダス工事の作業員が暮らす千歳市内の宿舎。道外ナンバーの車が多い

ラピダス工事の作業員が暮らす千歳市内の宿舎。道外ナンバーの車が多い

 千歳市中心部から車で10分ほど。千歳臨空工業団地の北側に、次世代半導体製造を目指すラピダス(東京)の工場建設に携わる数百人が暮らす宿舎がある。鹿児島、長岡、川口…。出入りする車の多くは道外ナンバーだ。
 「台湾積体電路製造(TSMC)熊本工場の建設では、もともと九州在住だった作業員は4分の1ほどと聞いた。ラピダスの場合、地元比率はその半分にも満たないのでは」。北海道建設業協会の栗田悟副会長は、現状をこう見立てる。
 巨大工事では、何年も前から要員数を見極め、周到に確保する。だが、ラピダスの千歳進出は昨年2月に突如決まった。
 千歳市は大手ゼネコン鹿島(東京)がまとめたラピダス工事の作業員数を公表している。当初見込みでは8月は1日当たり4300人ほどが働くはずだったが、実際の人数(25~31日)は3500~3600人だった。
 着工から11カ月後の8月2日。連合北海道はラピダス工事を巡り、労働環境の安全確保を国に働きかけるよう道に要請した。加盟労組の「設計の問題で一部工事が遅れたり、月100時間近い残業が続いたりしている」との声を問題視した。
 これに対し、ラピダスは「法令違反はない」とし、試作ライン稼働を来春とする立場も崩していない。人手をかき集めるため、作業員の手取り給与は通常の公共工事の相場の倍額が示されているという。「月100万円が相場」との声もある。
 ラピダス事業の成功には、5兆円規模の投資が必要とされる。量産は27年に始まる見通しだが、地元の道、千歳市の受け入れ体制は追いつかず、地域の「リソース(資源)不足」は明らかだ。

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 ラピダスの進出決定後、まず懸念材料となったのは、大量に使う工業用水の確保だった。「本当は千歳に回す余裕なんてない」。安平川からくみ上げる工業用水の融通を求められた苫東(苫小牧)の辻泰弘社長は、困惑の表情を浮かべた。
 問題は続いた。7月、この工業用水から国の飲用水の暫定目標値を超える有機フッ素化合物(PFAS)が検出された。
 ラピダスが使用後に処理した排水は、江別市の水源でもある千歳川に流れ込む。PFAS汚染された水への懸念から、市は道に継続調査を求めている。用水問題は、今後もラピダスを巡る不安要素として付きまとう。
 工場周辺のオフィス不足も鮮明だ。「『千歳で探して』とのオファーが15社ほどから殺到している。そんな物件、もう千歳にはないのに」。札幌の不動産会社の担当者は無理難題に天を仰ぐ。
 半導体製造装置や関連部材を提供する企業は、工場内への機器設置が本格化する前の今秋の事務所開設を目指す。不具合が生じれば、20~30分で駆けつけるため「千歳市内」は譲れない。商業施設やアミューズメント施設の中、さらにはホテルの貸し会議室まで。通常では考えられない場所が候補になり始めている。
 千歳市の横田隆一市長は8月の説明会で約30社が新たなオフィスを構える見通しで、ビル2棟が着工したと説明した。もっとも、札幌の大手開発事業者は、オフィスビルについては建設を決断できないでいるという。「ラピダスがなければ、千歳のオフィス需要はわずか。半導体製造の成否が見えない中、投資はできない」ためだ。
 着工1年で見えてきた地域のリソース不足。「国策半導体」の量産に向けて、今後も高いハードルとしてそびえ立つ。
(参考:北海道新聞メールサービス有料記事)

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