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なまらあちこち北海道|生成AIで絶好調、さくらインターネット

産業

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石狩市で大型のデータセンターを運営する「さくらインターネット」(大阪)の業績が絶好調だ。2024年9月中間期の売上高は前年同期比28%増、営業利益は5倍に増えた。

生成AI向けで絶好調 これってバブルでは? さくらインターネット・田中邦裕社長<疑問ここが知りたい>

インタビューに答える、さくらインターネットの田中邦裕社長(金田翔撮影)

インタビューに答える、さくらインターネットの田中邦裕社長

 たなか・くにひろ 大阪府出身。1996年、舞鶴高専在学中に18歳で創業。99年さくらインターネットを設立し、社長就任。2021年から日本データセンター協会理事長、22年関西経済同友会常任幹事、ソフトウェア協会会長

ネットバブルがはじけた後、インターネットはインフラに

 ――大量の計算を同時に行い、生成AIの学習機能などを支える画像処理装置(GPU)を使ったクラウドサービスが好調です。一方で、生成AIへの期待はどこまで続くのでしょうか。正直、ちょっとバブっていませんか。
 「インターネット草創期の1996年から2000年ごろ、ネット系企業がもてはやされ、『IT革命』などと言われていました。その後、ネットバブルは確かにはじけました。でも結局、今どうなのかと言えば、ほとんどのサービスがネットに変わっています。バブルは一度はじけましたが、インターネットは社会インフラになっています」
 「今度は『AI革命』と呼ばれています。また『バブルだバブルだ』って言われています。ただAIも、かつてのインターネットと同じように、社会の中に定着するものだと思っています。AI利用は底がたいと見ており、特にAIの基盤となるデータセンターは必須のインフラです。バブルはいったん落ち着くでしょうが、AIの利活用は広がり、やがてAIのある世界が普通になると思います」
 ――AIによって、どんなことができるようになるのですか。イメージを教えてください。
 「例えば、現在、家電などのマニュアルは、誰にでも受け入れられやすいように作られています。でも、高齢者とか、コンピューターが苦手な人とか、読み手によってマニュアルの内容は違っていいはずです。読み手に応じて伝わりやすいよう、内容をその人に合わせた表現で、十人十色に翻訳できるようになると思います」

新聞も学校も、AIでもっと優しい世界に

 ――読み手に合わせるのですか?
 「新聞記事も同じです。いまは一つの記事が何十万人、何百万人に送られています。同じものをコピーすることで、ただの紙が、価値ある何百円になるというビジネスモデルです。でも、『紙に印刷』という制約がなくなれば変わります。記事を読み手に合わせて読みやすいように文体を変えてくれるようなAIを使った仕組みが出てくると、元々の記事の内容が、より多くの人々に読まれるようになります。AIの普及した世界は、もっと優しい世界になると思います」
 ――読み手の属性や能力に合わせてくれる。なるほど、確かにまだ見ぬ世界ですね。
 「学校なんか、すごくいいと思いますよ。これまでは、一人一人に教えるのは大変だし、先生の数が限られるから、みんなで集まって同じ話を聞くやり方です。でもAIを使えば、一人一人が習熟度別に生成された教材で学ぶことができるようになるでしょう」
先生がまとめて教えるよりも、一人一人がオンラインで学んだ方が絶対に効率がよいと思います。誰一人として、取り残されることのない学校教育ができることになります」

今の環境、日本企業に有利

 ――石狩データセンターには最新の米エヌビディア製GPUを2千基導入しました。さらに2027年末までに1万基ほどに増やす計画で、投資額は1千億円になります。さくらインターネットの24年3月期の売上高は約218億円です。費用の半分は国から補助されるとはいえ、リスクではありませんか。
 「とにかくGPUは世界中で足りていません。今は日本のお客さまにサービスを提供していますが、海外から使うことも可能です。モノを輸出するとなると、相手国に事務所を作る必要もありますし、物流はリスクも伴います。オンラインサービスは物流がないんです。日本で需要が落ち着いたとしても、海外に(サービスを)売ることだってできます」
 ――日本のサービスを海外から使いたい人もいるのですか。
 「日本政府は国が主導してデータセンターの整備を始めました。こうした生成AIへのアプローチを、各国は高い関心を持って見ています。海外の企業では、どんなに大手でもGPUを2千基置ければ、御の字です。でも、石狩データセンターは1年でもう2千基を置き、その次の投資に進んでいます。日本の動きは世界的にも相当に早かったんです」
 「日本はインターネットサービスで米国に負けているという話をよく聞きます。なぜ、日本にGAFA(グーグル、アマゾン・コム、フェイスブック=現メタ、アップル)が生まれないのか、と言われます。ただ、欧州にもGAFAはありません。むしろ、日本が弱いのではなく、米国が強いんです。中国もすごく強かったんですが、米中貿易摩擦が先鋭化して、エヌビディアの最新GPUを入れることができません。今の環境は、日本の企業に有利です」

AIと共存が得意な国 背景に国民的ロボットアニメ?

 ――AIは恐ろしい兵器になるとか、世界を滅ぼすとか、各国ではそういう話になるのに、日本ではアニメの影響なのか、そうならないと聞きます。
 「先日、エヌビディア創業者のジェンスン・フアンさんが来日したとき、まさにその話をしていました。『日本にはマジンガーZがある』と言うんです。AIと共存が得意な国だから、AI単体ではなく、製品にAIと技術を組み込むことが日本だからこそできるとね。まあリップサービスもあるんでしょうけど、マジンガーZもあれば、ドラえもんもそうですし、鉄腕アトムもそうですよね」
エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO・左)とソフトバンクグループの孫正義会長兼社長=11月13日午前、東京都港区

エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO・左)
とソフトバンクグループの孫正義会長兼社長

 「今、米国西海岸のAIの会社がどんどんと日本に出てきています。西海岸は賃金が高いですから。日本は2千万、3千万円で高額所得者ですが、西海岸では新卒で2千万円です。治安も悪く、住むのも大変。一方、日本は政治的にも安定していて、治安が比較的良く、物価も高くなくて、なおかつ、AIにイデオロギー的な反発が少ない。アメリカでは、ちょっと作業を自動化しようとすると、労働組合が強いので大変です。ヨーロッパはAIの規制に動いていますし、中国はAIを国で管理しています。いずれも大変なんです」

100%再生エネにこだわるワケ 原発ではだめですか?

 ――さくらインターネットは、石狩データセンターで消費する電力を、全て再生可能エネルギーで賄っています。なぜ、こだわっているのでしょうか。
 「人間の脳は消費電力が25ワットから30ワットぐらいです。すごく少ない電気で動いています。これに対し、AIはものすごく電気を使います。大量の電気を使い、大量の二酸化炭素(CO2)を排出しながらAIを動かすのは本当に正義なのか、と思います。グローバルで見ると、データセンターは環境破壊とか、CO2を排出する悪い存在っていう側面もあるので、この問題には真剣に向き合わなければと思っています」
石狩湾新港の港湾区域に整備された洋上風力発電の風車=2023年10月

石狩湾新港の港湾区域に整備された洋上風力発電の風車

 ――発電時にCO2を排出しない脱炭素電源には、原子力もあります。

 「電源が足りないから、『使わなければ』という側面があるのでしょうけど、(脱炭素電源として)原発がフォーカスされすぎているような気がします。北海道には地熱もあるし、太陽光もある。再生可能エネルギーに最適化した電力ネットワークになってないことにこそ、課題があると思います。電力ネットワークを改善し、発電能力の高い場所にデータセンターを造るなど、さまざまな議論とともに、原発についても考えていかないと、既存の延長線上にしかならないと思います。原発で短期的な電力不足は解消できるかもしれませんが、中長期の電力需要を考えれば、残念ながら、今の原発を再稼働させるだけで片が付く話ではありません。複数の検討課題をミックスして考えなければならないと思います」
 ――まだデータセンターが都市部に多かった時、さくらインターネットは石狩に立地を決めました。なぜですか。
 「まず冷涼なこと。サーバーが出す熱を冷ますエアコンの使用量を減らせます。また、石狩は札幌に近く、人手が確保しやすいと考えました。当時から風力発電所もあり、電源立地地域でもあります。土地も安く、光ファイバーの陸揚げ地でもあり、加えて天災の可能性も低い。データセンターの理想的な立地条件でした。2010年に決定し、11年3月10日に着工したんですよ。その次の日に東日本大震災が発生しました」
社員数も15年に180人ぐらいだったのが、いま千人ぐらいいます。やっぱり単一事業で続けてきたことが大きいと思います」
(参考:北海道新聞 電子版)

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