スポンサーリンク

なまらあちこち北海道|食事づくりからの解放、シニアに広がる「調理定年」

情報

この記事を読むのに必要な時間は約 3 分2 秒です。

会社勤めの人に定年退職があるように、ベテラン主婦らを長年の家族の食事づくりから解放する「調理定年」という概念がシニア世代に広がりつつあります。総菜や冷凍食品などを上手に活用し、手間が掛かる調理の頻度は抑えようという考えからです。

家族の食事づくりから解放 シニアに広がる「調理定年」 惣菜活用で脱・手料理

電気調理鍋やせいろなどの調理器具を活用し、料理の時間を短縮している田川瑞枝さん(62)

電気調理鍋やせいろなどの調理器具を活用し、料理の時間を
短縮している田川瑞枝さん(62)

 

道内でも調理定年を実践する家庭が出始めており、一部スーパーは今後の高齢世帯などの需要増を見据えて総菜や弁当の販売を強化している。
 「底冷えする朝の台所に立つと『ああ、ご飯を作るのをやめたい』と思っていた」。1年前に「調理定年」を取り入れた札幌市西区の自営業田川瑞枝さん(62)はそう振り返る。
 定年退職した夫(62)と2人分の食事を用意する日々。「栄養のあるものを作らなければ」というプレッシャーと、「いつまで作り続けるのだろう」という漠然とした不安を感じていた。そんな時、交流サイト(SNS)で調理定年の存在を知り「私のための言葉だ」と思った。
 調理定年は、東京家政大学の樋口恵子名誉教授が提唱した概念だ。家族の食を支えてきた人が高齢で体力の衰えを感じたら、無理して手作りにこだわらずに、外食や市販の総菜などを上手に活用することを勧めている。
電子レンジ専用調理器具「レンジストーム」で焼いたサバ

電子レンジ専用調理器具「レンジストーム」で焼いたサバ

 田川さんは冷凍食品のほか、食材を入れるだけで自動で調理してくれる電気調理鍋や、焼き物から煮物まで簡単にできる電子レンジ専用調理器具を活用し、調理の頻度や時間を減らしている。
 以前は台所に毎日3時間以上立っていたが、今は調理器具のスイッチを入れるだけ。空いた時間は、仕事や英語学習に充てている。「手間暇かけなくても十分おいしい。簡単なので夫が台所に立つ機会も増え、食事の時間が楽しくなった」
 コープさっぽろ(札幌)はこうした高齢世帯の食生活に対する意識の変化に着目し、総菜や弁当の販売に力を入れる。
 農産、畜産、水産の生鮮3部門で取り扱う食材を店内で調理し、出来たての総菜を販売する「大総菜化プロジェクト」を2020年に開始。道内83店舗で現在展開する。
コープさっぽろでは店内調理の総菜や弁当の販売に力を入れる=コープさっぽろ そうえん店(札幌市中央区)

コープさっぽろでは店内調理の総菜や弁当の販売に力を入れる

 

 カレイの煮付けなどの魚料理や小容量タイプの総菜が高齢者に支持されており、24年度の売り上げは今年1月時点で前年度比22%増に達した。札幌市内の店舗で週3回ほど総菜を購入する同市中央区の主婦(74)は「家庭料理に近い味で気に入っている。毎日食事を作るのはしんどいので助かる」と語る。
 コープさっぽろの鈴木裕子商品本部長は「今後も総菜や即食系商品の需要は伸びる。電子レンジ調理商品や健康志向の総菜などを開発していきたい」と意気込む。
 博報堂生活総合研究所(東京)が昨年、20~69歳の男女1500人に「料理をするのが気持ち的に面倒になり、作らなくなる年齢」を聞いたところ、回答の平均は56歳5カ月だった。「料理をするのが体力的につらくなり、作らなくなる年齢」は平均63歳1カ月で、いずれも仕事の定年時期と近かった。
 これとは別の男女2510人を対象にした意識調査では「料理を作ることが好きな方だ」と答えた人の割合が1998年の37.8%から、2024年は31%に減少。特に50代女性は54.5%から36.5%と大幅に減った。
 同研究所の夏山明美上級研究員は「50代女性は『夫は仕事、妻は家事』との考えを持つ人も多い。義務感から『料理をしなければ』という重圧を受け、料理好きが減ったのではないか」と分析。手料理の頻度を減らすことに後ろめたさを感じる人に「調理済み食品をアレンジするなど、少し手間を加えることで負担も少なく、『調理定年』への心理的ハードルも下げられる」と助言している。
(参考:北海道新聞有料記事)

コメント 感想やご意見をお願いします

タイトルとURLをコピーしました