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国内バレーボールの新たな最高峰リーグ「SVリーグ」が10月11日、開幕した。集客に苦しむリーグ戦に活気をもたらそうと、地域密着と競技力の向上に本腰を入れている。
バレーボール人気復活へ SVリーグ開幕 魅力アップのカギは足にあり?
課題は集客力
SVリーグは、昨季までの「Vリーグ」を改編した。
新たな目標は「世界最高峰リーグ」。収益や観客数を伸ばし、2030年までに男子はイタリアのセリエA、女子はトルコリーグを超えるリーグへの成長を目指す。その第一歩として、シーズン初年度の売上高を30億円、男子の1試合平均の入場者数は2800人の達成を見込む。
1年目は、男子10チーム、女子14チームがそれぞれ参入した。北海道からはヴォレアス北海道(旭川)が加盟。各チームがホーム・アンド・アウェー方式の総当たり戦を行い、男子は上位6チーム、女子は上位8チームがそれぞれ25年4、5月のプレーオフに進む。
競技力を高めるため、1チームの試合数を昨季の36試合から44試合に増やし、コートに立てる外国籍選手(アジア枠は除く)の枠は1人から2人に広げた。
この変更により、連戦を戦い抜く選手層の厚さや、複数の外国籍選手と渡り合うための実力が求められる。
選手集めには資金力が不可欠だ。トップリーグ参入のライセンス取得はこれまで以上に厳しくなり、「年間売上高4億円」や「3千人収容アリーナの整備」などを加入の条件に設定。27年には「売上高6億円」、30年には「5千人収容アリーナの整備」と基準は高まり、条件を満たせなければ、基準が下がるVリーグの対象となる。
10月11日、東京体育館での開幕戦は大盛況だった。
男子のサントリーサンバーズ大阪と大阪ブルテオンが対戦した。昨季、優勝を争ったチーム同士の記念すべき一戦には6526人が訪れた。チケットは販売後、1時間ほどで完売。高橋藍(23)=サントリー=と西田有志(24)=大阪B=らパリ五輪で活躍した日本代表選手が注目を集め、夜の試合は地上波で中継された。
試合は大阪Bが3-0でストレート勝ち。リベロの山本智大(29)=とわの森高出=は試合後、「(選手紹介などの)演出にも迫力があり、盛り上がりの中でとても気持ち良くプレーができた」と笑顔で振り返った。一方で「この環境を当たり前だと思いたくない」とも語り、気持ちを引き締めた。
シーズンは始まったばかりで、観客数の維持は簡単ではない。両チームの選手たちは「1試合を終えただけ」と口をそろえた。
「実業団リーグ」の弱点
選手たちはなぜ、満足しないのか。
近年のバレーボールは、リーグ戦の集客が乏しかった。
1試合平均の入場者数は、Vリーグ1部(V1)男子は04~05年から主に2千人台で推移し、昨季は2180人だった。これは同じく室内競技であるバスケットボールBリーグ1部(B1)の4617人の半分に満たない。ちなみに昨季、V1女子は964人だった。
元女子日本代表で旭川市出身の成田郁久美さん(48)=信州ブリリアントアリーズコーチ、前アルテミス北海道監督=は人気低迷を実感していた。「代表の試合は注目されるけど、『Vリーグってなに?』と言われてしまう。リーグ戦の知名度の低さがバレーボールの弱点」
その背景には、チームの「プロ化」が進まなかった実情がある。
バレーボールは長く実業団によるリーグが中心で、「部活動」の意味合いが強く「長年、地域との関わりが浅かった」とSVリーグの大河正明チェアマン(66)は話す。
Bリーグ盛況に危機感
そもそも、バレーボールはプロ化を急がなかった。
1993年発足のサッカーJリーグはワールドカップ出場を目指し、16年発足のバスケットボールBリーグはトップリーグ二分化による国際連盟からの処分を受けた危機感から、それぞれプロ化した。
だが、バレーボールは過去に男女で五輪金メダルを獲得した代表チームの実績や安定した人気があった。リーグのチーム関係者からは「プロ化は必要ない」との声が根強かったという。JリーグとBリーグの誕生を受けてプロリーグ化を掲げた94年と16年はいずれも、賛同を得られずに実現しなかった。
風向きを変えたのは、Bリーグの盛況だった。
充実したアリーナが次々と生まれ、魅力を高めて入場者数を伸ばした。
昨季は日本代表が沖縄アリーナでのW杯で3勝(2敗)を挙げ、48年ぶりに自力での五輪出場を果たした。この人気をBリーグにつなげ、B1では昨季、1万人を動員した試合もあった。
競技力の評価も高い。イタリアで3季を過ごした高橋藍は「イタリアには日本でのプレーを望む選手が多い。バレー以外(の文化や環境など)にも魅力を感じるのだと思う。SVリーグは世界最高峰になりうる」と期待した。
魅力アップへ「足使う」
ただ、「世界最高峰」への道のりは平たんではない。
開幕後、入場者数は地域によって偏りがあり、女子は千人を下回る試合もあった。
日本バレーボール協会の川合俊一会長(61)は、場内アナウンスによる試合中のルールや判定説明の導入を提案しており、各チームは運営側と選手がそれぞれ、集客への工夫を模索している。
ヴォレアスは母体企業を持たないため、チケット収入がチーム運営の鍵を握る。札幌市出身の戸田拓也(27)は「選手として一番必要なのは勝つこと。それと、ポスター配りなど自分の足を使ったPR活動もとても大事になる」と話す。
昨季までVリーグ2部に所属し、今季はSVリーグ下部相当の「Vリーグ」でスタートする北海道イエロースターズ(札幌市)は、地元企業の傘下に入って経営基盤を整えた。昨季Vリーグ3部に初参戦し今季はVリーグ女子に所属するアルテミス北海道(札幌市)は、昨季限りで監督と全選手が退団したが、その後14人前後の選手が集まった。チームの魅力を高めて将来のSVリーグ入りを目指している。
(参考:北海道新聞デジタル発)
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