スポンサーリンク

なまらあちこち北海道|バレーボールSVリーグ開幕。魅力アップを図る

スポーツ

この記事を読むのに必要な時間は約 5 分47 秒です。

バレーボール人気復活へ SVリーグ開幕 魅力アップのカギは足にあり?

SVリーグ参入の初戦でスパイクを打ち込むヴォレアス北海道の張育陞(右)=2024年10月12日、堺市大浜だいしんアリーナ(中川明紀撮影)

SVリーグ参入の初戦でスパイクを打ち込むヴォレアス北海道の張育陞(右)

課題は集客力

 SVリーグは、昨季までの「Vリーグ」を改編した。
 新たな目標は「世界最高峰リーグ」。収益や観客数を伸ばし、2030年までに男子はイタリアのセリエA、女子はトルコリーグを超えるリーグへの成長を目指す。その第一歩として、シーズン初年度の売上高を30億円、男子の1試合平均の入場者数は2800人の達成を見込む。
 1年目は、男子10チーム、女子14チームがそれぞれ参入した。北海道からはヴォレアス北海道(旭川)が加盟。各チームがホーム・アンド・アウェー方式の総当たり戦を行い、男子は上位6チーム、女子は上位8チームがそれぞれ25年4、5月のプレーオフに進む。
 競技力を高めるため、1チームの試合数を昨季の36試合から44試合に増やし、コートに立てる外国籍選手(アジア枠は除く)の枠は1人から2人に広げた。
 この変更により、連戦を戦い抜く選手層の厚さや、複数の外国籍選手と渡り合うための実力が求められる。
 選手集めには資金力が不可欠だ。トップリーグ参入のライセンス取得はこれまで以上に厳しくなり、「年間売上高4億円」や「3千人収容アリーナの整備」などを加入の条件に設定。27年には「売上高6億円」、30年には「5千人収容アリーナの整備」と基準は高まり、条件を満たせなければ、基準が下がるVリーグの対象となる。
東京都内で行われたSVリーグの開幕記者会見。男女24選手が壇上で新リーグでの抱負を語った=9月30日(金田翔撮影)

東京都内で行われたSVリーグの開幕記者会見。
男女24選手が壇上で新リーグでの抱負を語った。

 

 10月11日、東京体育館での開幕戦は大盛況だった。
 男子のサントリーサンバーズ大阪と大阪ブルテオンが対戦した。昨季、優勝を争ったチーム同士の記念すべき一戦には6526人が訪れた。チケットは販売後、1時間ほどで完売。高橋藍(23)=サントリー=と西田有志(24)=大阪B=らパリ五輪で活躍した日本代表選手が注目を集め、夜の試合は地上波で中継された。
 試合は大阪Bが3-0でストレート勝ち。リベロの山本智大(29)=とわの森高出=は試合後、「(選手紹介などの)演出にも迫力があり、盛り上がりの中でとても気持ち良くプレーができた」と笑顔で振り返った。一方で「この環境を当たり前だと思いたくない」とも語り、気持ちを引き締めた。
 シーズンは始まったばかりで、観客数の維持は簡単ではない。両チームの選手たちは「1試合を終えただけ」と口をそろえた。
開幕戦でボールに食らいつく大阪ブルテオンのリベロ山本智大(中央)=10月11日、東京体育館(成川謙撮影)

開幕戦でボールに食らいつく大阪ブルテオンのリベロ山本智大(中央)

 

「実業団リーグ」の弱点

 選手たちはなぜ、満足しないのか。
 近年のバレーボールは、リーグ戦の集客が乏しかった。
 1試合平均の入場者数は、Vリーグ1部(V1)男子は04~05年から主に2千人台で推移し、昨季は2180人だった。これは同じく室内競技であるバスケットボールBリーグ1部(B1)の4617人の半分に満たない。ちなみに昨季、V1女子は964人だった。
 元女子日本代表で旭川市出身の成田郁久美さん(48)=信州ブリリアントアリーズコーチ、前アルテミス北海道監督=は人気低迷を実感していた。「代表の試合は注目されるけど、『Vリーグってなに?』と言われてしまう。リーグ戦の知名度の低さがバレーボールの弱点」
女子の開幕戦でスパイクを放つ埼玉上尾の選手(右奥)=10月12日、川崎市とどろきアリーナ

女子の開幕戦でスパイクを放つ埼玉上尾の選手(右奥)

 その背景には、チームの「プロ化」が進まなかった実情がある。
 バレーボールは長く実業団によるリーグが中心で、「部活動」の意味合いが強く「長年、地域との関わりが浅かった」とSVリーグの大河正明チェアマン(66)は話す。
SVリーグのVC長野トライデンツで主将を任される藤原奨太(釧路管内白糠町出身)。「地域でのポスター配りでPRし、バレーボール教室を通じて感謝を伝え、コートでの活躍で恩返ししたい」と地域密着への思いを語った=9月30日、東京都内(金田翔撮影)

SVリーグのVC長野トライデンツで主将を任される藤原奨太(釧路管内白糠町出身)。
「地域でのポスター配りでPRし、バレーボール教室を通じて感謝を伝え、
コートでの活躍で恩返ししたい」と地域密着への思いを語った。

Bリーグ盛況に危機感

 そもそも、バレーボールはプロ化を急がなかった。
 1993年発足のサッカーJリーグはワールドカップ出場を目指し、16年発足のバスケットボールBリーグはトップリーグ二分化による国際連盟からの処分を受けた危機感から、それぞれプロ化した。
 だが、バレーボールは過去に男女で五輪金メダルを獲得した代表チームの実績や安定した人気があった。リーグのチーム関係者からは「プロ化は必要ない」との声が根強かったという。JリーグとBリーグの誕生を受けてプロリーグ化を掲げた94年と16年はいずれも、賛同を得られずに実現しなかった。
パリ五輪の男子で活躍した石川祐希(右)。イタリアでプレーする石川はスター選手の一人だ=8月2日、パリ(金田翔撮影)

パリ五輪の男子で活躍した石川祐希(右)。イタリアでプレーする石川はスター選手の一人だ

 

パリ五輪の女子で主将を務め、人気を集めた古賀紗理那さん(前列中央)。五輪後に現役を引退し、SVリーグの女子開幕戦でセレモニーが行われた=10月12日、川崎市とどろきアリーナ

パリ五輪の女子で主将を務め、人気を集めた古賀紗理那さん(前列中央)。
五輪後に現役を引退し、SVリーグの女子開幕戦でセレモニーが行われた。

 

 風向きを変えたのは、Bリーグの盛況だった。
 充実したアリーナが次々と生まれ、魅力を高めて入場者数を伸ばした。
 昨季は日本代表が沖縄アリーナでのW杯で3勝(2敗)を挙げ、48年ぶりに自力での五輪出場を果たした。この人気をBリーグにつなげ、B1では昨季、1万人を動員した試合もあった。
 競技力の評価も高い。イタリアで3季を過ごした高橋藍は「イタリアには日本でのプレーを望む選手が多い。バレー以外(の文化や環境など)にも魅力を感じるのだと思う。SVリーグは世界最高峰になりうる」と期待した。
今季はSVリーグでプレーするサントリーサンバーズ大阪の高橋藍。攻守で質の高いプレーを期待される=10月10日、東京体育館(成川謙撮影)

今季はSVリーグでプレーするサントリーサンバーズ大阪の高橋藍。
攻守で質の高いプレーを期待される

魅力アップへ「足使う」

 ただ、「世界最高峰」への道のりは平たんではない。
 開幕後、入場者数は地域によって偏りがあり、女子は千人を下回る試合もあった。
 日本バレーボール協会の川合俊一会長(61)は、場内アナウンスによる試合中のルールや判定説明の導入を提案しており、各チームは運営側と選手がそれぞれ、集客への工夫を模索している。
 ヴォレアスは母体企業を持たないため、チケット収入がチーム運営の鍵を握る。札幌市出身の戸田拓也(27)は「選手として一番必要なのは勝つこと。それと、ポスター配りなど自分の足を使ったPR活動もとても大事になる」と話す。
 昨季までVリーグ2部に所属し、今季はSVリーグ下部相当の「Vリーグ」でスタートする北海道イエロースターズ(札幌市)は、地元企業の傘下に入って経営基盤を整えた。昨季Vリーグ3部に初参戦し今季はVリーグ女子に所属するアルテミス北海道(札幌市)は、昨季限りで監督と全選手が退団したが、その後14人前後の選手が集まった。チームの魅力を高めて将来のSVリーグ入りを目指している。
サーブを打つヴォレアス北海道の陳建禎主将(19)。7季ぶりに復帰し、地域密着を強めるチームを引っ張る=10月12日、堺市大浜だいしんアリーナ(中川明紀撮影)

サーブを打つヴォレアス北海道の陳建禎主将(19)。7季ぶりに復帰し、
地域密着を強めるチームを引っ張る。

経営体制を強化した北海道イエロースターズの郡浩也主将(右から2人目)と武ダGEADの幹部ら=10月1日、札幌市内(川崎博之撮影)

経営体制を強化した北海道イエロースターズの郡浩也主将(右から2人目)と
武ダGEADの幹部ら。

(参考:北海道新聞デジタル発)

コメント 感想やご意見をお願いします

タイトルとURLをコピーしました