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ウニの殻が野菜の肥料に効果的というなら、海のコンブにも効果があるだろうと始まった活用が、大変効果があるということで、本格的に導入されることになりました。しかもCO2の吸収という2次効果もあり、良いことずくめ。
ウニ殻肥料、コンブ育てる 「ブルーカーボン」積丹の取り組み<SDGs 持続可能な未来へ>
CO2削減に好循環
8月19日午前9時、積丹町の美国漁港。田代輝(ひかる)さん(32)の操縦する小型船が、二つのかごいっぱいにキタムラサキウニを積んで戻って来た。港近くの自宅加工場で家族総出の殻むき作業が始まる。食欲をそそる黄色い身が取り出されていく。
ブルーカーボンを巡る今回の取材の主役は身を取った後の殻のほうだ。かつては町内で約100トンが一般廃棄物として焼却処分されていた。リンや窒素という栄養分を含むウニ殻は、一部は畑の肥料としても使われたが、田代さんら地元漁業者有志は「野菜に使えるならコンブにも」と有効活用を図った。乾燥させ、細かく砕いて、天然ゴムを混ぜ、形を整えて海に投入する。海の肥料として使う。
ウニ殻肥料は大きな機械が不要で漁業者自らスコップなどで作れ、小さな漁船で運んで海底に落とすだけでいい。2020年度の全国青年・女性漁業者交流大会の発表で最高賞の農林水産大臣賞を受けた。「積丹方式」として注目を集め、全国から視察や問い合わせが相次ぐ。
再生した藻場が持つCO2吸収量は今年3月、国の認可法人が発行する「Jブルークレジット」の認証を受けた。申請に向けて奔走した積丹町農林水産課水産業技術指導員の水鳥純雄(よしお)さん(68)は「積丹町と言えばウニ。持続可能な漁業が守られるようにしたい」と話した。
吸収量を取引 道内7件認証
地球上の植物などが吸収するCO2の半分以上は海草や海藻などが取り込んでいる。森林にたまるCO2は燃えたり枯れて分解されると大気中に戻るが、海は火災の心配がなく、枯れても分解されず海中に残りやすい。
藻場を増やせばCO2の削減につながることから、国の認可法人・ジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE、神奈川県横須賀市)が2020年度に「Jブルークレジット」制度を始めた。漁業者や自治体などが藻場の造成などで新たに生み出したブルーカーボンによるCO2吸収量を企業や団体間で売買できるクレジットとして認証する制度だ。JBEによると、これまでに全国41カ所、CO2換算で計約6006トン分のクレジットを認証した。環境保全に熱心な大手企業の購入が目立つ。道漁連も購入している。
1トン当たりの取引価格はプロジェクトごとに大きく異なるが、積丹町の場合、藻場造成などで生み出した6.4トンのクレジットが16万円ほどで売れた。
道内ではこれまでに、積丹町と、宗谷管内利尻富士町、留萌管内増毛町、後志管内泊村、渡島管内福島町、胆振管内白老町、日高管内えりも町で行われている7件のプロジェクトが認証されている。増毛と泊では磯焼け対策として、日本製鉄の協力で鉄をつくる過程で出る鉄鋼スラグを波打ち際に埋め、コンブの成長に必要な鉄分を海に補給している。
環境保護と地域貢献 北海道の可能性大
日本は四方を海に囲まれ海洋面積が世界で6番目に広い。特に北海道は、長い海岸線と豊かな漁場を持ち、ブルーカーボンのポテンシャル(潜在的可能性)がとても大きな場所です。積丹のように海藻を守りウニやアワビなどが育てば地域経済への波及効果も大きい。しかも、道産海産物のブランド価値は本州と比べて飛び抜けています。波及効果の最大化を狙えるのが北海道だと言えます。
道内は森林面積も国内最大でCO2の吸収源になっています。陸上の森も大事ですが、海の森をうまく活用すればさらにCO2を大幅に減らすことができる。ブルーカーボンの取り組みに多くの道民が関心を持ってほしいと思います。
(参考:北海道新聞 メールサービス)
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