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「エスコンフィールド」にタンチョウが観戦に来ている? そんなことを思わせるように、球場の近くにタンチョウが「定着」しているようです。
タンチョウ 千歳川・遊水地からエスコンにも飛来 “近すぎる”人との距離が課題に
北広島市にあるプロ野球北海道日本ハムの本拠地「エスコンフィールド北海道」で7月中旬に行われた花火大会。大輪が夜空を彩るなか、球場から約4キロ離れた水田で2羽のタンチョウが花火の音に動じることなく、たたずんでいた。
千歳市の支笏湖をはじめ、恵庭市、北広島、江別市、空知管内の長沼町と南幌町の計6市町を通り石狩川に合流する千歳川。北海道開発局(開発局)が2020年に洪水対策として整備した6カ所の人工湿地「遊水地」に、タンチョウが定着しつつある。
江別太遊水地(江別市)、晩翠(ばんすい)遊水地(南幌町)、東の里遊水地(北広島市)、北島遊水地(恵庭市)、舞鶴遊水地(長沼町)、根志越(ねしこし)遊水地(千歳市)。そのすべてにタンチョウが飛来している。
市民グループ「道央圏タンチョウ見つけ隊」によると、7月現在、6カ所の遊水地とその周辺には少なくとも14羽のタンチョウが生息する。遊水地や水田では日中にカエルや昆虫などを食べ、夜のねぐらにもなる。見つけ隊は昨年結成した。道央に生息域を広げるタンチョウの動向を追い、保護や共生につながるよう飛来場所や日時などのデータの蓄積を続ける。
エスコン近くにいた2羽は今春、球場から約3キロ離れた北広島市の東の里遊水地で営巣したつがいとみられる。道央圏タンチョウ見つけ隊メンバーで河野潤さん(60)=北広島市=らは、東の里遊水地とその周辺に飛来するタンチョウを保護しようと、市民団体設立に向けて動き出している。
市民団体は「きたひろタンチョウ見守る会」。主要メンバーが7月上旬に集まり、東の里遊水地を訪れる市民らに配布するパンフレットの内容などを確認した。その内容は、農地や私有地に入らず、車から降りないで離れたところから見守る―など。8月末、設立総会が予定される。
東の里遊水地から約10キロ離れた空知管内長沼町の舞鶴遊水地では2020年以降、5年連続で繁殖し、今年5月には2羽のひなが産まれた。長沼町や環境省、札幌開発建設部などでつくる「タンチョウも住めるまちづくり検討協議会」は繁殖期、遊水地の一部敷地内への立ち入りを制限する。人が近づくとタンチョウにストレスを与える恐れがあるからだ。
胆振管内むかわ町の水田では9年前、ひな2羽がカメラを持った人に追い回され、用水路に落ちて死んだ。水田や畑ではタンチョウによる農業被害も課題になっている。札幌に隣接し交通量が多く、車にひかれるなどの事故も懸念される。
タンチョウが生息域を広げ、人との距離が近づいてきた。タンチョウ研究の第一人者で専修道短大名誉教授の正富宏之さん(92)は距離の近さを危ぶむ。
「農業被害など、タンチョウが人畜に害を与える行動を示す場合は断固追い払う。ただ、追い払われたタンチョウが住める場所を人間が確保しないといけない。場所をつくるために、場合によって人間が手を貸すことも必要だ」
「タンチョウの追い払い」という言葉を繰り返す正富さん。市街地近くで両者はどうすみ分けていくのか、課題が突きつけられている。
(参考:北海道新聞 会員限定記事)
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