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「牛には角がある」というのは常識です。そしてこの角は凶器になります。その最たるものが闘牛ですね。スペインの闘牛だけではなく、日本国内でも牛同士を闘わせるものがあります。
私は20代の頃、乳牛の牧場に入って、牛に追いかけられたことがあります。あの巨体で追いかけられ、角で弾き飛ばされたら無傷では済まないと感じ、必死で逃げたものです。その牛に角が無くなるとしたらどうでしょう。
札幌にあります家畜改良事業の「一般社団法人ジェネティクス北海道(札幌)」は、角が生えない無角の乳牛が生まれる精液を発売したということです。
特定の精液を使って、生まれる子の能力を証明する検定があるのですが、その検定を受けた種牛の精液が販売・流通されるのは国内では初めてのことです。
牛の角は、それによって家畜農家の人や作業員がけがをする一つの原因になっています。
ですから、安全のために切除するのです。その方法は、子牛のうちに刃物や焼きごてで角を取る方法を用いられます。しかし角には神経や血管があり、その痛みで牛にストレスがかかります。
その結果、ストレスで餌を食べられなくなって成長が遅れる牛も多いのです。このことはヨーロッパでは動物福祉の観点から批判されていて、国内でも関心が高まっていることを踏まえて開発されました。
ジェネティクス北海道が4月1日に発売した精液は「カイザー」と「ミスターP」の2頭の種牛のもので、いずれも角が生えない「無角遺伝子」を持っています。
カイザーの子は100%の確率で必ず無角牛になります。ミスターPの子は50%の確率しかありませんが、カイザーに比べ乳質などで能力が高くなるという特徴を持っているそうです。
ジェネティクス北海道の関係者の話では
「突然変異で無角牛が生まれることは知られていましたが、子の乳量が少なく、種牛として使いにくいという難点がありました。そこで、2013年から無角牛を能力の高い牛と交配させ、乳量の多い牛を持たせるようにしたのです。」(北海道新聞より)
カイザーとミスターPは検定で、子の乳量の多さや乳質などで十分に経済性を満たすと証明されました。
無角遺伝子は優性遺伝するため、孫やひ孫の代でも無角牛が誕生する可能性が高くなります。
ではなぜ角が無いと良いのでしょうか。それは酪農家が怪我をする可能性が低くなるし、角を恐れて余計な労力を使うことになりからです。そんなストレスがあるなんて、私は考えもしませんでした。
同法人の藤田功事業推進部長は「人にも牛にも優しい」と話しています。
日本も加盟する国際獣疫事務局(OIE)でも「無角牛の選択は除角よりも望ましい」として好意的に受け止めています。
動物福祉に詳しい帯広畜産大の瀬尾哲也准教授は「欧州に比べると日本では動物福祉の理解が遅れていますが、一般にも家畜の実情が知られるようになりつつあり、ガン剤はその過渡期にあります」と話していました。
(参考:北海道新聞電子版、ジェネティクス北海道HP)
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