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函館で人気はラッキーピエロでのお食事。函館市民のソウルフードの人気メニューに迫ってみました。
ラッキーピエロの「チャイチキ」 函館のソウルフード ドジャース大谷も2個ぺろり
手頃な価格で、老若男女の食欲を満たし、「国民食」ともいえそうなハンバーガー。大手チェーンや高級路線の専門店が各地でしのぎを削る中、函館市民から絶大な支持を集めているのが、ご当地チェーン「ラッキーピエロ」の「チャイニーズチキンバーガー」です。甘辛い鶏の唐揚げを挟んだボリューム満点の一番人気商品。
米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手がプロ野球北海道日本ハム在籍時に1食で2個食べたという逸話も残ります。おなかをすかせて、陽気なピエロがトレードマークの店舗を訪ね、「チャイチキ」の愛称で地域から愛される秘密を探りました。(経済部 桜井翼)
「で、でかい……」。チャイチキを目の前にすると、思わず声が漏れました。ごろっとした鶏の唐揚げ3個とマヨネーズのかかったレタスがバンズからあふれんばかり。高さ14センチ、幅11センチで、重さは約300グラムもあります。
462円(店内飲食時)という値段を聞いてさらにびっくり。29歳の記者でも大満足のボリュームで、「コスパ(コストパフォーマンス)」は申し分ありません。
年間50万食以上販売
「年間50万食以上販売する圧倒的人気ナンバーワンメニューです。観光地近くのお店では、販売する商品の9割がチャイチキなんですよ」。3月下旬に港北大前店(函館市港町)を訪れると、王未来(みく)社長が教えてくれました。
チャイチキを手に笑顔を見せるラッキーピエロの王未来社長
市民の「ソウルフード」にかぶりつくと、みずみずしいレタスに特製マヨネーズが絡み、唐揚げの甘じょっぱい風味が口の中に広がりました。他のチェーン店にはない唯一無二の味が、函館市民の胃袋をつかんでいるようです。
おいしさの秘密はどこにあるのでしょうか。レシピを教えてもらおうとあの手この手を使って質問してみましたが、そこはやはり「企業秘密」。王社長に笑顔で断られてしまいました。
ただ、食材や調理方法のこだわりは詳しく説明してくれました。「地域で生産された質の良い食材をその地域で食べる地産地消を理念に掲げており、食材は8割が道産。鶏肉はチルドで配送し、新鮮なうちに提供しています。注文を受けてから作るのもおいしさのポイントですよ」
話を聞き、疑問が湧きました。そんなにたくさんの道産食材を使うと原材料費が高くなってしまうのでは?
王道に反する原価率50%
一般的な飲食店の原価率は20~30%。従業員の人件費や店舗の管理費もかさむため、原材料費は出来るだけ抑えることが飲食店の「王道」です。ところが、王社長は「ラッキーピエロの原価率は50%。常識破りかもしれませんが、なるべく質の良い食材を使っておいしい商品を提供する。これがウチの戦略です」と明かします。利益はどうやって確保しているのでしょうか。
来店客の8割が函館市民
王社長が理由に挙げたのが、常連客の存在です。「実はラッキーピエロのお客さんは8割が函館市民です。たくさんの市民に日常的に使っていただくことで、原価率が高くても商売になるんですよ」。取材時に来店した函館市の大学院生井野友介さん(24)は「友達としょっちゅう食べてに来ます。ラッキーピエロは函館のエネルギー源です」と話していました。
繰り返し利用する「ヘビーユーザー」を獲得する仕掛けの一つが、会員制度「サーカス団」です。利用金額によってランク付けし、最上級の「スーパースター団員」になると、店員が名前を呼んであいさつし、新年会や開店イベントに招待。上顧客を「えこひいき」することで、熱烈なファンを増やしています。
■店舗もメニューも個性豊か
店舗の内装も個性豊かです。港北大前店は「キング・オブ・ロックンロール」と呼ばれるエルビス・プレスリーの人形が出迎え、1950年代の米国を思い起こさせます。他にも、映画「ローマの休日」に出演した俳優オードリー・ヘプバーンをテーマにした江差入口前店(檜山管内厚沢部町美和)や、恋人と海を眺めながら食事を楽しめる眺望が売りのマリーナ末広店(函館市末広町)など雰囲気はさまざま。「同じ親を持つ兄弟でも個性が違うように、お店を訪れた時の驚きや楽しさを大切にしている」(王未来社長)そうです。
来店客を出迎えるエルビス・プレスリーの人形=港北大前店
メニューも店舗によって異なります。オムライスやカツ丼、ラーメンなど客の要望に応えるうちに品ぞろえが増え、現在は合計約140種類。
今年3月には、投打で活躍する大谷翔平選手にちなんだ「二刀流バーガー」を発売しました。大谷選手は日本ハム在籍の14年、プロ初完封を果たした函館遠征でチャイチキを1食で2個完食したといい、応援の思いを込めて開発したそうです。
地元を愛し、地元から愛される-。理想的な関係を築き、今では函館市を中心に、渡島、檜山管内に計17店舗を構えます。記者としては、自宅のある札幌にもラッキーピエロができるとうれしいのですが…。
王社長は「札幌や東京に店を出すことは絶対にない」と言い切ります。最近、タイの実業家から同国への出店を持ちかけられた時も、断ったそうです。「ラッキーピエロは函館市民に支えられて成り立っています。だからこそ、函館のまちに貢献したい。観光客にも函館に遊びに来て食べてもらう。そこに、ラッキーピエロが存在する意味を見いだしています」
函館にこだわり続けるからこそ、函館市民に支持されるラッキーピエロ。観光客にも、夜景や五稜郭とはひと味違った函館の魅力を提供しています。
(参考:北海道新聞メールサービス)
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