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今冬は」「冬眠しないクマ」のニュースが全国的に流されていました。山に食べ物が無くて、冬眠できない状態になっているからだそうですが、実際にはどうなのでしょう。
札幌円山動物園でその生態を観察しています。
エゾヒグマ 「怖い動物」の本当の姿伝える 自然環境の再現で冬眠にも挑戦
札幌市円山動物園(中央区)が1951年に開園して以来、70年以上絶やすことなく飼育してきた動物がエゾヒグマです。近年、野生の個体による農業被害や人的被害も多く発生していて、道民の中には「怖い動物」というイメージを持っている人もいるかもしれません。円山動物園ではヒグマの何を伝え、どのように飼育してきたか聞きました。
2023年12月、ヒグマの大(ダイ)=雄、12歳=は屋外獣舎の柵の隙間に置かれたリンゴ丸々1個を一口でほおばり、15回ほどそしゃくすると、ぺろりと平らげました。
鼻先から尾までの体長が2メートルにも及ぶ大きな体で、雪に覆われた屋外獣舎をのっそり歩き、次の餌へと向かいます。柵の隙間や草陰などに置かれたサツマイモやキャベツ、ハクサイなどを大きな口を開けて食べる姿に、来園者からは「大きいね」と驚きの声が上がっていました。
大は1日3回、野菜を中心に計33キロの餌を食べます。屋外獣舎では、大に探してもらおうと餌を散らして置くこともありますが、飼育担当者の石井亮太朗さん(25)は「毎日餌を探させると変化がなくなってしまう。時々やることで、変化や刺激を与えるようにしています」といいます。
大は餌を一通り食べ終えると、獣舎の壁に背こすりをしたり、座ったりと自由に過ごしていました。
円山動物園では大と、とわ(雌、15歳)の2頭が暮らしています。大は1歳の時に旭川市旭山動物園(旭川)から、とわは2歳の時にのぼりべつクマ牧場(登別)から円山動物園に来ました。
野生のヒグマは単独で行動するため、2頭は同居せず屋内と屋外の獣舎で交互に展示します。
「大はおっとりとして優しい。とわはおてんばで元気な子」。石井さんはそれぞれの性格を説明します。
円山動物園は現在、とわの冬眠に挑戦しています。獣舎の広さが制限されていることなどから2頭は繁殖させていません。それでもヒグマは冬眠中に出産するため「将来的に妊娠、出産に取り組むとなった時にも対応できるよう準備している」と石井さんは説明します。
冬眠中は絶食するので、それまでに十分脂肪を蓄える必要があります。夏に与える餌はキャベツやハクサイなど野菜が中心で、秋になると摂取カロリーを増やすためホッケやクマ用ペレットも与えます。2022~23年の冬眠時には夏よりも40キロほど体重を増やしたといいます。
今季は、12月に入るとだんだんと食欲が落ち、歩くのもゆっくりとなってきました。「冬眠のスイッチが入っているのか、大と獣舎を交代するときに呼びかけても反応が鈍くなっている」と石井さんは話します。
その後、12月中旬から公開をやめました。今は動きが緩慢になり眠る時間が長くなっています。一方、大は「眠くなる様子がないので、冬眠はさせずに展示を続けていきます」といいます。
ヒグマは陸上にいる国内最大の動物です。雌の成獣で体長1・5メートル、体重100~200キロ、雄の成獣となると体長2メートル、体重150~400キロになります。
雄の移動距離は数百キロに及ぶこともあるそうです。鋭い爪は成獣で5~8センチあり、木登りや草の根を掘る時に役立ちます。知能は犬より高いとも言われています。ヒグマは食べた植物の種や栄養をふんとして遠くまで運び、森を豊かにする役割も担っています。
ヒグマの子が母グマの元を離れるのは1~2歳です。4~5歳になると繁殖できるようになります。雄グマは子育てに一切参加しません。5~7月が繁殖期で、12~3月に冬眠、出産します。
冬眠は食料の乏しい冬を乗り切るため発達したヒグマの特徴です。冬眠中には排せつしないため、冬眠穴は清潔に保たれるそうです。
2020年度時点で、道内には推定1万1700頭のヒグマが生息していると考えられています。これは1990年度の5200頭の約2倍の多さです。札幌市内でのヒグマ出没件数も増加し、2023年度は12月末時点で227件と、すでに過去10年で最多だった2019年度の196件を上回っています。
2023年は釧路管内標茶、厚岸両町で牛66頭を襲い、駆除された雄のヒグマ「OSO(オソ)18」と、市街地のそばで暮らすクマ「アーバンベア」という言葉が「ユーキャン新語・流行語大賞」のトップ10に入るなど、クマ問題への注目が高まった年でした。
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