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なまらあちこち北海道|石狩川堤防「ヒツジの王国」が経済効果をもたらすもの・石狩市、当別町

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石狩川の堤防でヒツジを飼うことになった訳は、実は大きな経済的効果があったのです。

石狩川堤防で放牧3年 目指すは「ヒツジの王国」

 北海道一の大河・石狩川(流域面積14330平方キロ、長さ268キロ)。堤防を管理する札幌開発建設部と石狩市でヒツジ約250匹を飼育する「石狩ひつじ牧場」が連携して、石狩市内や石狩管内当別町の堤防にヒツジを放牧するプロジェクトが行われています。
3年目の今年の放牧は10月末で終了しましたが、ひつじ牧場代表の山本知史さん(61)は来年以降、放牧地の規模を拡大していく考えです。サケで知られる石狩市と周辺を「ヒツジの王国」にと夢をふくらませていまする。

石狩川ひつじまつりで子どもたちと一緒に笑顔でヒツジを見つめる
石狩ひつじ牧場の山本代表

 ヒツジの背中に子どもを乗せて記念撮影、5匹のヒツジの50メートルレースの1、2着を予想する-。石狩市生振(おやふる)の石狩川堤防で9月24日に開かれた「第2回石狩川ひつじまつり」(実行委主催)。千人を超える親子連れが、22匹のヒツジとの触れ合いを楽しみました。
石狩川ひつじまつりで子どもたちと一緒に笑顔でヒツジを見つめる石狩ひつじ牧場の山本代表(富田茂樹撮影)

石狩川ひつじまつりで子どもたちと一緒に笑顔でヒツジを見つめる山本代表

周辺に幅約45メートルで草が青々と茂る堤防が広がる中で、実行委員長の山本さんはヒツジの毛刈りの実演前、来場者にこう呼び掛けました。
「みんなここで放牧しているヒツジです。石狩をヒツジ王国にしたい。そのためには皆さんの協力が必要なんです」。
ひつじまつりは、堤防にヒツジが放牧されていることを知ってもらうのが狙いで開催されました。
石狩川ひつじまつりで毛刈りの実演前、来場者に石狩川堤防での放牧につい て説明する山本代表(富田茂樹撮影)

石狩川ひつじまつりで毛刈りの実演前、来場者に石狩川堤防での放牧につい て説明する山本代表

突然、「ヒツジを放牧しませんか」

 ひつじ牧場は今年、27匹のヒツジを堤防に放牧しました。実証実験として始めた2021年7月から3年間で放牧したヒツジは計約80匹。牧場で12月から翌年2月に生まれた雄を羊舎で4~5カ月育てた後の春から秋にかけて半年ほど堤防で放し飼いし、放牧後は食用肉に加工します。
ヒツジが逃げ出さないように放牧地は電気柵で囲っています。放牧中、ヒツジは堤防に生えている草をはみます。飲み水を確保するための井戸を堀り、雨や激しい日差しを避けられる小屋も建てています。
 放牧は、札幌開建が山本さんに提案したものです。
 21年7月の放牧開始から数カ月前のことです。札幌市内のデパートの催事で自家製羊乳チーズを売っていた山本さんの前に、札幌開建の職員が突然現れて言いました。「石狩川の堤防でヒツジを放牧しませんか」
石狩川堤防で行われた石狩川ひつじまつり。奥に見えるのが石狩川

石狩川堤防で行われた石狩川ひつじまつり。奥に見えるのが石狩川

 札幌開建は、大雨などの際に堤防が崩れないように、適度に根を張るイネ科の草を植
えています。伸び過ぎると土壌のひび割れや陥没が発見しづらくなるため、業者に委託し
て刈る必要があるのです。開建は石狩川など大小八つの河川を管理しており、堤防関連の
除草費用は年間約2億3千万円に上ります。

 ヒツジを放牧して草を食べさせることで、除草コストの削減を図ります。草刈り機など
を使わないため、環境にも配慮した取り組みです。牧場側にとってもヒツジの餌代が必要
なくなり、ウィンウィン(相互利益)の関係ができあがります。
山本さんが開建の提案に賛同し、2021年に放牧の実証実験が始まりました。

放牧地の拡大目指す

 生振地区での放牧は「公募除草」という制度に基づくものです。放牧地を無償で借り受けることはできますが、放牧地の整備や維持管理は牧場が行う必要があります。契約期間は3年。牧場は地区内の堤防16ヘクタールを無償で借り受け、これまでに2ヘクタールの放牧地を整備。山本さんは契約更新を視野に8ヘクタールまで放牧地を広げる考えです。
 山本さんは放牧地の井戸掘りも自ら行います。
「最初のころは井戸掘りも失敗だらけだったけど、今は方法を確立できた。やればできるもんだね」
と笑顔を見せていました。
石狩川堤防の新たな放牧地用の井戸を掘る石狩ひつじ牧場代表の山本さん

石狩川堤防の新たな放牧地用の井戸を掘る石狩ひつじ牧場代表の山本さん

生産コストは10分の1

 山本さんは言います。堤防での放牧は草刈りの負担軽減とヒツジの肥育との「一挙両得だけに収まらないメリットだらけの取り組みだ」。
 山本さんによると、堤防で放牧することで、羊肉の生産コストは従来の10分の1に抑えることができました。餌代が必要ない上、羊舎で飼う場合と異なり餌やりや清掃などの人件費もかからないためです。
 山本さんが大きな期待を寄せるのが道産羊肉の生産量の拡大と低価格化です。
 ヒツジと言えば北海道を代表するグルメ・ジンギスカン。
 ただ、農林水産省によると国内で出回っている羊肉の約99%はニュージーランドやオーストラリアから輸入したものです。20年の羊肉の輸入量約1万9400トンに対して、道内が約5割を占める国内の生産量は148トンにとどまっています。

 

 堤防には除草剤や化学肥料を使っていないため、半年間放牧したヒツジの肉は日本農林
規格(JAS)の有機認証を取得できる可能性があるということです。

 山本さんはさらに言います。
「おいしくて、安くて、安全な肉が食べられるようになったら最高でしょ」
札幌・ススキノのジンギスカン店「ふくすけ」で提供する道産生ラム肩ロース100グラムの価格は2860円で、オーストラリア産の約3倍です。国産羊肉は品質の高さで勝負する分、価格も高いのは事実です。
同店オーナーの水野学さん(39)は「おいしいのは間違いないが、道産はやはり高い」と悩ましげに語ります。水野さんは堤防で放牧したヒツジの肉も試食済みです。
「臭みがなく、かめばかむほどうまみが広がる」
と放牧プロジェクトの進展に期待を寄せています。
石狩川ひつじまつりで、山本さんとヒツジを眺める子供たち

石狩川ひつじまつりで、山本さんとヒツジを眺める子供たち

 山本さんは、堤防での放牧により、ヒツジの生産に参入しやすくなることも期待して
います。山本さんによると、電気柵など放牧に必要な設備投資は1ヘクタール当たり約
90万円で、いったん設置すれば10年程度使えるといいます。酪農や畜産の新規就農
には億単位の費用がかかることも珍しくない中、少ない初期投資で済むのは大きな利点
となっています。

 堤防の放牧は手間がかからないとはいえ、従業員8人の牧場だけで、規模を拡大して
いくには限界があります。そこで牧場は12月から、会社員や学生でも気軽に堤防の放
牧事業に参加できる「オーナー制度」を始める予定です。

 条件は来年、1回1時間の放牧地の見回り業務を、春から秋にかけて半年間の放牧期
間中に2回以上すること。1口1万円で、放牧終了後に約1・2キロの羊肉が受け取れ
ます。

石狩川堤防の放牧地でヒツジと触れ合う石狩ひつじ牧場の山本代表

石狩川堤防の放牧地でヒツジと触れ合う石狩ひつじ牧場の山本代表

 見回りを多くすれば、その分受け取る肉の量は増えます。放牧中は自由にヒツジと遊べ、ヒツジの毛や皮ももらえるなどの特典もあります。
山本さんは
「一般的な酪農や畜産を兼業でやるのは難しいけど、放牧ならできる。この協働の考えが広がれば、人手の確保はぐっと楽になるはず」
と期待を寄せています。

(参考:北海道新聞デジタル発)

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