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なまらあちこち北海道|移住希望多い私立「まおい小学校」・長沼町

北海道

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長沼町に新しく開校して2年目の「学びの里小学校」は、その独自の教育課程に共感を寄せる保護者も多く、移住してくる家族が増えています。しかし、一方で住宅が足りなくて困っているという側面がありました。

長沼・私立小「まおい」開校2年目 移住希望多く、足りぬ住宅

旧北長沼小の建物を活用して開校2年目を迎えたまおい学びのさと小。児童入学に伴う家族の住宅確保が課題となっている
開港年目を迎えた「まおい学びの里小学校」
長沼町
 自由な教育を掲げる空知管内長沼町の私立「まおい学びのさと小」が今月、開校2年目を迎えた。全児童76人のうち73人が町外出身者で、入学に伴い町内に家族と移住した児童は19人に上る。ただ農業が基幹産業の町内では賃貸などの住宅物件に限りがあり、町内への移住を諦め他の自治体から通学する児童も少なくない。地元では入学に伴う移住家族の受け入れ態勢の拡充が急務となっている。
 「入学おめでとう。かんぱーい」。8日に同小体育館で開かれた1年生17人の歓迎会で、児童の掛け声に合わせて新入生と保護者、在校生、教職員らがジュースで乾杯した。
 同小では通常の入学式は行わず、在校生手づくりの歓迎会がその代わりとなる。ステージであいさつするのは司会役の上級生たち。教職員は司会から促されて自己紹介するだけだ。細田孝哉校長は「子どもが主役の学校づくりが形になってきた」と目を細める。
 同小はテストや宿題がなく、児童を成績で評価しない。教員は学びを支援する「スタッフ役に過ぎない」(細田校長)からだ。子どもの主体性を第一に重んじる教育方針が注目され、空知管内や札幌のほか関東や関西からも児童が集まる。
 同小を運営する学校法人は小中一貫教育が目標。2026年度には隣接の旧北長沼中に中学校を開校させ、児童たちの進学先とする考えだ。将来は小中の各学年20人ずつ計180人の受け入れを想定している。
「子どもたちに自分で考え行動する力を伸ばして
もらいたい」と語る細田孝哉校長
 町外の児童はスクールバスや保護者の車で通学しており、送迎や時間的な負担を考えると移住希望者は多い。学校側にとって今後の課題は、そうした家族向けなどの住宅確保だ。
 学校側によると、移住希望家族の多くは賃貸の一戸建てを求める。町内の物件数が限られる中、学校側は賃貸可能な市街地の一般住宅や農家の空き家の掘り起こしを行っているが、容易には見つからない。

農家は難色

 物件探しに協力する地元農家、健名(けんめい)美恵子さん(55)は「郊外に農地に囲まれた空き家があっても、家主は貸し出すことに難色を示す」と話す。所有者の多くは農家で、農作業の騒音や農薬散布などで借り主とのトラブルを避けたがるのが大きな理由という。
 昨年夏に家族4人で札幌から町内に移住した自営業吉岡健太郎さん(35)は「移住前は当時1年生の長男のために車で片道1時間の送迎を4月から4カ月間行った」と振り返る。旧知の農家が仲介をしてくれたおかげで、離農農家の空き家を購入できたが、「行政が窓口となり、移住者と農家の橋渡しを行えば、物件探しはもっと円滑になるのではないか」と指摘する。
 長沼町では23年の転入者が381人と、転出者を54人上回った。転入超過は11年ぶりだ。町政策推進課は転入者の15%は児童とその家族とみて「小学校開校の効果は大きい」とする。一方、隣接の栗山、南幌の両町に移住した児童は計10人。中には「長沼での住宅探しが難航した」と話す保護者も少なくなく、長沼町ではすべての転入希望者を受け入れきれていない。

行政支援を

 こうした状況を踏まえ、長沼町は昨年秋、町内の旧教員住宅(6世帯分)を無償で学校法人に貸し出したが、今年3月までに同小教員や児童の家族で満室となった。これ以上提供可能な物件はほぼなく、今後の支援策は見いだせていない。
 まちづくりの問題を研究する室蘭工業大の真境名(まじきな)達哉教授(建築計画学)は「開校前に学校側と町が移住者受け入れについてもっと話し合うべきだった」と指摘。「学校側が地域との関係性を深め、農家などの空き家を紹介してもらう取り組みを粘り強く続ける必要がある。行政も学校側を支援し、積極的に家主と移住者の仲介を図るべきだ」としている。

 まおい学びのさと小学校

 細田孝哉校長が理事長の学校法人「学びのさと自由が丘学園」が運営する。空知管内長沼町の旧北長沼小施設を同町から無償で借り、2023年4月に開校。初年度は1~4年生59人が入学した。道内で5校目の私立小となる。
 国語や算数の基礎学習のほか、授業時間の約半分は「ものづくり」「演劇」「料理」「農業」の体験型学習に取り組む。児童の出身地は札幌圏を中心に道外や空知管内など。児童はスクールバスや保護者の車などで通学する。教職員12人。
(参考:北海道新聞電子版、学びの里公式HP)

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