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なまらあちこち北海道|人間も見習え、求心力・円山動物園

北海道

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日本だけでなく、「ボス」の座についている人は大統領でも首相でも上手に集団をまとめる力が求められます。猿山に来て勉強して欲しいとは思いませんか?

ニホンザル 4代目ボスは支持率高め 人間社会にも通じる求心力    円山動物園

サル山の上部に組まれた丸太の上で餌を食べるニホンザル(畠中直樹撮影)

サル山の上部に組まれた丸太の上で餌を食べるニホンザル

 サル山は動物園正門から上り坂のメインの通りをまっすぐ進んだところにあります。深さ4.5メートルある堀に囲まれた、直径約25メートルの飼育スペース。自然環境と同じ行動ができるよう、植物だけでなく、岩場やはしごが付いた木々、池や洞窟などがあります。網状のロープなども設置され、まるで「アスレチック施設」のようです。
サル山全景。奥は併設された展望レストハウス

サル山全景。奥は併設された展望レストハウス

併設された展望レストハウスの中から見たサル山

併設された展望レストハウスの中から見たサル山

サル山の「平穏」な空気が一変

 1982年にオープンしたサル山は、老朽化したため2015年にリニューアルしました。隣接する「展望レストハウス」からは、ガラス越しにサルを間近で見ることができます。
 春の陽気に恵まれた4月上旬。サル山を訪ねると、サルたちは日当たりの良いコンクリートや芝生の場所で寝そべったり毛繕いをし合ったりしていました。
日当たりの良い場所で日なたぼっこするニホンザル

日当たりの良い場所で日なたぼっこするニホンザル

 午後3時の夕食。「平穏」が一変しました。ニンジンやキャベツ、リンゴ、サツマイモ、煮干しなど餌入りのバケツを持った飼育員の石井亮太朗さん(25)が近づくと、サルは起き上がります。「ギャッ、ギャッ」。早くよこせと言わんばかりの鳴き声が周囲に響き渡りました。

4代目ボスは27歳

 その中でただ一頭、この日一番のごちそうだったゆで卵を、悠々と手に取る姿が目に留まりました。サル山の4代目ボス「みさ次(じ)」(27歳)です。
 23年2月、雄の中松(ちゅうまつ)が35歳で死にました。08年から15年間にわたって群れの秩序を守っていた中松が死に、みさ次がボスになったのです。
第一位(ボス)の「みさ次」

第一位(ボス)の「みさ次」

 ボスはどうやって決まるのでしょう。ケンカが強かったり、ボスなど有力な個体と血縁関係があったりする場合にその座に就くようです。ただ、「みさ次の体はそこまで大きくない」と石井さん。自分の派閥で手下を従えるよりも周りに慕われるタイプといいます。中松がいたころから、みさ次は「次のボス」と目されていました。「本人も気付かぬうちにボスになっていたのでは」と石井さんは解説します。

ルーツは京都の丹波山系

 ニホンザルは北海道と沖縄を除く日本全土に生息し、野生では20~60頭ほどの群れで暮らします。円山動物園にいるのは、京都府の丹波山系で捕獲した野生のニホンザル61頭を運んできたのがルーツ。農作物被害などで地域を悩ませていた群れを引き取ったといいます。
飼育員から与えられた餌のイモを食べる第一位(ボス)の「みさ次」

飼育員から与えられた餌のイモを食べる第一位(ボス)の「みさ次」

 ピーク時には約140頭まで増えました。そこで現在は全ての雄に避妊手術をしており、新しい個体は20年近く生まれていません。ただ、変わらないメンバーでの暮らしが、群れの関係性の硬直を生んでいます。
 「ちゃ里(り)」と「ちゃ緒(お)」の姉妹のザル2頭がいます。姉の「ちゃ里」はボスのみさ次と仲が親密。先代の中松と近かった雌「てつ綺(き)」を姉妹で攻撃しました。今年1月、てつ綺は指や足を切断する大けがを負い、一時入院しました。群れの中のけんかは珍しいわけではありませんが、痛ましい事故です。
日当たりの良い場所で日なたぼっこするニホンザルたち

日当たりの良い場所で日なたぼっこするニホンザルたち

 円山動物園のニホンザルは19~36歳で、平均は26歳。平均寿命が25~30歳なので、高齢化が進んでいるのです。20、21年に人工授精を試みましたがうまくいきませんでした。この群れに若いサルを加えたとしても、また新たな抗争を生む恐れがあります。簡単な解決方法は見当たらないといいます。
 飼育員の石井さんは千葉県の動物専門学校を卒業。22年からニホンザルを担当しています。複雑な関係図を抱えるサル山ですが、「時間をかけて観察すればするほど、かわいいし面白い動物です」と魅力を語ります。
ニホンザルたちに餌を与える飼育員の石井さん

ニホンザルたちに餌を与える飼育員の石井さん

 「顔の赤さで異性を引きつけ、仲間を見分ける」「群れの中には3~4の派閥がある」―。週2回ほど行うガイドでは、ニホンザルの魅力を来園者に伝え続けています。
 日本の固有種です。ただ、農業被害が深刻化するなど課題もあります。また、一部地域では違法に持ち込まれた外来種と交配し、純血のニホンザルが減っているとされます。「ニホンザルの魅力を知ってもらう一方、課題や現状を来園者にいかに知ってもらうか。腕が試されています」。石井さんはのんびり過ごすニホンザルを見つめながら自分に言い聞かせました。

(参考:北海道新聞電子版)

 

 

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