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なまらあちこち北海道|南区の霊園に外国人観光客が続々 なぜ?・札幌市

北海道

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札幌市南区にある「真駒内滝野霊園」には毎日外国人観光客が押し寄せています。霊園なのになぜ、こうも人出が多いのでしょう。その魅力に迫りました。

札幌・南区の霊園に外国人観光客が続々 なぜ?

夏はラベンダー、冬は雪に覆われる頭大仏の全景(小型無人機使用、小室泰規撮影)

夏はラベンダー、冬は雪に覆われる頭大仏の全景

 雪が積もった丘の上に大仏の頭がのぞいています。あまり見たことのない光景です。トンネルをくぐり大仏に近づきました。「ちょうど降り積もった雪が大仏の服のようにも見えました。大仏がとても近くに感じられ、満足しました」

 

 今年3月、台湾から札幌など北海道を訪れた蔡傑立さん(27)は、霊園を訪れて見た頭大仏の印象をそう振り返ります。以前、インスタグラムで知って訪れてみたいと考えていました。友人とともに札幌市中心部からレンタカーで霊園に向かい、動画や写真の撮影を楽しみました。

 

 旅行が趣味の蔡さん。米動画配信大手ネットフリックスで配信されているドラマ「First Love 初恋」を見て、北海道の美しい光景に感動し、北海道旅行を決めました。2週間あまりの滞在中、網走や知床で流氷観光などを楽しみました。頭大仏は深く印象に残る場所となりました。

蔡さんのインスタグラムの投稿写真。「降り積もった雪が大仏の服のように見えた」という

大仏もモアイ像もストーンヘンジも

 霊園の「頭大仏殿」は高さ13・5メートルの大仏を覆うように丘が広がっています。丘を眺めても大仏の頭の一部しか見えません。
 大仏を見るためには参道を進む必要があります。進路を遮るように設置された「水庭」を迂回(うかい)し、長さ40メートルのトンネルを抜けるとようやく、大仏を仰ぎ見ることができます。直径14メートルの開口部から光が降り注ぎ、大仏を照らします。
 頭大仏のほかにも、霊園内にはモアイ像やストーンヘンジも設置されており、外国人観光客のSNSにも多く登場します。でもなぜ、霊園に大仏殿やモアイ像があるのでしょう。

「見せない方がいい」

 大仏は2006年に建立されました。2011年の霊園開園30周年事業として、世界的な建築家の安藤忠雄さん(82)に大仏周辺の建築設計を依頼。大仏を囲んだコンクリートの丘に土を盛り、2016年7月に頭大仏殿が完成しました。
頭大仏殿の内部。直径14メートルの開口部から自然光が降り注ぐ

頭大仏殿の内部。直径14メートルの開口部から自然光が降り注ぐ

 安藤さんは以前、北海道新聞の取材に「ありがたいものは見せない方がいい。全部見えたら魅力を失います」と答えています。水庭を迂回することには、日常から非日常へと心を切り替える意図があるそうです。トンネルの天井部には、ひだのような装飾があります。暗がりで胎内をイメージさせる空間として設計されました。
トンネルの内部。天井部にひだのような装飾がある(霊園を管理する公益社団法人ふる里公苑提供)

トンネルの内部。天井部にひだのような装飾がある

 黄可寧(27)さんは5月、マレーシア・クアラルンプールから霊園を訪れました。

 建築事務所で働きながら建築関連の資格取得を目指しています。尊敬する建築家の安藤忠雄さんの作品が見たくて札幌を旅行。市中心部からタクシーで霊園に向かいました。「作品の背景や意図を事前に学んで行ったことで、より感激が増しました。一帯に平和的な雰囲気を感じました」と振り返ります。

 フランス人男性はインスタグラムとブログで「日本全国各地の大仏を見る機会があったが、頭大仏は中でも特別見に行きたい場所だった。独特で落ち着いた雰囲気に感動した」とつづっています。

モアイ像前に立つ黄さん(インスタグラムより)

 「世界最大の閲覧数」をうたう口コミサイト「トリップアドバイザー」にも霊園に関する口コミが多く書き込まれています。カナダから訪れた人は「神聖な場所に感動した。珍しい設計で独特に感じられた。霊園を観光地にすることに少し違和感を感じたが、行く価値がある」とつづっています。
 このほかの書き込みも紹介しましょう。
・「とても素晴らしかった。世界的な建築家タダオ・アンドーによる建築物。絶対に行くべきだ」(イスラエル)
・「バスのローカル線を乗り継いで行った。雪を被った大仏は平穏で平和に感じられた」(オーストラリア)
・「とても美しく落ち着いた雰囲気の場所」(イギリス)
・「(大仏は)本当に巨大。遠くからでも見えるけど、間近で見ると改めてその大きさに驚いた」(イギリス)
・「大仏と大仏殿の建築は見事。その大きさと平穏な雰囲気に息をのんだ。ここを訪れたことは忘れられない思い出になった。札幌に来るなら訪れるべき場所」(タイ)
・「頭大仏は傑作。行く価値はある」(ベルギー)
・「建築物のブログで頭大仏を見かけ、北海道旅行を決めた。アンドー建築は美しかった」(ポーランド)
ラベンダーの花が咲く時期の週末などには丘を散策しながら花を楽しめる(ふる里公苑提供)

ラベンダーの花が咲く時期の週末などには丘を散策しながら花を楽しめる

明るい霊園に

 なぜ大仏やモアイ像、ストーンヘンジを霊園に設置したのでしょうか。
 霊園を運営する公益社団法人ふる里公苑(札幌)事業部長の岩渕直哉さん(47)は言います。「霊園は従来、暗くて悲しいところという印象がありますが、真駒内滝野霊園は公園霊園として、家族みんなで何度もお参りに行きたくなるような明るい霊園にしたいと考えています」と話します。モアイ像やストーンヘンジは「宗派を問わない公園霊園として先祖を祭るためのシンボル」として設置したといいます。

 

 2016年に頭大仏殿が完成するまで、観光客が来園することはほとんどなかったそうです。2018年ごろから外国人観光客の来訪が目立つようになりました。コロナ禍で落ち込んだものの、この1年は回復傾向にあります。国・地域別ではタイからが多く、次いで韓国や台湾などでアジア圏が目立ちますが、欧米からの観光客もいます。霊園は南区郊外にあり、交通の便がいいとは決して言えません。海外からの観光客は主に観光バスを利用しますが、路線バスやレンタカーで訪れる人もいます。

真駒内滝野霊園内のストーンヘンジ(ふる里公苑提供)

真駒内滝野霊園内のストーンヘンジ

1日2000人

 岩渕さんは「海外からの来園者が増えることで、話題を呼び、国内の来園者も増え、明るい霊園づくりにつながっています」と話します。最近は旅行雑誌やツアー、SNSなどで霊園が取り上げられることが増え、頭大仏殿の丘でラベンダーが咲く7月には、1日の来場者数が2000人以上となることもあるといいます。

 

 札幌市観光・MICE推進部の観光誘致・受入担当課長の瀬川裕佳子さん(55)は頭大仏について「安藤忠雄さんの建築物でもあることから、外国人からの注目度も高く、インバウンド観光客向けにここ数年、旅行会社向けのプレゼンやサイトなどで紹介している」と話します。

 霊園ではありますが、冬場の雪景色やラベンダーの紫色など、北海道ならではの四季の移ろいを感じられる場所で、世界的な建築家の作品を楽しめることが外国人観光客に受けているのではないでしょうか。

咲き誇るラベンダーの奥に見える大仏の頭

咲き誇るラベンダーの奥に見える大仏の頭

桜の時期には、桜と大仏を目当てに観光客が訪れる(いずれもふる里公苑提供)
桜の時期には、桜と大仏を目当てに観光客が訪れる

真駒内滝野霊園

・開門時間 4月~10月 午前7時~午後7時
      11月~3月 午前7時~午後6時 年中無休
 頭大仏殿のみ 4月~10月 午前9時~午後4時
       11月~3月 午前10時~午後3時
※拝観の際はラベンダー維持協力金として300円が必要、
メンテナンスや天候のため、時間にかかわらず閉鎖することがある

(参考:北海道新聞Dセレクト)

 

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