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なまらあちこち北海道|不気味さで人気上昇、石狩灯台お兄さん・石狩市

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石狩灯台お兄さん 不気味さで人気上昇 全国初、キャラクターで「名誉灯台長」に

 「石狩灯台お兄さん」を知っていますか。明治期に点灯し、現存する北海道最古の灯台とされる石狩市の石狩灯台をPRするキャラクターです。誕生から6年。灯台の赤と白の外観を模して、顔面を赤白に塗った姿が「不気味だけどインパクトがある」などとして、じわりじわりと人気を拡大してきました。
6月5日には小樽海保から、石狩灯台の知名度向上に貢献したとして「名誉灯台長」の称号を授与されました。キャラクターによる活動が評価され、この称号が授与されるのは全国で初めてです。灯台お兄さんの人気の理由に迫りました。(報道センター 今関茉莉)

 石狩市の石狩市役所。クールビズの一環で、灯台お兄さんのイラストがあしらわれたT
シャツを着て仕事をしている職員がいます。地元のPRに一役買っている灯台お兄さんの
活動を盛り上げるためです。Tシャツなど、灯台お兄さんグッズは、人気に着目した石狩
市内の業者が5月から販売しています。「実物は一見、気持ち悪いが、イラストにするこ
とで不気味さが軽減されているので着やすい」。石狩市水道部水道営業課の多田宏主任は
そう話します。

 市水道部では職員7人ほどが毎週金曜、そろって灯台お兄さんのイラスト入りTシャツ
を着て業務にあたっています。当初は、それぞれ思い思いに着たい日に着ていましたが
「せっかくなら一緒に着て盛り上げよう」と毎週、そろって着るようになりました。

 灯台お兄さんのことをあまり知らない人は「このTシャツは何だ。不気味だ」と驚くかもしれませんが、松田裕水道部長は「市民の中で認知度も上がっており、地元のPRの一助になる。市民にも楽しんでもらえれば」と話します。

 休日などを利用し、ボランティアで灯台お兄さんに扮(ふん)するのは、石狩市職員で、市民図書館に勤務する高木順平さん(40)。高木さんによると「石狩灯台の妖精に高木さんが体を貸し出した」との設定です。決め台詞は「赤白つけようぜ」、人差し指を前に突き出すのが決めポーズです。高木さんは190センチの身長を生かして、灯台お兄さんになり切り、灯台をPRしています。
 メークは「夜間に、より目立つように」と白く塗る部分を多くしたり、「より不気味になるように」と目の周りを黒くしたりするなど、細やかな工夫をしています。ひょろりと背が高くてユーモラス。人によっては不気味に感じる灯台お兄さん。
 活動の始まりは2017年。石狩灯台が初めて点灯された1892年(明治25年)から125周年記念の市民向けバスツアーの時でした。当時、市商工労働観光課で勤務していた高木さんは、協力してくれるボランティアへの感謝の思いから「何か盛り上げられないか」と考えました。灯台風の帽子を作り、ツアー当日にかぶって案内すると、参加者は大笑い。高木さんは「想像以上の反響だった」と振り返ります。
 高木さんはさらに「キャラクターとしてどうすれば目を引くか」とアイデアを練りました。翌18年のイベントには、帽子を厚紙と画用紙で作り直して臨みました。衣装も赤と白のストライプの服を購入し、顔を赤一色に塗りました。

「怖い」と逃げる子供もいましたが、高校生たちが「気持ち悪い」と笑いながら写真を撮るなど上々の反応がありました。高木さんは「多くの人に楽しんでもらえる」と確信したそうです。

 


コロナ禍ではさまざまなイベントが中止になりました。しばらくは灯台お兄さんが登場す
る機会はありませんでしたが、2021年10月、灯台のライトアップイベントが開かれ
た際に久々に灯台前に登場。待ち望んでいたファンから「来ると思ってた!」などと多く
の声がかけられました。

 灯台お兄さんは、次第に各メディアに取り上げられるようになり、交流サイト(SNS)でも話題となりました。

石狩灯台の名誉灯台長の称号授与式で、ポーズを一緒に決める石狩灯台お兄さんと
海保のマスコット「うみまる」

 「名誉灯台長」は海上交通の安全を守ることに貢献した住民をたたえようと小樽海保が2009年に創設しました。これまでに漁業者や元郵便局員など、灯台業務を支えた住民に贈られてきました。灯台お兄さんへの称号授与は、北海道内で9人目で、石狩灯台としては初めてです。灯台お兄さんを目当てに観光客が訪れる活躍ぶりを小樽海保が評価したのです。
 小樽海保の萩中広樹部長は22年10月のライトアップイベントに参加した際に、初めて灯台お兄さんを目撃しました。灯台お兄さんが、記念撮影を求める人たちに囲まれる様子を見て「灯台お兄さんの話題を通じて、灯台への関心が高まっている」と感じたそうです。
 6月5日に灯台前で行われた授与式では、萩中部長が灯台お兄さんに、名誉灯台長の称号記と「名誉灯台長」と描かれた赤色のたすきを手渡しました。海上保安庁のマスコットキャラクター「うみまる」も駆けつけて、灯台お兄さんの人差し指を前に突き出す決めポーズを一緒に取って、その場を盛り上げました。居合わせた札幌市厚別区の自営業水野るり恵さん(51)は「もともとインパクトがすごいキャラクターだけど、名誉灯台長になり、より注目を集めそう」と話していました。

 「灯台お兄さんだ!」「一緒に写真を撮って下さい」。授与式の後に行われたイベント
では、灯台お兄さんが登場すると、数十人のファンなどが取り囲みました。友人と訪れた
という石狩市花川北の高校3年生角井伶歌さん(17)は「石狩灯台の名誉灯台長になっ
たと知り、ファンになった。自分が住んでいるマチが盛り上がってうれしい」と喜びまし
た。

「愛犬を抱っこして」というリクエストに笑顔で応じる石狩灯台お兄さん

 イベントには、灯台お兄さんを意識して、赤白やしま模様の洋服にして訪れるファンもいました。灯台お兄さんの決め台詞「赤白つけようぜ」を言うともらえる缶バッチ120個は、わずか1時間で配り終えるほどの人気でした。缶バッチ目当てに来場しても、バッチ配布に間に合わなかった人もいて、残念がる声も上がりました。
「缶バッチは終わっちゃったけど撮影はどうですか」。灯台お兄さんは、そうした人たちに声をかけて回りました。見た目は不気味でも「ファンサービスが手厚い」と感動する声も上がりました。

 イベントで子どもから手紙をもらったり、SNSでは灯台お兄さんを題材にしたイラスト
や切り絵が投稿されたり…。灯台お兄さんは今、すっかり人気者です。

 高木さんは「顔面を赤白に塗って登場しているだけなので戸惑いはある」とあくまで控えめです。高木さんについて、市役所の同僚たちは「普段はどちらかといえばまじめな人」と口をそろえます。高木さん自身も「目立つのはあまり好きではないタイプ」と話します。そして冗談めかして言います。「市職員は兼業禁止ですから、灯台お兄さんのグッズ販売の収益なども含め、僕には一銭も入らないんです」

 人気の広がりに伴い、石狩市内のさまざまなイベントやテレビ番組への出演依頼も増えました。それでも高木さんは「(灯台のある)本町地区以外では妖精が降臨できない」「本町地区以外では、妖精の電波が弱い」などと説明し、地元で行われる灯台関連のイベント出演にこだわっています。高木さんは言います。「地道に活動を続け、多くの人に石狩灯台の魅力を知ってもらいたい」。きっとその思いは伝わるはずです。

<デジタル発>石狩市に「灯台お兄さん」出没中 「不気味だ」…人気広がる?

(参考:北海道新聞Dセレクト)

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