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なまらあちこち北海道|春なのに旬のブドウ

グルメ

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北海道はまだ春だというのに、すでにブドウの美味しさが話題になっています。

春でも「旬」、あのマスカットが変えたブドウ市場

輸入ブドウの売り上げは好調が続いている=10日、札幌市北区のスーパーアークス北24条店(石川崇子撮影)

輸入ブドウの売り上げは好調が続いている

 

増えている輸入量

国産の果物が減るこの季節、北海道の多くのスーパーマーケットの棚には海外産の果実が並んでいます。おなじみのバナナやキウイフルーツなどと並んで、最近、人気が高まっているのが、緑、赤、黒と色とりどりの粒が並ぶ輸入ブドウです。

輸入量がどの程度増えているのか。財務省の貿易統計で調べてみました。

 

生食用ブドウの輸入量はこの10年で3倍以上に増えていました。そのほとんどは米国、チリ、オーストラリア、メキシコの4カ国から入ってきています。

人気の理由はなんでしょう。
「やっぱり種がないこと、皮をむかずに丸ごと食べられることです。種を取ったり、皮をむいたりという作業がないため、簡単に食べられ、生ごみが出ません。子どもが食べやすいことが普及を支えています」(ラルズの相沢さん)

札幌市中央卸売市場でも輸入ブドウは取扱量が年々増えています。札幌みらい中央青果の堀江玲雄輸入果実課長がその背景を教えてくれました。
「輸入ブドウは世界を産地リレーして年中入荷しています。1月からチリ、3月からオーストラリア、6月から8月はメキシコ。それが終わると、米国から入荷します」

オーストラリアやチリは日本と季節が逆になります。南半球の実りの秋に収穫されたブドウが、北海道の春に「旬の果実」として味わえるようになっているのです。考えてみると、当たり前のことですが、ありがたいことです。

生食用ブドウの輸入量増加の裏には、2018年12月に発効した環太平洋連携協定(TPP)の寄与もありました。TPPは日本のほか、メキシコやオーストラリアなど8カ国で国内手続きが完了しており、その国の間では生食用ブドウの関税は撤廃されています。18年から19年にかけて、メキシコからの生食用ブドウの輸入量は2・2倍になったほか、オーストラリアからの輸入量も25%増加しています。

かつては秋限定の味覚だったブドウが、季節を問わずに購入できるようになったことで、北海道の世帯の消費行動にも変化が生じていました。

 

上のグラフは北海道の2人以上の世帯の月ごとのブドウ購入頻度を、100世帯あたりの購入回数として示したものです。「家計調査」の直近のデータがある2021年と、2010年を比較すると、国産ブドウが多く出回る8~10月の購入頻度が増えることには変わりないのですが、そのほかの月、特に春先の3~5月の購入頻度が2021年は高くなっていることがわかります。

21年5月の100世帯あたり購入回数は34回。およそ3世帯に1世帯はブドウを購入していることになります。これに対し、10年はわずか10回。10世帯に1世帯しか購入実績がありませんでした。

春の食卓に上ることが珍しくなくなり、大きく変容したブドウの市場。もっとも、輸入ブドウが短期間に急速に国内市場で受け入れられるようになった背景には、国内で生産するブドウが変容した影響もあるそうです。

たわわに実った黄緑色の大きなマスカットの存在感が、ブドウの常識を「種なし、丸ごと」に変えていくための、欠かせない存在になっていました。

シャインマスカットが人気。「種なし、丸ごと」市場が拡大

「ここ数年、種なしで、丸ごと皮まで食べられる品種として、シャインマスカットが大人気になりました。食べやすさから、種なしブドウが一気に市場の主流になっていきました」(札幌みらい中央青果の堀江課長)。

シャインマスカットが作った新たな市場に、「種なし、丸ごと」の同じ特徴を持つ安価な輸入ブドウが入ってきて、ブドウの市場そのものが拡大していました。

 

総務省「家計調査」によると、北海道の2人以上世帯の2021年のブドウの年間支出金額は2612円となり、2010年から66%増えました。購入する数量が増えるとともに、平均価格も上昇しています。比較的割安な輸入ブドウだけでなく、1房千円台のシャインマスカットが北海道でも好まれ、平均価格も引き上げながら、市場拡大が続いています。

ラルズの相沢さんはコロナ禍の影響も指摘しています。
「シャインマスカットを店頭に置き始めたのは5年ほど前からでしたが、当時はまだ供給が少なく、2房ほどを『飾り』程度の位置づけで置いていました。大きく市場が変わったのは供給が増え始めた3年ほど前からです。新型コロナウイルスの感染拡大で、外出が制限されるようになると、自宅でちょっと高級なモノが求められるようになり、売り上げは一気に増えました」

そして、ついにラルズでは21年8~9月にシャインマスカットの売り上げが、巨峰など黒ブドウの売り上げを初めて上回ったそうです。「ちょっと前だったら考えられなかったことです。それだけシャインマスカットの人気が強く、市場の好みが変容してきました」

農家も次々に品種転換

シャインマスカットの市場拡大には、供給面での支えもあります。

 

2010年に全国で250ヘクタールほどだったシャインマスカットの栽培面積は最新の統計がある2019年には7倍に拡大しています。これはすごい変化ですね。

逆に、昔からの生食用ブドウの代表品種である大粒の巨峰や小粒のデラウェアの栽培面積は減少に歯止めがかかりません。2019年にはシャインマスカットとデラウェアの栽培面積の差はほとんどなくなっていました。実は私も種がめんどうなのです。気持ちが分かります。

旺盛な需要に呼応して、栽培面積が増えているようなのですが、シャインマスカットは農業者にとってもメリットの大きな品種なのだそうです。
「ブドウの中では実が硬く、収穫後も長い期間、鮮度を維持しながら販売することができます。また、巨峰など色の濃いブドウは、着色不足があると売れません。色が薄いシャインマスカットには着色の心配が少なく、作りやすいことも品種転換の要因になっています」(札幌みらい中央青果の木沢岳志常務)

北海道内でも多くの品種のブドウが作られている後志管内仁木町などでシャインマスカットの生産がされています。

人気の高いシャインマスカット。生産は道内でも進んでいる(2021年9月、後志管内仁木町)

人気の高いシャインマスカット。生産は道内でも進んでいる

もっとも、北海道産のブドウの取り扱いは札幌市中央卸売市場では減少傾向にあるそうです。
「道内ではワインの生産が増えています。生食用に出ていたナイアガラやキャンベルといった品種のブドウも、ワインの生産が増えるにつれて原料としての利用が増え、生食用として市場に出てくる量は減ってきています」(同)。

とくに小粒で種のある従来品種は「種なし、丸ごと」が主流になる中で、敬遠されがちです。道産ブドウが減って空いたスーパーの棚で、シャインマスカットや輸入ブドウの存在感が高まっているようでした。

円安の価格への影響は

ほかの輸入品と同じように、輸入ブドウも円安の影響を大きく受けています。市場では8・2キログラム入りの1箱単位で取引がされていますが、皮の色が緑色の品種で4700円、赤色の品種で3400円ほどと、前年同時期より400円ほど高い値段がついています。

ただ、店頭ではバナナやキウイフルーツのような大幅な値上がりを意識されることは少ないようです。1個単位で販売される果実と違って、輸入ブドウは多くの場合、パックに入って売られています。パックの容量を少し減らすなどの工夫で、店頭での価格帯を維持することが、売り上げの伸長につながっているようでした。そうなのでしたか。ちょっと気が付きにくいですね。

もっとも、市場で長く果実を取り扱っている札幌みらい中央青果の木沢常務は市場の変化を強調していました。
「働き手不足などから、国産果実の生産量は年々減少しており、それを補うために輸入品が増えてきました。ただ、その輸入品が『安いモノ』という認識は変容しつつあります。依存しすぎることには不安を感じます」

国産の新品種が築いた市場をベースに、1年中、世界各地から旬の果実をいただけるように変容してきたブドウの市場は、グローバル化による自由貿易の恩恵の象徴なのかもしれません。おいしいブドウを、いただき続けるために、持続可能な仕組み作りに思いを巡らせることも必要になってきているのかもしれません。

(参考:北海道新聞電子版)

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