スポンサーリンク

なまらあちこち北海道|広がるギョーザ無人販売・札幌市

グルメ

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分47 秒です。

 

最近、札幌の市内で冷凍ギョーザの無人販売店をよく見かけると思いませんか?

こちらは豊平区平岸にある「札幌みそぎょうざ平岸店」。「毎日できたて!工場直送」「生餃子 無人直売店」。のぼりの文字が目を引きます。

「無人直売店」とひときわ大きく書かれている「札幌みそぎょうざ」の無人販売店(豊平区平岸1の7)=中村祐子撮影

「無人直売店」とひときわ大きく書かれている「札幌みそぎょうざ」

 

ここから少し離れた同じ豊平区の国道36号沿いでは、冷凍ギョーザの無人販売店が2店、競い合うように並んでいました。

別ブランドの冷凍ギョーザ無人販売店が隣りあっている(豊平区豊平3の3)

別ブランドの冷凍ギョーザ無人販売店が隣りあっている

 

「札幌市内はいま、ギョーザ無人販売店の戦国時代ですよ」(飲食店関係者)。そんなに数が増えているのでしょうか、実際に主なブランドの店舗の立地を調べてみました。

 

ここにあげたギョーザ無人販売店が札幌市内に出店をはじめたのは昨夏からです。それからわずか1年で、5社23店が進出しています。いずれも24時間営業。20~36個入りの冷凍ギョーザが千円で売られています。

昨年8月に出店を開始し、現在、札幌市内で最多の12店を展開している「札幌みそぎょうざ」の平岸店の店内を取材させていただきました。

小さな店内に、大きなギョーザの冷凍庫が稼働する札幌みそぎょうざ平岸店(豊平区平岸1の7)=中村祐子撮影

小さな店内に、大きなギョーザの冷凍庫が稼働する札幌みそぎょうざ平岸店

8畳ほどの店は、オフィスだった空きテナントを改装したそうです。店内には大きな冷凍庫が並び、凍ったギョーザのパックがぎっしりと詰まっていました。

誰もいない小さな店内。最初はちょっと買うのに戸惑うかもしれません。運営するイートアンドインターナショナル(東京)の前川雅夫社長が買い方を実演してくれました。

同店のギョーザは、白みそを練り込んだあんを北海道産小麦の皮で包んだ「札幌みそぎょうざ」と「鶏しそ入り」の2種類。どちらも1パック30個入り千円です。冷凍庫から好みのギョーザを取り出し、あとは合計金額を料金箱に入れるだけ。

お金をさい銭箱風の料金箱に入れる。おつりは出ないので要注意

お金をさい銭箱風の料金箱に入れる。おつりは出ないので要注意

 

買い物にかかった時間は1分ほど。一度試せば、それほど戸惑わずに購入できそうです。

もっとも、ギョーザは手軽でおいしいもの。居酒屋でもギョーザが定番メニューになりつつありますが、それでもなぜ、こんなに急速に無人販売店が増えているのでしょうか。

急速に広がる無人販売。背景にはコロナ禍と、その中で続く人件費の上昇がありました。

無人店なら「人件費を抑えて、材料費に回せる」

「札幌みそぎょうざ」を展開するイートアンドインターナショナルは、店内で飲食する有人のギョーザ専門店「SAPPORO餃子製造所」も札幌市内に4店構えています。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で外食需要が激減。その代わりに、調理済みの料理を自宅で食べる「中食」の需要が拡大します。外食から中食へという流れをうけて、冷凍ギョーザの販売店の出店に乗り出しました。

このとき、無人販売店を選択した理由には、コロナ禍で人と人の接触を抑える以外にも狙いがありました。「人件費」と「店の賃料」という店舗展開に必要な二つのコストを大幅に軽減できる点に目を付けたのです。

イートアンドインターナショナルが出店する有人店舗は1店あたり1日4~5人の従業員が必要です。これに対し、無人販売店は市内の工場で製造したギョーザを1日1回、従業員が回ってギョーザを補充しながら、清掃などをするだけで管理できます。

前川社長は無人販売店について、
「人件費が抑えられるほか、冷凍販売なら店内に調理場も不要なので、6坪あれば出店できます。コストが削れる分、材料費がかけられます」
なるほど、確かに外食店で食べるよりコスパが良い気がします。

札幌市4店と石狩市1店の無人販売店を展開する「北海道餃子研究所」も急速に無人店を増やす理由を、「店舗の人件費がかからないから」と説明します。同店の担当者は「有人の飲食店は売り上げが上がらなくても人件費がかかりますが、無人店ならその心配はありません」とメリットを教えてくれました。

北海道の最低賃金は10月から920円に引き上がります。9月までの889円から31円の上昇は、比較可能な2002年以降で最大の上げ幅です。最低賃金は10年前の2012年の719円に比べて約1・3倍に上昇しています。

 

働く側からすると賃金上昇は朗報なのですが、店舗を運営する会社の立場からすると、人件費というコスト上昇の要因になります。人を雇うためのコストである賃金の上昇が続けば、無人店の有人店に対するコスト削減の利点はさらに高まります。

無人店が増えてきた理由はわかりました。でも、なんでギョーザなんですか。
「ギョーザは幅広い年齢層に好まれるパーフェクトフードです。でも、自宅で作るにはあんを作ったり、皮を包んだりするのが面倒ですよね。そこで、外食ほど費用がかからずに、自宅で手軽に楽しんでもらえたらと始めました」(前川さん)

日本冷凍食品協会(東京)の食品メーカーなど365社への調査でも、冷凍食品の国内生産量のうちギョーザが2017年から5年連続で4位にランクインしており、「中食」の人気メニューであることが分かります。

 

「札幌みそぎょうざ」の冷凍ギョーザは冷凍のまま、自宅でフライパンやホットプレートで10分ほど焼けば食べることができます。冷凍から簡単においしく店の味を再現できることも、ギョーザの無人販売店が広がる一因かもしれません。

関東の人気店が北海道上陸

札幌市内で盛り上がる、冷凍ギョーザ無人販売店の出店。さらに、6月には全国に400店以上を展開する大手チェーン「餃子の雪松」が北海道に進出しました。札幌市だけではなく、旭川市や滝川市などにも出店しており、ギョーザの無人販売店は全道に広がる勢いです。

滝川市に出店した「餃子の雪松」(滝川市朝日町東1)

滝川市に出店した「餃子の雪松」

 

この「餃子の雪松」が現在の冷凍ギョーザ無人販売店のチェーン展開の先駆けといわれています。2018年9月に関東で生まれた「餃子の雪松」は、わずか4年で全国417店(9月5日現在)と驚異的なスピードで出店しています。

北海道では6月の滝川市から始まって、旭川市、函館市、釧路市、北見市、小樽市、千歳市、室蘭市、札幌市と13店(同)に店舗網が広がっています。

「餃子の雪松」のルーツは1940年(昭和15年)に群馬県の温泉街に開店した老舗中華料理店にあります。ギョーザの無人販売店を展開する企業、YES(東京都国分寺市)の長谷川保代表の叔父がこの店を経営していました。

看板メニューのギョーザは評判を集めていましたが、叔父の跡継ぎはなかなか見つからず、店舗は存続の危機を迎えていました。

「餃子の雪松」のルーツである群馬県の温泉街にある「雪松食堂」=YES提供

「餃子の雪松」のルーツである群馬県の温泉街にある「雪松食堂」

 

「伝説のギョーザの味を多くの人に広めたい」。長谷川代表はレシピを習得し、2018年から有人の持ち帰り専門店を関東で11店出店しましたが、人気になると客の対応に時間がかかってしまいます。

そこで、2019年の12店目から無人販売店に切り替えました。客が自ら冷凍庫を開けて商品を取り出し、料金箱におカネを入れて支払いをする販売スタイルはここから広がったとされています。

YESの高野内謙伍マーケティング部長は「セルフレジや自動精算機の導入も検討しました。でも、『伝説のギョーザ』を機械で売るのはちょっと…。そこで、昔ながらの販売の仕組みで売ることにしたんです」といいます。

無人販売店の展開でヒントになったのは、北海道でも多く見かける、昔ながらの野菜の無人販売所だったそうです。

餃子の雪松が店内に設置している料金箱

餃子の雪松が店内に設置している料金箱

 

電子マネーが普及する中で、ずいぶん簡素な仕組みに見えますが、しっかり、防犯カメラで監視をしています。さまざまなセキュリティー対策を施していますが、最初は遊び心だった神社のさい銭箱のような料金箱の形も、盗難を防ぐ効果があるようです。

「餃子の雪松」が確立した、ギョーザの無人販売店の形が北海道内でも、多くの事業者によって採用され、店舗の激増につながっているようでした。

ギョーザの次へ、広がる商品

無人販売店は出店に必要な費用も少なくて済みます。「餃子の雪松」では埼玉県内の工場で生産したギョーザを全国各地の無人販売店に配送しています。各地では現地スタッフを雇って商品の補充や店内の清掃をしていますが、有人店だったら必要な会計の場所や水道、バックオフィスなどの場所が不要です。

「出店コストは有人店舗と比べたら、1ケタ少ない」(高野内さん)。爆発的に店舗が増えている理由はここにもありました。

さらに、高野内さんは、無人販売店を展開してわかった意外な事実を教えてくれました。「実は都市部より地方の店舗の方がよく売れているんです。埼玉県の郊外の店で1日に2回来店した女性のお客さまがいたんです。なぜか理由を聞いたら、『一度食べておいしかったから、近所の人にも配ってるの』と。

地方ではこうやって、口コミで店舗のうわさを広めてくれるんですよ」(高野内さん)

もっとも、私たちはギョーザばかりを食べるわけではありません。急速な出店増が続く中で、行きすぎを指摘する声も出てきています。「とくに、出店が加速する札幌では競合が激しくなっている。1年もすれば淘汰(とうた)が始まるのではないか」(他のギョーザ無人販売店の経営者)

でも、最初にギョーザが作り出した、無人販売店の展開の流れは簡単には後戻りしなさそうです。店舗を設けた各チェーンは「ポストギョーザ」の商品展開を考案していました。

たとえば、北海道餃子研究所の花川店(石狩市花川南8の1)では、札幌のラーメン店が作った冷凍のみそラーメン(1食千円)やチャーシュー(1個200円)、石狩市の総菜店のチャーハンおにぎり(15個入り千円)もギョーザと一緒に販売していました。同店の担当者は「ギョーザを核に、地域の飲食店とコラボした商品を展開させたいです」と次を見据えていました。

ためしに、同店で購入した商品を電子レンジやお湯で解凍してみました。おお、まるで飲食店で提供しているような、定食ができあがりましたよ!

北海道餃子研究所の花川店で購入したラーメンとチャーハンおにぎり、ギョーザ。ラーメンにのっているのりとネギは別に用意しました

北海道餃子研究所の花川店で購入したラーメンとチャーハンおにぎり、ギョーザ。ラーメンにのっているのりとネギは別に用意しました

 

人件費を削減、その代わりに材料費にかけられる―。無人販売店の躍進を支えるこのルールは、なにもギョーザだけに当てはまるわけではないようです。

人と人との接触を控えることが求められた、新型コロナウイルスの感染拡大を機に、北海道内でも無人販売がぐぐっと広がっています。新たな売り方が定着すれば、これまでにはなかった、新しいサービスにつながるかもしれません。

(参考:北海道新聞電子版)

【スポンサーリンク】



【クラスモールキッズ】

コメント

タイトルとURLをコピーしました