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なまらあちこち北海道|「ジョブキタ北八劇場」11日にオープン・札幌市

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札幌にまた新しい劇場ができました。「ジョブキタ北八劇場」です。226席の小劇場ですが、いろんなジャンルの発表の場として活用が望まれます。11日からは「あっちこっち佐藤さん」爆笑まちがいなしの公園です。

巨大ターミナルとつながる「ジョブキタ北八劇場」 札幌から変わる!?日本の劇場文化

 札幌駅北側の複合型再開発ビル「さつきた8・1(はちいち)」(北区北8西1)に5月11日、民間劇場「ジョブキタ北八(きたはち)劇場」が誕生します。札幌駅から地下通路で直結する、演劇をはじめとする226席の小劇場です。
 芸術監督で、札幌在住の俳優・劇作家・演出家の納谷真大(なや・まさとも)さん(55)に、どのような劇場を目指すのかを聞きました。キーワードは、「多様性」と「創る劇場」です。
ジョブキタ北八劇場の客席で抱負を語る納谷真大芸術監督=すべて中村祐子撮影

ジョブキタ北八劇場の客席で抱負を語る納谷真大芸術監督

 ジョブキタ北八劇場は、地上48階建ての高層マンションなどがある再開発ビル「さつきた8・1」の商業施設の2、3階にあります。不動産会社「JBEホールディングス株式会社」(田中重明代表取締役)が所有し、田中代表取締役が理事長を務める「一般財団法人田中記念劇場財団」が管理・運営する民間劇場です。
 劇場名には住所の「北8」と同時に、地域の末広がりの発展を願う思いを込めました。今年4月に北海道アルバイト情報社とネーミングライツ(命名権)契約を締結、「ジョブキタ」を冠しました。

誰でも「ウエルカム」な空間に

 芸術監督の納谷さんは「劇場自体が多様性を持っていること」が大きな特長だと説明します。舞台部分は横幅が10・9メートル、奥行きは6メートル、天井までの高さは6メートルもあり、小劇場としては大きなサイズ。演劇を主軸と考える劇場ですが、さまざまな舞台芸術の上演が可能とのことです。
「張り出し舞台を使えば奥行きが9メートルになり、ダンスにも適している。音響もすばらしいので、ライブや映画の上映会、講演会にも対応できます」。多様な貸し館のニーズに応えられるとのことで、「地域の皆さんをはじめ、多くの人たちに使ってもらいたい」とPRします。
広々としたジョブキタ北八劇場の舞台

広々としたジョブキタ北八劇場の舞台

このあと、一度は芸術監督の誘いを断ったという納谷さんが思い描く「ジョブキタ北八劇場」」の未来を語るほか、動画で劇場を紹介します

 小劇場といえば窮屈で、座席の快適さは二の次というイメージがありましたが、「高齢化が進む中、『演劇を見たくても小劇場はもう無理』という声をよく耳にしますから」と納谷さん。快適な座席は、田中理事長の強い希望でもあったそう。
 「この劇場は、ビジネスとして利潤を追うのではなく地域に文化貢献する場をつくりたい、という田中理事長の熱い思いが具体化したもの。幅広い層、たくさんの人に劇場体験という非日常の感覚を味わってほしい」と力を込めます。
快適さを目指したというジョブキタ北八劇場の客席

快適さを目指したというジョブキタ北八劇場の客席

 札幌駅直結という恵まれた立地にも期待を寄せます。「札幌以外の道内、全国、世界からも来てもらいたい。『予定の列車まで時間があるから、劇場に立ち寄ろう』ということになればいいですね。この場所を世界に出して恥ずかしくない作品を生み出す場にしたいんです」と力を込めます。

劇場付きの芸術監督が目指す計画

 施設面のみならず、道内では官民問わず珍しい、劇場付きの「芸術監督」がいることも大きな特長です。芸術監督は、自身の作品上演にとどまらず、どのような劇場を目指すのか、広くソフト面のかじ取りを担います。納谷さんは「劇場5カ年計画」を打ち出しています。「5年かけて劇場の財産となる作品を創り、6年目以降はそれらの作品でロングラン公演ができるようにする」と目標を定めます。
芸術監督として重責を担う納谷真大さん

芸術監督として重責を担う納谷真大さん

 なや・まさとも
1968年、和歌山市生まれ。札幌在住。劇団イレブンナイン代表。早稲田大卒業後、富良野塾へ。2004年に演劇ユニット「イレブン☆ナイン」を結成。2022年4月からジョブキタ北八劇場芸術監督。
 5カ年計画で、特に力を入れるのが「人材育成」だそう。劇場の事業として若い世代に作品をつくる場を提供し、「道内で活躍する若い才能に惜しみなく協力したい」と言います。
 役者やスタッフなどの演劇人育成ワークショップも毎年開催する予定で、今年1~3月には10~50代対象に計78時間のワークショップを実施。12月には受講生らによる演劇「エンギデモナイ」を上演予定です。中高生対象の講座も昨年夏に開催しており、「10年先にこの劇場を使ってくれる人たちを育てたい」と、将来を見据えた人づくりにも力を入れる方針です。
 育成にこだわるのは、劇場のためだけではありません。「(演劇では)若い才能が東京に流出しています。彼らの多くは別に東京に行きたいわけじゃなくて、ここ(札幌)では何もできないと考えて出ていく。でも東京の大きさにのまれ、アルバイトに追われて、何者にもなれずに戻ってくる。そんなケースをたくさん見てきました」と指摘します。
 「もちろん外に出るのは大事なこと。でも、ここで演劇のプロになり、このキャパでは足りなくなった時に東京、世界へ打って出ることができれば、若い人たちの選択肢も広がる」と力を込めます。
劇場が入る札幌駅北口の「さつきた8・1」。高層マンションがそびえる

劇場が入る札幌駅北口の「さつきた8・1」。高層マンションがそびえる

地方の民間劇場のモデルに

 劇場の主催公演として年6本程度演劇を創る予定ですが、「公共劇場ではないので、赤字は最小限にとどめなければならない。自分たちがやりたいことだけをやるわけにはいきません」と表情を引き締めます。
 貸し館事業の充実や、劇場を支えるパートナー(法人)とサポーター(個人)制度導入など、採算面にも目を配ります。「でも、民間でも、さらに地方でも、自立した劇場運営の結果が出せれば、全国のモデルケースになるし、地方の劇場の希望になる。簡単ではないけれど、試行錯誤しながら努力を積み重ねていきたい」
「若い才能のために人柱になる覚悟」と語る納谷さん

「若い才能のために人柱になる覚悟」と語る納谷さん

 意欲を燃やす納谷さんですが、実は芸術監督の誘いを一度断ったそう。「やはり創り手の側にいたかった。でも(北海道演劇財団理事長の)斎藤歩さんから『おまえ、もういい年なんだぞ。若い世代につなぐ役割も果たさなきゃいけないんじゃないか』と言われて」。諸先輩に助けられて今に至っていると気付き、「若い世代の希望となるために『人柱』になる覚悟を決めました」と語ります。
 ジョブキタ北八劇場のこけら落とし公演「あっちこっち佐藤さん」は以下の通り(敬称略)。貸し館やサポーター制度などを含めた詳細は、田中記念劇場財団、電話090・8898・8534か、ホームページ(https://tmtf.jp)へ。
「あっちこっち佐藤さん」(5月11日~6月9日) レイ・クーニー原作の喜劇を納谷真大さんが演出。2007年に初演し、好評を博した納谷さんの代表作だ。主演はオクラホマの藤尾仁志さん。札幌や富良野GROUPの役者らが出演。札幌の地元演劇では初となる30ステージを行う。

(参考:北海道新聞デジタル発)

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