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私たちは諸学校から中・高校を卒業するまで、ずっと試験や宿題に悩まされてきました。
大学時代に、「先生も試験の採点や評価で苦労されてるんじゃないですか」と問うと、
「そうだね」と言われました。
「ならば、試験を廃止したらどうですか」と突っ込むと「そうなったら、君たちが困るんじゃないかい」と返されました。
そうですね、試験がないと、日ごろの評価はどうなるのでしょう?
【長沼】私立「まおい学びのさと小学校」が空知管内長沼町に開校してから3カ月が過ぎました。目指すのは「教えない教育」。通常の学校にあるテストや宿題、通知表は、この学校にはありません。子どもたちはどんな風に学んでいるのか。今月17日に開かれた初の学校祭の様子をのぞいてみました。
「ご主人さまの命令なら何でも従います、ただし暴力や犯罪の手伝いはできません」「でも嫌な命令もあるんでしょ」「そりゃまあ」「私たちを助けてくれたお礼にマオイさんを自由にする命令をしよう」―。
17日の学校祭で披露されたミュージカル劇。子どもたちの元気な声が舞台に響きました。
劇は、ランプから煙とともに登場する魔神マオイと、子どもたちが冒険を繰り広げるストーリー。1年生から4年生の計23人でつくるグループが30分にわたって演じました。児童たちは5月中旬からアイデアを出し合って台本をまとめ、衣装作りに合唱、ダンスなどの練習に取り組んできました。
魔神マオイ役を務めた4年生神谷英悟さん(9)は「100%の出来。自分のやりたいことはできた」と満足そうに話しました。
他のグループの子どもたちは屋台を作り、農家で草刈りをしてお礼にもらったイチゴの入ったミニカステラなどを販売しました。高さ2メートルを超える木製滑り台や番号の付いたパネルをボールを投げて落とすゲームを披露したグループもいました。どの出し物も、子どもたちが話し合って内容を決め、自分たちで準備しました。
まおい学びのさと小学校は、道内5校目の私立小として2023年4月に開校しました。旧北長沼小の校舎を活用し、細田孝哉校長(62)を理事長とする学校法人「学びのさと自由が丘学園」(長沼)が運営しています。
初年度は1~4年生を募集し、現在1年生24人、2年生14人、3年生5人、4年生13人が学んでいます。教諭は8人、事務職員は2人です。
授業時間の半分を「プロジェクト」と呼ぶ体験型学習に充てるのが特色です。学校祭で子どもたちが発表した出し物は、この「プロジェクト」の時間を使って準備しました。
もちろん準備は順調に進んだわけではありません。「劇に出演するメンバーが練習に来ない」「せりふがなかなか覚えられない」。担当教諭の元には、子どもたちから次々と相談が寄せられました。困り果てる子どもたちに、教諭は具体的な指示はせず、「どうしたらいいと思う?」「自分がその立場だったらどうしようか?」などと問いかけを重ねました。
子ども同士が話し合って、どうするべきかを決める。これが、子どもたち自身で問題への対応力や解決能力を高めていく、いわば「先生が教えない授業」です。
教諭を愛称で呼ぶ
子どもたちは教諭を「かくちゃん」「しょうちゃん」などと愛称で呼びます。学内では大人と子どもは対等な関係で、教諭は子どもたちを支える「スタッフ」役です。
子どもを中心とした学校にするには、教科ごとの時間割を細かく定めた従来の授業方法ではなじまないと、細田校長は言います。体験型学習「プロジェクト」を学校授業の軸にしているのは、1年間かけて学校で何を学びたいのか、子どもたち自身が考え、決めてもらうためです。
本年度のプロジェクトは学校側で「演劇」「料理」「ものづくり」の三つのテーマを設けました。1~4年生の全児童は入学後、自分がどのプロジェクトのグループに所属するかを選択します。グループは学年の枠を超えた学級の役割も果たし、児童たちは1年間の授業を共に過ごします。体験型学習「プロジェクト」のほかは、計算や読み書きの定着を図る「基礎学習」などがあります。
細田校長は、体験型学習「プロジェクト」の中でも、国語や算数といった基礎的な知識は横断的に学べるとした上で「今後の社会では自分で考えて行動する能力が求められる。小学生低学年からその基礎となる部分を養っていくことは重要」と強調します。
チャイムなし 時間も自分で管理
子どもたちの自主性を重んじる校内では、暴力や差別的な言動、命に関わる危険な行為以外、行動は原則自由です。
ただし、みんなが学校で快適に過ごすルールなどは必要に応じて決めています。「図書室の本は読んだら片付けよう」「靴箱をちゃんと利用しよう」「校舎の上から物を落とすのはやめよう」など、児童が司会を務める週1回の全校ミーティングで話し合ってきました。また学校にはチャイムはなく、児童たちは教室の時計や持ち込み自由な腕時計などを見て、時間管理をするよう促されています。
ある日の基礎学習の時間。授業時間になっても数人の児童が着席せず、課題プリントそっちのけで、休み時間に捕まえたクワガタ2匹の飼育箱を段ボールで作り出し、図鑑で飼育法を調べ始めました。担当教諭たちは子どもたちに着席を数回呼び掛けたましたが、無理強いはしませんでした。
教諭の宮崎愛さん(38)は「子どもを注意して従わせることは大人の都合に過ぎない。公立学校のような画一的な授業の進め方は教諭も児童も窮屈な思いをするだけ。学び方の選択肢があっていい」と話します。勉強に興味があっても、型にはめるような授業は苦手という子どもは少なくないといいます。
学校では体験型学習「プロジェクト」の中で、計算や読み書きの必要性を子どもたちが自然と気づくよう工夫を重ねていきたいとしています。
児童たちの成長を信じ、長い目で見守るという学校の雰囲気に、保護者たちは子どもたちの変化を感じ始めています。「以前の小学校に在学した時より、自分の気持ちを素直に話してくれるようになった」「算数が苦手で自信を無くしていたが、今は学校での出来事をたくさん話してくれるようになった」と話します。
公立小学校を定年まで務めたベテラン教諭、阿部実さん(62)は「1日の授業が終わると全身クタクタ」と笑いながらこう話します。「4月はバラバラだった子どもたちがまとまりだした。演劇の体験型学習を通じて、下級生が上級生に思ったことを臆せずに意見できるようになり、壊れた小道具を上級生が率先して修理するようにもなった。2年後に6学年が全てそろうと、この学校はすごいパワーを発揮するはずだ」
何だかワクワクする学校ですね。
(参考:北海道新聞デジタル発)
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