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なまらあちこち北海道|子どもも大好き、極甘フルーツトマト・下川町

グルメ

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あま~い、トマトはいかが? 下川町で栽培されているトマトは、糖度が8以上もあります。そんな果物みたいなトマト食べてみたいと思いませんか。

子どもも大好き、極甘フルーツトマト 北海道は栽培最適地

 つやつやに輝くトマトがベルトコンベヤーに乗って運ばれてきます。
 6月25日、上川管内下川町にある北はるか農協のトマト選果場では、フルーツトマトの選別作業が行われていました。

 

 トマトは光センサーを搭載した糖度測定機を通過し、糖度8度以上のものだけが北はるか農協のブランド「はるかエイト」として厳選されます。選果場は今季は6月5日から稼働しており、10月の終わりまで出荷を続けます。

 

糖度8度以上の「はるかエイト」。1玉ずつ丁寧に箱詰めする=6月25日

糖度8度以上の「はるかエイト」。1玉ずつ丁寧に箱詰めする=6月25日

 選果場に集まるトマトは前の日に収穫されたものだそうです。
 ただ、コンベヤー上のトマトをみると、色は黄色みを帯びていて、スーパーなどの店頭でみる真っ赤なトマトとはかけ離れています。
ベルトコンベヤーで運ばれるトマト=6月25日

ベルトコンベヤーで運ばれるトマト=6月25日

 店頭に並ぶまでには、このあと、まだ数日かかります。
 消費者の手元に届くときに、おいしそうに真っ赤に完熟した状態になるように、あえて完熟する手前の段階で収穫しています。

 

 すっかり熟した真っ赤なフルーツトマトを一口かじってみると、とろっとした甘さとうまみが口いっぱいに広がります。フルーツトマトという名前の通り、強い甘みは果物のようです。北はるか農協で「はるかエイト」の販売を担当する中沢拓也さんは「通常のトマトでも糖度が5~6度あれば甘みを感じますから、『はるかエイト』の甘さはかなり強烈です。なかには糖度が10度を上回るものもあるんですよ」と教えてくれました。
「はるかエイト」は道外でも高値で取引されている

「はるかエイト」は道外でも高値で取引されている

 「はるかエイト」は9割が関東と関西を中心とする道外に出荷され、百貨店や高級スーパーの店頭に並びます。

塩分が残った土壌で育ててみたら…

 農林水産省によると、フルーツトマトは品種名ではなく、特別な栽培法で作られた高糖度のトマトのことをいいます。正式な糖度は決められていませんが、一般的には糖度8度以上のトマトを指しています。
 通常のトマトより糖度を高めるため、栽培時にはとにかく水やりを抑えます。それだけでなく、塩を含んだ水を与えて、根の内側より外側の塩分を高め、浸透圧により根が水分を吸収しにくくします。その結果、含んでいる水分が少なく、甘みが凝縮されたトマトになります。水分が少ないため、通常の大玉トマトより小ぶりという特徴もあります。

 

 フルーツトマト栽培の発祥地は高知県といわれています。誕生のきっかけになったのは、1970年に県内を襲った台風でした。堤防が決壊し、海水が海沿いの農地に流れ込みました。塩分が残った土壌でトマトを作っても、大きく育ちませんでしたが、とても甘いトマトになったそうです。それから、国内各地で競うように糖度の高いトマトが生産されるようになりました。

 

 北海道でも徐々にフルーツトマトの栽培が広がっていきました。卸会社の札幌みらい中央青果でトマトを担当する青山慶之さんは「フルーツトマトの市場出荷量はトマト全体の1割にも及びませんが、都市部を中心に人気は高まっています」と話します。7~8月は道外の産地が高温すぎて出荷量が落ちるため、とくに北海道産フルーツトマトの引き合いが強まるのだそうです。

 

 青山さんが北海道のフルーツトマトに注目するのは、もう一つ理由があります。「夏場の北海道は寒暖差が大きく、ほかの地域より、トマトに糖度がのりやすいんです。フルーツトマトを作るには最適な土地なのかもしれません」。下川町ではトマトを収穫する夏、ビニールハウス内の気温は日中30度まで上昇しますが、朝方には10度にまで下がります。20度の寒暖差がトマトの甘みをより強くしています。

 

 もっとも、「水をあげないで栽培する」という矛盾した生育方法はそう簡単にできるものではありません。たくさんのフルーツトマトが店頭に並ぶまで、数々の試行錯誤がありました。

まさか「甘いトマト」が売れるとは

 北はるか農協によると下川町のフルーツトマト生産は、約30年前、ある1軒の農家の挑戦から始まりました。
 トマトにたくさん水をまく他の農家と異なり、その農家は水やりを制限し、トマトを甘くしようとしていました。もっとも、当時はトマトはもっと大きく、酸っぱいものとの認識でした。「甘さ」にこだわる栽培は珍しく、「こんなトマトを作って売れるのか」と周囲から疑問の声が上がったそうです。

 

 しかし、市場に持ち込んでみたところ、これが高評価を得るのです。「これは売れる!」と直感した生産者が、フルーツトマト生産に注力し始めます。
 「はるかエイト」は2017年に商標登録され、現在は下川町だけでなく、上川管内美深町と同管内音威子府村でも生産されています。生産戸数はおよそ40戸になります。
 「はるかエイト」の販売量と販売金額はともに上昇傾向にあり、2022年の販売量は246・3トンで、商標登録後の5年で約1・8倍に増加しました。販売金額も5年で約1・8倍の2億9676万円に達しています。

試行錯誤しながら、栽培法を確立

 北はるか農協トマト部会の三島卓(たかし)部会長は、下川町でビニールハウス8棟を使って「はるかエイト」を育てています。6月25日に訪れると、収穫前の青々とした実がたくさんついていました。
鈴なりに実がなったトマトの手入れをする三島さん=6月25日

鈴なりに実がなったトマトの手入れをする三島さん=6月25日

 約20年前にフルーツトマトの栽培を始めた三島さんは「苦労の連続でした」と振り返ります。当初、フルーツトマトを土耕栽培で作っていましたが、最初の年は、降った雨を多く吸ってしまってトマトの糖度が上がらず、1玉も出荷できませんでした。その後も天候によって糖度がばらつき、フルーツトマトを安定して出荷することに苦心してきました。

 

 そこで、トマト部会は約10年前、道立総合研究機構上川農試の指導のもと、当時は珍しかった栽培法に挑戦します。
三島さんのハウスではトマトを1株ずつポットに入れ、チューブで養液を送り込んでいる=6月25日

三島さんのハウスではトマトを1株ずつポットに入れ、チューブで養液を送り込んでいる=6月25日

 それは土を入れたポットで栽培する方法でした。トマトの株をポットに一つ入れ、肥料と水、少量の塩を混ぜた養液をチューブで送りこんで育てます。
 現在はさらに光センサーでトマトが浴びた光の量を積算し、ある一定の数値になった最適なタイミングで、養液が自動的に送り込まれる仕組みを導入。収穫量が安定するようになりました。

 

 今年は4月上旬にトマトの苗を植えました。三島さんは「水の量を減らせば糖度が上がりますが、収量が少なくなってしまいます。逆に収量を増やそうとすると、糖度が下がります。フルーツトマトの生産は、バランスを取るのが非常に難しいんです」と話していました。三島さんは糖度と収量のバランスを試行錯誤した末、現在では収穫したトマトの8割以上を「はるかエイト」として出荷しています。

 

 道内外からの移住者が多い下川町では5年前から、ほぼ毎年のように移住者らが就農し、フルーツトマト作りに挑戦しています。希望者は2年間の研修を積むことができる制度を設けており、1年目は町内のトマト農家で手伝いながら勉強し、2年目は町の「農業研修道場」という施設でトマトの植え付けから出荷まで実践的に学びます。「『フルーツトマトを作れば、食っていける』という評判が広まったこともあって、生産者は増えていますよ」と三島さんは今後の収量アップに期待していました。

今のトマトは結構甘い

 札幌市中央区の複合商業施設「マルヤマクラス」に入る青果店「フレッシュファクトリー」の店頭には、北海道内各地から集まってきた真っ赤なトマトが並んでいました。
フレッシュファクトリーの店頭に並ぶ真っ赤なトマト=6月27日

フレッシュファクトリーの店頭に並ぶ真っ赤なトマト=6月27日

 野菜部門バイヤーの船木博文さんは「最近のお客さんがトマトを選ぶときに重視しているのは、甘さです」といいます。店は北海道の各地からフルーツトマトを入荷しており、取材時に販売していた後志管内仁木町産のほか、今後は空知管内栗山町産のものを販売するそうです。
フレッシュファクトリーが販売する仁木町産のフルーツトマト

フレッシュファクトリーが販売する仁木町産のフルーツトマト

 船木さんは「最近はフルーツトマトとうたっていなくても、甘いトマトが増えています」といいます。いずれも成育時に水分を減らすことで、糖度を高めており、どこまで甘く、おいしくできるかは生産者の腕にかかっているようです。

 

 一方、甘さの正体は糖度ばかりではないようです。「糖度が高いトマトだから甘いわけではなく、もう一つ、酸味を少なくすることも重要なんです」と強調します。例えば、フレッシュファクトリーの店頭で販売していた「ネネ」という品種のトマトは糖度の高さだけでなく、酸味が少ないことで、より甘く感じられるため、トマトが苦手な子どもがいる家庭に人気があるといいます。

 

 北海道内にある私の実家では、よく砂糖をかけたトマトが食卓にあがりました。これは北海道や東北地方に多い食べ方なのだそうですが、最近のトマトは砂糖をかけなくても十分に甘くなっており、今では砂糖をかけて食べるなんて、もったいないと感じるようになりました。

 

 逆に言えば、ちょっと前までトマトは酸っぱさや青っぽさが強く、苦手な子どもが多い印象がありました。しかし、種苗大手のタキイ種苗(京都)が2022年度に実施した「野菜と家庭菜園に関する調査」によると、トマトは子どもの好きな野菜3位にランクしています。

 

 あま~いフルーツトマトの普及によって、子どもたちのトマトへの意識も変わってきているようです。

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