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なまらあちこち北海道|道内で「推し活」スポット続々。「推し休暇」も

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「推し活」は流行語にもなりましたが、最近「推し休暇」なるものまで現れてきています。元気に推し活をしてもらって、また元気に職場で力を発揮してもらいたいということでしょうかね。

レンタル個室で鑑賞会、推しカクテル提供の飲食店… 若手の離職防止に「推し休暇」導入も

 好きな芸能人やアニメのキャラクターなど、イチオシのメンバー「推(お)し)」を熱狂的に応援する「推(お)し活(かつ)」をしたことはありますか。活動内容に明確な定義はなく、友人同士で音楽ビデオの鑑賞会をしたり、イメージに合ったグッズを集めたりするなど、楽しみ方は人それぞれです。
 札幌では今、そんな活動を楽しめるお店が続々と登場しています。社員の離職防止を狙い、「推し休暇」を導入する職場も出てきました。
大画面に韓国アイドルのビデオを映して歓声を上げる山根凌香さん(左)と中島鈴華さん=札幌市中央区の「狸小路BASE TANUBE」(北波智史撮影)

大画面に韓国アイドルのビデオを映して歓声を上げる

 3月、札幌の繁華街・ススキノにあるレンタルスペース「狸小路BASE TANUBE(タヌベ)」。札幌市の会社員2名、は大画面に映った推しを見つめ、抱き合って声を上げました。「かっこよすぎる!」「この表情が最高」
 2人が応援するのは、人気音楽グループ「BTS」の弟分にあたる韓国の男性5人組アイドル。月に2回の頻度でこの個室を借り、グッズのペンライトやブロマイド、デリバリーした韓国料理を持ち込んで、推しの「鑑賞会」を楽しんでいます。
 人目を気にせず思い切り声を出して応援できるため、日々のストレス発散になるのだとか。山根さんは「推しは生きがい。おかげで毎日仕事を頑張れている」と笑顔で教えてくれました。
 タヌベはコロナ禍の2021年秋に開業しました。個室が好まれる傾向とマッチし、これまでに延べ400組ほどが利用したといいます。部屋は1~4人収容の小部屋(9平方メートル、1時間2750円)と、最大15人収容の大部屋(21平方メートル、1時間5500円)の2タイプ。
 平日だと約半額で利用でき、ライブ鑑賞のほかコスプレの撮影会やビジネス利用まで、さまざまな用途に活用されています。
さまざまな韓国のお菓子が並ぶ店舗1階

さまざまな韓国のお菓子が並ぶ店舗1階

 店を運営するミキコーポレーション(札幌)はもともと宿泊業や携帯電話事業を手がけていました。コロナ禍で売り上げが落ち込み、近年注目されている推し活市場は、感染症の影響を比較的受けにくいと判断して、参入したそうです。
 店舗1階には韓国のお菓子や化粧品がずらり。平日の昼間でも、若い女性らを中心に客足が途絶えません。お店を統括する同社事業開発部の木元泉さんは「推し活を楽しめる店は都心ではたくさんありますが、北海道だとまだまだ珍しいのかもしれません」と語ります。
韓国のネオン街をイメージさせるしゃれた内装も人気だ

韓国のネオン街をイメージさせるしゃれた内装も人気だ

 「推し活」は21年の新語・流行語大賞でノミネートされました。アイドルの応援に生活をささげる主人公を描いた小説「推し、燃ゆ」(宇佐見りん著)も同年、芥川賞を受賞しベストセラーに。推し活が若者の生活に密着した消費活動になっていることがうかがえます。対象はアイドルだけにとどまりません。歴史上の人物やスポーツ選手、ゆるキャラ、食べ物など「他人に勧めるほど好きで、応援したいもの」は全て対象になります。
 消費者庁が21年度に実施した「消費者意識基本調査」によると、「有名人やキャラクター等を応援する活動にお金を使う」という設問に「当てはまる」、「ある程度当てはまる」と答えた人の割合は全体で10・3%。若い世代に絞ると、10歳代後半は42・1%、20歳代は31・8%にも上りました。
 矢野経済研究所(東京)は22年に行った調査で、「アニメ」と「アイドル」に関する市場規模が4450億円と推測。「同人誌」、「プラモデル」、「フィギュア」など、「オタク」に関連する14項目を合わせると7164億円にも上ると算定しています。
 アイドルやアニメ好きである「オタク」といえば、一昔前までは“日陰の存在”と見なされがちで、周囲に隠していたという人も多いのではないでしょうか。推し活の文化はなぜ、ここまで広がったのでしょうか。
 日本のポップカルチャーを研究する帝京大文学部の田島悠来講師(37)によると、「推しメン」という言葉は女性アイドルグループ「AKB48」が流行した2000年代後半ごろ、一般に浸透し始めたといいます。応援する行為全般を指す「推し活」の概念については、「ここ最近、2~3年ほど前に生まれた新しい文化ではないか」とみています。
 田島さんはオタクが大衆化した背景に、交流サイト(SNS)が発達し、趣味仲間と簡単につながりやすくなったことを挙げます。匿名性が担保されていることで「オタクであることを、口にしやすい環境になっている」といいます。かつては応援するアイドルに疑似恋愛的な気持ちを抱く人が多かったですが、今は癒やしや憧れなど、さまざまな視点で見る人が増えたとも指摘。「『推し方』が多様化したことで、社会におけるオタクへのイメージも少しずつ変化してきたのではないか」と推測しています。
人気漫画の登場人物をイメージしたカクテルを作り、提供する御燈さん

人気漫画の登場人物をイメージしたカクテルを作り、提供する御燈さん

 推し活の人気にあやかり、こんなニッチなお店も開業しました。札幌・ススキノのカフェバー「月織(つきおり)堂」では、21年から「推しカクテル」(1200円)を提供。ヘヴィメタルバンドのメンバーが推しというバーテンダー御燈(みあかし)さん(34)=活動名=が、客からひいきのメンバーの性格やイメージカラーを聞き取り、世界で1杯だけの創作カクテルに仕上げます。
 取材で訪れた際、常連の会社員女性(35)は人気漫画・ワンピースの登場人物「ゾロ」を注文。御燈さんに、推しへの愛を語ります。「クールに見られがちなんだけど、実はちょっと天然で、どこか抜けているところがあるんです」。御燈さんは数分後、キャラクターの髪と同じ薄緑色のカクテルを創作。金色のピアスを飾りレモンで表し、クールに見られるけれど、どこか抜けているという「ギャップ」を表現するため、上層と下層で味が変わる工夫を凝らしました。
 女性は「最初は少し辛口で、後から感じる優しい甘みがゾロの性格そのもの」と感激。カクテルを作るためのリキュール(お酒)は約60種あり、客から聞き取ったイメージで使い分けているそうです。御燈さんは「同じキャラクターでも、人によってどこにひかれるかはさまざま。頼む人が違えばカクテルの味も変わるところが面白い」と話します。
推し活グッズの販売に力を入れる100円ショップのダイソー札幌22スクエア店

推し活グッズの販売に力を入れる100円ショップのダイソー札幌22スクエア店

 大創産業(広島県)が展開する「ダイソー札幌22スクエア店」(札幌市中央区)では、コンサートなどで掲げる手作りうちわの工作セットが人気です。「ハートつくって」「ウインクして」といった言葉の形に加工された蛍光シールが売れ筋といいます。ほかにも缶バッジの保護ケースやLEDペンライトなど、100種近い関連商品をそろえています。
 同社広報によると、推し活グッズを大きく展開するようになったのは19年ごろから。コロナ禍前まではうちわなどのコンサートで使うグッズの需要が大きかったものの、現在は缶バッジやブロマイドの保護ケースなど、コレクション用グッズがよく売れているそう。札幌で人気アイドルのコンサートが開かれる日が近づくと、札幌22スクエア店では関連商品が飛ぶように売れるため、店長らが事前に、札幌のコンサートの日程を調べて、仕入れ量を増やすなど工夫をしています。
「#推ししか勝たん」と書かれた宣伝紙に目を留める若い女性客

「#推ししか勝たん」と書かれた宣伝紙に目を留める若い女性客

 推し活の人気ぶりを、職員のモチベーション向上や離職防止につなげている職場があります。札幌市西区のアリス保育園。昨年11月、新たな有給休暇「推し休暇」を導入しました。
 制度は、ロックバンド「BUCK―TICK(バクチク)」のファンという遠藤政志園長が考案。通常の有給休暇(年間10日間)に加え、さらに10日間の休暇を有給で付与しています。コンサートへの参加だけでなく、グッズを手作りする、動画を見るなど、「推し」に関する事柄であればどんな内容でも申請できるのだそうです。
 同園の保育士佐山桃子さん(27)は動画配信サイト「YouTube(ユーチューブ)」で活躍するプロゲーマーを応援中。休暇の導入後、さっそく東京で開かれたゲームイベントに参加してきました。佐山さんは「これまでは急な体調不良にも備え、控えめに休みを取っていた。プライベートが充実すると、自然と仕事も頑張れます」と笑顔で語ります。
 休暇は、15人いる職員のうち、毎週1~2人が利用するほどの人気ぶり。ワークライフバランス(仕事と生活の両立)を重視する20~30代の若い世代にとって、大歓迎の制度のようです。
 遠藤園長は「保育士は子どもの命を預かる責任重大な仕事。休暇でリフレッシュした職員が元気に出勤してくれると、職場が明るくなり、子どもたちも自然と笑顔で過ごせるようになります」と手応えを話しています。

(参考:北海道新聞電子版)

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