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なまらあちこち北海道|道民はなぜアイスが好きなの?

グルメ

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北海道はその昔、冬にはガンガンストーブを焚いて、薄着の中で冷たいビールやアイスを食べるという習慣がありました。また来客にもそれが一番のおもてなしとも言われていました。

しかし、今も道民は冬でもアイスを食べる機会が多いようです。

札幌の支出額は全国2位、寒い冬でもなぜ、アイスが好き?

担当記者たちの取材に関するトークもお楽しみください。
   ↓

 「北海道の人は、氷点下の寒い冬の日でも、部屋の中で半袖姿でアイスクリームを食べているってホント?」
 道外にいるとき、知り合いから、よくこんな話を聞かれました。
 たしかに道内の実家の冷凍庫には、冬でも常にアイスがたくさんストックされていました。幼い頃から冬もストーブの前でアイスを食べてきた気がします。北海道民はほかの地域と比べて冬にアイスを多く食べているのでしょうか。
今冬、セコマが販売しているアイスクリーム(中村祐子撮影)

今冬、セコマが販売しているアイスクリーム(中村祐子撮影)

 総務省の家計調査で、2019~21年度の冬季(12~2月)の「アイスクリーム・シャーベット」にかける2人以上の世帯の1カ月あたりの平均支出金額を計算してみました。
 全国の都道府県庁所在地と政令指定都市の52都市のなかで、札幌市は707円で第2位でした。1位のさいたま市は764円、3位金沢市は672円でした。ちなみに最下位は和歌山市の399円で、都市間で随分と差が開いています。
 上位の3都市を比べると、1位のさいたま市と3位の金沢市は、年間を通じてアイスの支出金額が高い都市でした。家計調査で同じ期間の年間の「アイスクリーム・シャーベット」の平均支出金額を調べると、金沢市は1万2146円で1位、さいたま市は1万1723円で2位でした。元々、アイスを多く食べているまちだから、冬も支出金額が多いようです。
 一方、札幌市はちょっと様子が違います。冬場は2位でも、年間順位は16位(1万326円)まで下落してしまいます。冬場の需要は上位なのですが、アイスの「旬」であるはずの夏場の消費はそれほどでもありませんでした。
 もちろん、札幌市でもアイス消費額は夏場の方が冬場より大きいのですが、夏と冬の差は調査した52都市のうち、札幌市がもっとも小さくなっていました。

■冬でもあったか、全国トップの室温19・8度

 道外の知り合いが言うように、北海道の冬場のアイス需要の多さには、室温の高さが関係しているのでしょうか。全国の都道府県の冬場の室温を調べた調査から見てみます。
 2014~18年度に国土交通省が実施した調査の中で、住宅環境を研究する慶応義塾大学理工学部の伊香賀俊治教授の研究チームは、全国約2200軒の一戸建て住宅の室温を冬の2週間、10分おきに調べています。

 結果は明らかでした。北海道の冬の室温は19・8度、調査をした43都道府県のうち2位の新潟市に1・4度の差をつけ、ダントツで高温でした。

 なぜ、北海道の住宅の室温は高いのでしょうか。伊香賀教授は部屋に二重の窓やサッシを導入した断熱住宅の普及率が北海道は81・6%と全国で最も高いことが理由だとみています。

 逆に、室温が最も低いのは香川県の13・1度でした。瀬戸内の暖かい印象がありますが、ちょっと意外です。伊香賀教授はこちらは逆に断熱住宅がほとんど普及しておらず、21・1%にとどまっていることが影響しているとみています。

県庁所在地である高松市の冬場のアイス支出金額は52都市の中で51位でした。「すべての都市に当てはまるわけではありませんが、アイスクリームの支出金額と室温の高さは相関関係にあると言えそうです」と分析していました。

 冬場のアイス需要は北海道だけでなく、最近のトレンドでもあるようです。日本アイスクリーム協会(東京)によると2021年度の「アイスクリーム類及び氷菓販売金額」は5258億円で過去最高でした。01年度の3432億円から20年間で1・5倍に伸長しています。
 年間の販売金額のうち、秋冬に相当する下期(10~3月)が占める割合は、12年度の29・7%から、21年度は39・9%と10年で10ポイント増えています。夏場以外の季節のアイス消費の増加が全体の市場拡大につながっていることが分かります。

 同協会は「乾燥する冬は、喉の渇きを癒やす目的で、アイスを求める人がいるようです。また、防寒性の高い高機能衣類の普及で体感温度が下がらなくなったことも理由にありそうです」とみていました。さらに、協会の担当者は「各メーカーがチョコレートや焼菓子と組み合わせるなど、冬でも販売を維持しやすい商品が多く開発されてきた結果でもあると思います」といいます。

 北海道だけでなく広がっている冬アイス。全国シェアトップのロッテ(東京)で「モナ王」や「爽(そう)」などの開発に携わる担当者に、商品作りの最前線を聞きました。

寒い冬こそアイス、「濃厚系が人気」

 「全国的に『冬アイス』という言葉が浸透するほど、冬にアイスが食べられるようになっています。夏場はリフレッシュを目的にアイスを買う人が多いですが、冬は癒やしやプチぜいたくを楽しみたいという理由から、濃厚な味がよく売れるんですよ」。ロッテのブランド戦略部アイス企画課で人気商品の開発を進めてきた渡辺和哉さんはいいます。

 中でも、冬の1番人気は「雪見だいふく」なのだそうです。コクのあるバニラアイスを餅で包み、商品名もまさに冬を連想させることから、冬アイスにぴったりの商品なのだとか。

 一方、シャリシャリとした食感の「クーリッシュ」や「爽」は夏のイメージが強く、冬は夏ほど売れないそうです。このため、冬向けに濃厚なバニラやチョコ味のアイスや、デザートのような商品を販売して、夏場と商品を変えています。

渡辺さんは「商品の一部は、夏場はラクトアイス(乳固形分3%以上、乳脂肪分は問わない)ですが、冬場はアイスミルク(乳固形分10%以上、乳脂肪分3%以上)になるんです。冬にはとくに乳原料を多く使った商品を開発しています」と教えてくれました。

冬向けの味を販売するロッテの「クーリッシュ」と「爽」

冬向けの味を販売するロッテの「クーリッシュ」と「爽」

 全国的な傾向はよく分かりました。でも、北海道でも同じように濃厚な味のアイスが売れているのでしょうか。

 渡辺さんは「北海道はとくに、冬のアイス需要、高いですよ」といいます。同社の購入データでも、冬場の北海道の1人あたりのアイス購入数量と購入金額は、ともに、首都圏より5%ほど高いそうです。

 アイス大好きな北海道民。ロッテには北海道だけで販売しているアイスの商品があるそうです。
道内だけで販売されているロッテの「北海道とうきびモナカ」など

道内だけで販売されているロッテの「北海道とうきびモナカ」など

 「北海道とうきびモナカ」、「あずきアイス」、「チョコバナナ」。この3品は、北海道内だけで販売されている地域限定商品です。いずれも以前は雪印乳業(現雪印メグミルク)の商品でしたが、同社の2000年の集団食中毒事件の業績悪化などを受け、アイスクリーム部門をロッテに売却したことなどで、現在はロッテの商品として北海道の工場で製造しています。
 渡辺さんは「生産拠点が北海道にあるのが理由ですが、いずれも北海道の原料を使って道内で売り、道民に愛される商品づくりを目指しているので、今も北海道だけでしか販売していません」と話していました。北海道民のアイス好きが北海道限定の商品を維持する原動力になっているようです。

ちょっぴり豪華なデザートに

 コンビニエンスストア「セイコーマート」を運営するセコマは、冬も自社商品だけで約40種類のアイス商品をそろえています。
 渉外部の佐々木威知部長にセコマがアイスを豊富に品ぞろえする理由を聞きました。「コンビニは家からより近い距離にありますから、買い物して帰る車の中などでアイスが溶けてしまう心配が少ないのです。まとめ買いをするスーパーよりも、アイス販売に向いているんですよ」といいます。「道産の生乳や果物にこだわって商品開発をしてきたセコマの強みを、アイス商品にも生かしています」と話しています。
 売れ筋を聞くとやはり「冬場は濃厚な(味の)アイスが売れる」といいます。今年は冬季限定でベルギーチョコレートと宗谷管内豊富町産の生クリームをふんだんに使用した「ベルギーチョコソフト」を販売しています。
セコマが冬限定で販売しているベルギーチョコソフト(中村祐子撮影)

セコマが冬限定で販売しているベルギーチョコソフト(中村祐子撮影)

 さらに、セコマによると、北海道民は年末年始を中心に、少し高いプレミアム系のアイスを選んで買う傾向があるようです。通年で販売しているカップアイスの「北海道アイスクリーム」のシリーズは、セコマのアイスの商品の中でも比較的高価格ですが、年末年始には濃厚な味のバニラがよく売れているそうです。
セコマで冬に人気の北海道アイスクリームバニラ(中村祐子撮影)

セコマで冬に人気の北海道アイスクリームバニラ(中村祐子撮影)

 佐々木さんは「私が子どものころは、棒付きのアイスをおやつ感覚で食べていましたが、今やアイスはケーキのように食後のデザートとして食べられるようになりました。食品の中でも売り上げが伸びており、追い風が吹いてます」と話していました。

冬は厳しい路面店、対策は…?

 ただでさえ多い北海道の冬場のアイス需要はこれからも増えていきそうな様子です。
 その一方、路面店のアイス店はちょっと状況が異なるようです。空知管内長沼町の食品加工会社「長沼あいす」が同町に構える「あいすの家とエトセトラ」。
 昨夏、リニューアルオープンしたことで客数は増えていますが、それでも1日の来店客数は夏場の2500人から、冬は300人にまで減ってしまうといいます。

 同社は1994年の創業後、長沼の直営店以外にも道内外にチェーン店を20店近く出店しました。

 しかし、冬場の経営が厳しく、現在は14店に縮小しています。残った店舗も一部は冬場に営業を休止しています。山口幸太郎社長は「夏が短く冬は長く、寒さが厳しい北海道でアイス店を経営するのはやはり厳しいです。アイス店を経営するなら、売り上げを12カ月間ではなく、8~9カ月間で計算しないとやっていけません」と経営面の難しさを打ち明けます。
 北海道民が冬にアイスを食べるといっても暖かい部屋の中でのこと。外は氷点下です。外にアイスを食べに行こうという道民はさすがに多くないのかもしれません。
 それでも、同社が30年間アイス店として通年で営業を続けてこられたのは、冬場対策として、創業すぐから中華まんじゅうを作って販売するなど、アイス以外の商品の充実を進めてきたからだといいます。ケーキやチーズ、ベーコン、パンと商品ラインアップを拡大しています。
 今冬は、温かい串団子の上に好きなジェラートを載せる「あったか団子ジェラート」や、ジェラートに焼き芋をさした「焼きいもジェラート」など、アイスだけでなく、別のスイーツと組み合わせたメニューの販売を始めました。山口社長は「比較的店内がすく冬は、組み合わせ商品で客単価を上げるチャンスでもあります」として、ピンチをチャンスに変える工夫をしていました。
あいすの家とエトセトラで冬に販売されている「あったか団子ジェラート」

あいすの家とエトセトラで冬に販売されている「あったか団子ジェラート」

 北海道民の冬のアイス需要は、企業や店舗の商品展開が増えることで、これからもまだ増えていく余地がありそうです。
 今冬もコンビニやスーパーのアイスの商品棚には、冬限定の商品がずらりと並んでいます。灯油やガスなど燃料費の高騰によって、室温は控えめに抑えていても、カーディガンやダウンを羽織りながら、多様な冬アイスを頂きたいと思います。
(参考:北海道新聞ニュースレター)
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行列のできるアイスクリーム店

 

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