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釧網本線の話題
筆者が以前から懇意にさせていただいている北海道標茶(しべちゃ)町の佐藤吉彦町長さんから、うれしい便りが届きました。
標茶町は北海道の道東地区、釧路と網走を結ぶ釧網(せんもう)本線の沿線の町。酪農が盛んな土地で、釧路から列車で小一時間、雄大な釧路湿原の中を走り抜けると標茶駅に到着します。
この路線には冬は「SL冬の釧路湿原号」が、夏には「ノロッコ号」という観光列車が走り、JR北海道も観光路線として力を入れているところですが、筆者が注目しているのは釧網本線全線約160kmの沿線各地で、地域の皆様方が釧網本線の利用促進や、観光列車を盛り上げる活動をされていらっしゃることです。
筆者はこの沿線住民の皆様方の活動に以前から注目していまして、何度も記事にさせていただいておりますが、というのもJR北海道沿線ではどちらかというと鉄道に無関心な地域が多く、「自分たちには関係ない。」といった一見冷たいとも思えるような雰囲気のところが各地に見られるからで、そんな北海道にあって、釧網本線沿線の釧路市や標茶町、弟子屈町、小清水町、網走市などは、地域が一体となって鉄道を守る運動を展開しているのです。
さて、では、その標茶町の佐藤町長さんからどんな便りが届いたかというと、9月27~29日の3日間だけ運転された「夕陽ノロッコ号」に町長さん自らご乗車されてYouTube動画「標茶町長と行く! 夕陽ノロッコ号!」を作ったというお知らせです。
(ノロッコ号のダイヤ)
動画の中で町長さんは、「去年もこの夕陽ノロッコ号を見送りに来てたんですよ。でも乗れなかった。一度乗りたいなと思っていたんです。」と発言されていらっしゃいますが、釧路市は夕陽の町としての観光戦略を展開していますので、夕陽が有名な釧路湿原をのんびりと走る観光列車は、なかなか予約が取れないという状況が続いていたのです。
ではここで、ノロッコ号の動画を掲載しておきます。
(北海道新聞ニュースより)
ところが、今年の「冬のSL釧路湿原号」もそうでしたが、コロナ禍でインバウンドや本州方面からの観光客がいなくなった今、地元の皆さんが「やっと乗ることができる時」がやってきているのです。
実際に乗ってみると「楽しいな。」「おもしろいな。」というのはもちろんですが、地元の皆さんが地元のすばらしさを再発見することができるというのが、地元民にとって観光列車の大きな効能だと筆者は考えています。
今まで手を振って見送るだけだった地元の人たちにとって、今回のコロナ禍は、地元の鉄道に乗って地元の良さを再発見できる大きなチャンスになったのではないでしょうか。
(標茶町紹介の画像。町のHPより)
このコロナ問題が収束、あるいは終息すれば、きっと観光客は戻ってきます。その日のために鳥塚氏は続けます。
戻ってきた観光客から「良いところですね。」と言われた時に、「そうでしょ。ここは良いところなんですよ。」と言えるような準備が、釧網本線沿線にはできているのではないかと感じています。
なぜなら、観光客から「良いところですね。」と言われても、地元の人たちは「こんなところはダメだよ。」と言うところが多いのが全国的な現状であり、それではせっかく来た観光客にリピーターになっていただくチャンスをつぶしてしまいかねないからです。
コロナ禍で、どこにも出られない日々が続きましたが、その間に自分たちの地域のすばらしさを再発見できたかどうかが今後の観光発展のカギになっていくでしょう。
今、JR北海道は会社再建に向けて大きな努力をしている最中ですが、沿線自治体や住民と一体となった取り組みがきちんとできている釧網本線や花咲線地区が良い前例となって、鉄道がきちんと存続されていくことを願ってやみません。
早く元のように、戻って欲しいものですね。
(参考:鳥塚亮の乗りたくなる鉄道、行きたくなる田舎、標茶町HP、JR北海道HP)
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