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二十世紀枠で初のセンバツが決まった別海高校野球部。選手たちの頑張りももちろんだが、それを陰で支え続けているマネージャーの力も忘れてはいけない。
まとめ役は中岡さん
「やることが多くてとても大変。でも勝つとうれしくて、そのたびに、頑張ろうと思える」
中岡さんは3人の中で唯一の新3年生。後輩への指導も丁寧な「まとめ役」だ。
選手に練習メニューや島影隆啓(たかひろ)監督の指示を伝える。試合ではベンチに入って記録員を務める。監督からは「真緒がいなければ、このチームは回らない」と大きな信頼を得ている。
二つ上の姉、彩葉(いろは)さんも野球部のマネジャーだった。ただ、中岡さんは当初バスケットボール部に入るつもりだった。
もともと体を動かすことが好きで、小学生の時はバレーボールと野球、中学では卓球の選手だった。高校入学後、野球部の体験入部に行き、島影監督の言葉に気持ちが動いた。
「小さいマチだから無理だと言われているけど、僕たちは毎日、甲子園を目指して頑張っている」
中岡さんは「スポーツの全国大会の中でも、甲子園って出るのが本当に難しい。そこを本気で目指すと聞いて、野球部に入りたいと思った」と振り返る。
自ら考えて動けるのが中岡さん。選手が島影監督に叱られるときは、一緒に話を聞く。「私も聞けば、監督の考えや選手の課題が理解できる。部員全員が共有した方が、チームにまとまりが出るはず」
甲子園でもベンチに入る予定だ。「常に笑顔でいたい。雰囲気を和ませて、選手にはいつも通りのプレーをしてほしい」と期待する。
勘がいい藤倉さん
頼もしい先輩の背中を追うのは、2人の新2年生。藤倉さんは、いつも選手の体調を気にかける。
表情や声、しぐさを見て、体調が悪そうな選手には声をかける。「もしかしてきょう、ちょっとやばい?」。だいたい当たっているという。「とにかく無理をさせたくない。頑張ってほしいけど、けがが怖いから」。観察眼に優れ、島影監督や選手からは「いつも冷静」と一目置かれる。
単独チームでは試合ができず、普段の練習では体育館の壁にサーブやスパイクを打ち続けた。寂しくなり、何度も「辞めたい」と思ったが、3年間やり遂げた。「もう一人の子がいつも頑張れと声をかけてくれて、近くで支えてくれた。高校では自分が支える側に回って、感謝を伝えたかった」
高校入学後、どの部活動のマネジャーになるか迷った末、野球部を選んだ。決め手は選手の全力プレー。守備練習で、打球が捕れるまで食らいつく姿が印象に残った。「まさか甲子園に行けるなんて。今でも驚いている。選手には声をかけて、緊張をほぐせたらいいな」と語る。
データ好きの坂野下さん
坂野下さんは、島影監督が2016年に就任して以来、初の男子マネジャーだ。
入部当初、監督からは「選手でだめなら、マネジャーになればいい」とプレーすることを勧められたが、「体力に自信がない」と辞退した。小学校時代は野球をしていたが、中学に野球部がなく、野球からしばらく離れていたことも理由だった。
それでも「とにかく野球が好き」だという。幼い頃からプロ野球中継を見続け、選手の打率や投手成績などのデータはこまめにチェックする。野球部では現在、準備や片づけが主な仕事だが、いずれは分析力を生かした役割を担うことも目指している。
中学までは口数が少なく、野球部のマネジャーになった時も不安だった。だが、先輩や同級生が次々と声をかけてくれた。その優しさに「このままじゃいけない」と感じた。自分から話しかけるのは今も得意ではないが、繰り返すことで抵抗感が徐々に薄れ、「自分が変わってきた」と実感している。
会話を重ね、選手のことを知れば知るほど、その活躍がうれしい。興奮したのは、昨秋の全道大会の初戦で、不調だった中道航太郎主将が放った逆転サヨナラ2ラン。「チャンスに強い。大きい舞台でこそ、中道さんは輝く」と、甲子園での活躍を期待する。
(参考:北海道新聞Sノート)
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