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なまらあちこち北海道|ハイスクール漫才で北海道のコンビが日本一に・札幌在住の二人

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北海道代表で出演した札幌のコンビが、ハイスクール・マンザイ(H1-甲子園)796組の中で優勝しました。どんなコンビなのでしょうか。

高校生ナンバーワン漫才コンビ「偽ビートルズ」 関西勢を抑えて北海道から日本一になれたワケ

 北海道を拠点とするコンビが頂点に立つのは初めてのことでした。劇場で生の漫才を見たり、自ら披露したりする機会は大阪や東京に比べると格段に少ない中、北海道勢が、大会史上最多の応募796組の頂点に立てた理由は―。快挙の背景に迫りました。
ハイスクールマンザイで頂点に立った「偽ビートルズ」の柿沢琉寿さん(左)と佐藤里駈哉さん(石川崇子撮影)

ハイスクールマンザイで頂点に立った「偽ビートルズ」の
柿沢琉寿さん(左)と佐藤里駈哉さん

 

 ハイスクールマンザイ(実行委主催)は前身の大会が2003年に始まりました。昨年12月10日に大阪市で開かれた決勝では、全国6地区の予選を勝ち抜いた7組が、相まみえました。審査員は現役の漫才師で、大御所のオール阪神・巨人、「オカン」のネタで大ブレイクしたミルクボーイなど、そうそうたるメンバーです。
ネタを披露する偽ビートルズ(吉本興業提供)

ネタを披露する偽ビートルズ

 抽選により、北海道・東北地区代表の偽ビートルズは5番目にネタを披露しました。与えられた時間は3分。2人のネタは、いざという時に備え、道端で倒れた人を救助する場面を想定して動きを確認するというもの。佐藤さんが柿沢さんに次々と役割を指示する。
 「あなたは救急車を呼んでください」「自動体外式除細動器(AED)を探して」。佐藤さんの指示は次第にエスカレート。「大型犬を(やって)」、「強豪校のコーチを(やって)」などといった風変わりな内容になってしまいました。
 それでも柿沢さんはテンポ良く応じます。流れるようなテンポでネタが進むにつれ、会場の笑い声も次第に増していきました。審査では、近畿地区を勝ち抜いた女子高生コンビとの激しい競り合いの末、偽ビートルズの優勝が決まりました。
優勝旗を受け取る偽ビートルズの柿沢さんと佐藤さん(吉本興業提供)

優勝旗を受け取る偽ビートルズの柿沢さんと佐藤さん

 2人によると、ホールには約700人の観客が詰めかけていました。客席には、優勝を争った女子高生コンビのファンとみられる人が、手作りのうちわを持って応援する姿もありました。「完全アウェー」の状況でしたが、見事頂点を勝ち取りました。オール阪神・巨人のオール巨人さんからは「しゃべりは一番できてる」と評価されました。
 佐藤さんは「裏方のスタッフさんが『君たちがネタをやっている時、(舞台の)袖にいた芸人さんたちが爆笑してたよ』と言ってくれた。芸人さんに刺さったこともよかった」と声を弾ませました。
決勝の出場者たちと記念撮影する偽ビートルズ(同)

決勝の出場者たちと記念撮影する偽ビートルズ

 2人は札幌・栄町中の同級生。1年生の時に同じクラスになりました。
 授業中、柿沢さんが先生の発言を漫画のキャラクターに例えて突っ込むと、1人だけ肩を揺らして笑う生徒がいました。後に相方となる佐藤さんです。
 2年になるとクラスは離れましたが、学校行事で生徒が自由に出し物をができる機会があり、当時からお笑い好きだった柿沢さんが佐藤さんを誘い、初めて友人の前で漫才を披露しました。
 2022年の春、高校は別々の学校に進み、佐藤さんは吹奏楽部、柿沢さんは野球部に入部しました。それぞれ部活動に励み、高校生活を充実させるつもりでした。でも、進学に伴う環境の変化への戸惑いや人間関係に悩み、部活動への熱意を失ってしまいました。
 そんなとき、佐藤さんは柿沢さんとコンビを組んだ中学生時代の記憶を思い起こし、「本気で(漫才を)やってみないか」と誘いました。佐藤さんは「お笑いに誘った責任をとってもらうつもりでした」と笑いながら振り返ります。こうして「偽ビートルズ」の挑戦が始まりました。
 コンビ名はどうやって付けたのでしょう。2人のうちどちらか本人か家族がビートルズファンなのでしょうか? 柿沢さんが「面白そうな名前を大喜利のように考えた」といいます。本家のビートルズの楽曲は全く知らないそうです。
ネタを披露する偽ビートルズの2人(石川崇子撮影)

ネタを披露する偽ビートルズの2人

 2人はともに部活動をやめ、22年のハイスクールマンザイに初めてエントリーしました。コロナ禍で行われた大会で、予選は事前に収録した動画により審査されました。人前で漫才をしたのは仙台で行われた準決勝が初めてでした。何とか勝ち上がり大阪で行われた決勝に進みました。
 でも、緊張で思うような結果を出せませんでした。「負けて悔しくて、そこで火が付いた」(柿沢さん)。雪辱を期し、漫才漬けの生活が始まりました。
 2人は毎週新ネタを作って、芸の引き出しを増やしました。札幌の大学生などのアマチュアコンビに声を掛けて合同でライブを開くなど、可能な限り人前に立つ機会を作りました。苦労は尽きませんでした。観客は自分たちで集めなければならず、観客が一桁だったこともありました。
 それでも地道に努力を続け、2023年にはプロアマ問わず多くのコンビが出場する漫才コンテスト「M-1グランプリ」の予選では道内勢で唯一、3回戦まで進みました。自発的に自分たちを鍛える環境に身を置いたことが、ハイスクールマンザイでの活躍につながったと言えるのではないでしょうか。
大会を振り返る偽ビートルズの2人(石川崇子撮影)

大会を振り返る偽ビートルズの2人

 高校野球において、北海道勢は「雪国のハンディがある」と以前から言われてきました。雪上での練習を繰り返し、弱点を克服した駒大苫小牧高が2004年の甲子園で優勝。深紅の優勝旗が北海道に渡りました。
 お笑いをやる上でも、北海道にいることはハンディになるのでしょうか。2人に聞くと、そろって答えました。「あると思います」
 コンビを知ってもらうために全国的な規模の大会に出場しようとすると交通費がかかるし、札幌では東京や関西ほど、出演できるお笑いライブが頻繁に開かれているわけでもない―。東京や関西で活動するのに比べて苦労は多いようですが、2人はこう続けます。
 「ダークホースとして、存在を隠しておける」(柿沢さん)、「(お笑いファンや他の芸人たちに存在が)ばれてない分、自由にできる。多くの中に埋もれず、異質なものとして見てもらえることは武器になるかもしれない」(佐藤さん)
 自分たちの置かれた環境を言い訳にせず、地道に努力を重ねてきた2人だからこそ、「隠し球」として会場を沸かせることができたのかもしれません。
優勝の目録と並び笑顔を見せる偽ビートルズの2人(吉本興業提供)

優勝の目録と並び笑顔を見せる偽ビートルズの2人

 ハイスクールマンザイの優勝賞金は50万円。吉本の養成所「吉本総合芸能学院(NSC)」の入学金と授業料が免除される権利も得ました。「売れる売れないはともかく、芸人になりたい」という柿沢さんに対し、佐藤さんは「まだ何をするかじっくり考えたい」と話します。
 今後はコンビで、大会連覇や単独ライブの開催を目指しているそうです。北海道の若きお笑いコンビの今後の活躍が楽しみです。
(参考:北海道新聞Dセレクト)

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