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クリーンエネルギーが叫ばれる今日、原子力発電に頼ることなく、家庭に再生エネルギーの電力を届けることは、多くの国民が望んでいることです。そんな中で北海道でも洋上発電ができる地域が新たに認められたことは大きな意味があります。
洋上風力実現へ一歩前進 試算385万キロワット、送電網整備が鍵
道内に5区域あった洋上風力発電の「準備区域」すべてが「有望区域」となった12日、事業実現を願う関係者から「一歩前進」と歓迎する声が上がりました。今後は最終段階の「促進区域」への格上げをにらみ、地域事情を踏まえた具体的検討に入ります。
洋上風力は巨費を投じる大事業で、実際に運転が始まるのは早くても2030年ごろ。経済産業省の試算では5区域で最大約385万キロワットの導入が可能となるだけに、首都圏に電気を送る海底送電線の整備との連動も鍵を握っています。
■景観への影響懸念も
「北海道の風力発電のポテンシャル(潜在的可能性)は全国一です。今回の選定が契機となり、各区域で地元合意が進めばと願っています」。風力発電推進市町村全国協議会の会長を務める片岡春雄・後志管内寿都町長はこう力を込めました。
同管内島牧村の藤沢克村長も「(事業化できれば)地元で雇用が生まれ、外から人が来るだろう」と、少子高齢化が進む地域の経済活性化に期待しています。
経産省の試算では、5区域の出力規模は最大で石狩市沖114万キロワット、岩宇・南後志地区沖70・5万キロワット、島牧沖55・5万キロワット、檜山沖114万キロワット、松前沖31・5万キロワットとされています。
石狩市の担当者は「促進区域の指定に一歩近づいた」と喜び、石狩市沖で経産省試算を上回る総出力178万5千キロワットの事業を計画する関西電力は「環境保全に十分配慮し、事業検討を進めたい」(広報室)とコメントしていました。
「域内に産卵場所」
一方、漁業や景観への影響への懸念も、なおくすぶっています。道内の沖合底引き網漁船の船主でつくる北海道機船漁業協同組合連合会(札幌)の原口聖二常務理事は「有望区域内にはスケソウダラの重要な産卵場が含まれている。道内の日本海側の漁獲量に影響しかねない」と指摘しています。
今後は各区域で利害関係者による法定協議会が立ち上がり、風向きや風の強さなど自然条件の詳細や、漁業への影響について議論することになっています。発電事業で得られた利益の一部を地域に還元するかも焦点となりそうです。
事業化までに時間
順調に促進区域になったとしても、実際の事業化までには、なお時間がかかります。先行する秋田県の2区域は19年7月に有望区域、20年7月に促進区域となり、21年12月に事業者を選定しました。
その後の設計や入札、工期を含めると、事業者が決まっても運転開始までは7~9年かかる見通しです。発電施設の建設や保守に使う港湾の整備も検討課題となっています。道内関係者は「今回の5区域での運転開始は、どんなに早くても30年ごろというのが妥当」と見立てています。
洋上風力は陸上より風が強く、効率よく発電でき、政府が再生可能エネルギー拡大の切り札と位置付けています。道内の導入目標(40年時点)は955万~1465万キロワットで、5区域で洋上風力が事業化できれば、再生エネルギーの利用拡大にとって追い風となるのは確実です。
ただ、発電した大量の電気を最大限活用するには、道外に向けた海底送電線の敷設が前提となります。政府は北海道―東北間の日本海側と太平洋側に計600万キロワットの海底送電線を新設する計画で、日本海側を通る200万キロワット分は30年度までに完工する見込みですが、残る太平洋側の工期は定まっていません。
片岡町長は「首都圏への送電が実現しないと、宝の持ち腐れになる」と案じ、大規模な洋上風力事業の安定に必要な送電線の整備加速を求めています。
漁業者との調整実る 道や国 送電線容量調査も終了
道内の5区域すべてが国の有望区域に「格上げ」されたのは、道や国が半年余り水面下で調整していた成果が実ったためです。課題だった漁業者との調整などが一気に進んだことで、国内でも特に有望とされる道内の洋上風力が事業化に向けてようやく動き始めたことになります。
「本来は(区域の見直しがあった)昨年9月に選ばれるべきものだった」。ある道内選出国会議員は有望区域への選出を喜びつつ、こう振り返っています。道外の準備区域は昇格まで1年程度で、2020年7月~21年9月に準備区域となった道内は遅れが目立っていました。
関係者によると、有望区域に向けた動きが加速したのは昨年11月。複数の国会議員が道や国に働きかけ、土屋俊亮副知事ら道幹部と、資源エネルギー庁・水産庁の担当者が参加する協議の場を設置しました。
協議は月1回開かれ、課題などを共有。国の区域見直しは例年夏ごろですが「条件が整い次第格上げする」との確認も交わしていたといいます。
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