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なまらあちこち北海道|旧国鉄車両を修復へ・北見

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かつて颯爽と線路を走っていた車両は、公園で展示されていながら、風雪にさらされ、痛みが激しくなっているものが多いと聞きます。
そんな展示車両の修復を行うべく、CFで資金を集めた人たちがいました。

旧国鉄車両修復900万円をCFで 保存会が高い壁に挑むわけ

 北見市中心部の一角に、昭和の時代に北海道内を走っていた旧国鉄車両が眠る場所があります。その名も「オホーツク鉄道車両展示場」(市常盤町)。全国で唯一保存されている郵便車など資料価値の高い往年の車両7両がほぼいつでも見られますが、長年の青空展示により塗装の剥がれや破損といった傷みがあちこち目立ちます。そこで、展示場を維持・管理する市内のNPO法人は今夏、車両修復の「総仕上げの段階」として支援を広く募るクラウドファンディング(CF)を行っています。当面の目標額は900万円。高い壁に挑むわけや車両修復にかける思いに迫りました。(北見報道部 山田健裕)

オホーツク鉄道車両展示場の外観(星野雄飛撮影)

 ピンク色の外観が特徴で、かつて世界の7割の生産量を誇った北見産ハッカの歴史を伝える北見ハッカ記念館(北見市南仲町)。市道を挟んだ斜め向かいに目線を移すと、ゴツゴツとした形状の鉄道車両が鎮座しています。
急行列車などとして使われていた気動車「キハ27」、雪かき用貨車「キ100」「キ700」、ロータリー除雪車「DD14」、郵便車「スユ15」、車掌車「ヨ3500」、車掌が乗り込む場所と貨物を載せられる場所がある緩急車「ワフ29500」です。展示場を維持・管理するNPO法人「オホーツク鉄道歴史保存会」によると、スユ15が保存されているのは全国でもこの展示場だけといいます。
市中心部にありながら周辺には住宅や木々も多く、通りかかったり見学に訪れたりした人たちは「こんなところに鉄道車両があったなんて」と口をそろえます。
 展示されているのはいずれも、北見市に住んでいた男性(故人)が1987年の国鉄民営化前後に、国鉄やJR北海道から譲り受けた車両です。現在は保存会が維持・管理しています。
 6月20日に展示場を訪ねると、北海道旅行中という神奈川県横須賀市の若い男性4人グループに出会いました。聞けば、皆さん関東地方の鉄道会社の入社同期だそうで、そろって「鉄ちゃん」(鉄道ファン)とのこと。
橋本侑城さん(24)は「ここに車両があるとは知らず本当にたまたま立ち寄ったのですが、博物館でもないのに7両まるごと保存されているところはなかなかありません。普通は輪切りされたりした状態で保存・展示されているケースが多いので、とても貴重です。これまでに自分が見たことのない車両も多く、まさに生きた歴史ですね」と興奮気味に話していました。

 保存会の長南進一理事長(69)は、展示場の意義についてこう語ります。
 「北見やオホーツクが鉄道とともに発展してきた歴史を後世に伝えるだけでなく、観光資源としても価値の高い存在です。北見観光のシンボル的な存在である北見ハッカ記念館の目と鼻の先にあることからも、相乗効果が狙えるのではないでしょうか」
 北見市観光協会が発行する最新の観光パンフレットに、展示場の記載はありません。それでも保存会によると、オホーツク管内を中心に活動する写真サークルが6月17日から8月20日まで展示場内で開いた鉄道に関する写真展の芳名帳によると、8月上旬までに北海道はもちろん首都圏や関西、福岡県などから190人以上が来場しました。「他の道内主要都市に比べてこれといった強力な観光素材が少ない」とされる北見にとって、展示場の観光ポテンシャルは高そうです。
「展示場は歴史的・観光的な価値が高い」と語るNPO法人「オホーツク鉄道歴史保存会」の長南進一理事長=6月20日(星野雄飛撮影)

「展示場は歴史的・観光的な価値が高い」と語るNPO法人「オホーツク鉄道歴史保存会」
の長南進一理事長=6月20日(星野雄飛撮影)

 歴史的・観光的な価値が見込まれる7両ですが、老朽化が進んでいます。屋外での展示期間は長いもので30年以上に及び、さびや塗装の剥がれが顕著になっていました。中には展示している間に、車内装備が盗まれたり座席が傷つけられたりしたこともあったそうです。
 車両の修復作業は2015年に着手しました。まずは150万円ほどをかけ、「キ100」「キ700」の2両の塗装から始めました。型式などを車体に記した独特の「鉄道文字」も、関係者が1字ずつ丁寧に書いています。
1文字ずつ丁寧に記される鉄道文字=6月15日(星野雄飛撮影)

1文字ずつ丁寧に記される鉄道文字=6月15日(星野雄飛撮影)

 さらに昨夏からは、いずれも1954年以降に製造された「スユ15」、「ヨ3500」、「ワフ29500」の3両の修復プロジェクトが行われました。多額の費用がかかるため、初の試みとしてCF形式で修復費を募ったところ、当初目標額の200万円を大きく上回る362万1千円が全国から寄せられました。保存会メンバーや専門業者らによる作業を経て、3両は今年6月にピカピカになって「再デビュー」。訪れた人たちの驚きと笑顔を誘っていました。
 道内外で半世紀近くにわたり郵便配達員を務めた北見市内の無職本間敏さん(70)は、3両がリニューアルされたことを新聞記事で知り、展示場を訪れました。本間さんはきれいに塗り直されたスユ15の郵便マーク(〒)をじっくり見つめながら言います。「現役の配達員時代に郵便車を直接、見たり触れたりはしなかったけど、やっぱり懐かしい思いになりますよ。こういう風な設備、内装だったんだなと。今、こうやって見ることができて良かったです」
修復を終え公開された旧国鉄の郵便車。鉄道ファンらが笑顔で楽しさ、喜びを分かち合った=6月17日(茂忠信撮影)

修復を終え公開された旧国鉄の郵便車。鉄道ファンらが笑顔で楽しさ、
喜びを分かち合った=6月17日(茂忠信撮影)

 今年は7両の修復の「総仕上げ」の年です。「キハ27」と、「DD14」の2両の修復に取りかかります。特にキハ27は寒冷地仕様だったことから、断熱材としてのアスベスト(石綿)が車体のあちこちに吹き付けられており、除去作業に600万円ほどかかるそうです。車体の塗り直しや傷んだ部分の板金作業なども必要で、保存会によると、修復費は2両で計900万円に上ります。

(参考:北海道新聞デジタル版)

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