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なまらあちこち北海道|酔いたい客迎え半世紀・札幌狸小路のジャズ喫茶「BOSSA」

グルメ

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ジャズ喫茶、名前を聞くだけでも昭和の雰囲気が目に浮かぶようです。札幌は狸小路で半世紀の続いているジャズ喫茶・BOSSA。開業して50年が経ちました。

ジャズ喫茶「BOSSA」 心ゆさぶる音に酔いたい客迎え半世紀<サッポロの老舗>

 札幌市中央区の狸小路周辺には、かつてジャズ喫茶が何軒も並び、音楽好きの若者が昼夜を問わず出入りしていた。このうち「BOSSA(ボッサ)」(南3西4)は1971年10月に開店し半世紀を超えた。
 静かに音楽を聴くという店が多い中、おしゃべりも比較的自由で、夜にはウイスキーなど酒を飲みながら楽しむ雰囲気は今も健在だ。ジャズ喫茶の数は減ったものの、心を揺さぶる音に酔いたい客がきょうもこの店の扉を開けている。
店のドアの前に立つ高橋久さん(左)と従業員の秋田祐二さん(鈴木雅人撮影)

店のドアの前に立つ高橋久さん(左)と従業員の秋田祐二さん

 ジャズ喫茶 客にジャズのレコードを聴かせることが主な目的である喫茶店。マイク・モラスキー著「ジャズ喫茶論」によると
①最低でも数百枚のレコードがある
②高音質・高価なオーディオシステムが設置
③店主や店員がジャズやレコードに詳しい
④BGMに間違えられない程度の音量でジャズのレコードを絶えずかけている
⑤昼間も営業し、コーヒー1杯で約2時間座れる
⑥看板や入り口に「ジャズ」と明記
などというのが最低条件という。
 BOSSAは、札幌駅からススキノへと続く駅前通に面した雑居ビルにある。ピアノやドラムなどを従え、サックスやトランペットのソロが店内に響き渡る。トレードマークの薄茶色のサングラスをかけたヒゲのマスター高橋久さん(74)が、コーヒーをいれると、香りが周りに漂った。
 「土日は今でも満員になり、入れなくなることもある。最近は台湾や韓国の個人旅行客も来るね」と高橋さん。窓の近くは明るいが、レコードやオーディオ装置がある店の奥は昼でもほの暗い。2人連れの客が自由に会話を交わし、1人で来た客は曲のリクエストに立ち上がった。
店内は広く、計60席を確保している

店内は広く、計60席を確保している

 壁2面分にレコード1万枚とCD1万5千枚が並ぶ。棚はビルの丈夫な柱近くに取り付けている。「壁側にわずかに傾けているので重心が分散され、重さには十分耐えられる」。天井付近に置かれたレコードは、三脚に上って取り出す。
壁の棚にびっしりと並ぶレコード

壁の棚にびっしりと並ぶレコード

 1970年代を中心に札幌には「JAMAICA」「B♭」「ニカ」「act:」「ビート」など多くのジャズ喫茶があった。特に狸小路とススキノの間に当たる南3条かいわいには、何軒も集中していた。店ではプロのミュージシャンから会社員、学生らがコーヒー1杯で粘っていた。
 現在はコーヒーが昼490円、夜590円、ビール880円、チャージ無し。パスタなどのランチセットは880円。昔のジャズ喫茶は、たばこの煙で充満していた。BOSSAでは、喫煙はできるが、煙はかなり減った。
ビルの入り口に置かれたあんどん

ビルの入り口に置かれたあんどん

 ビルの1階入り口にはマイルス・デイビスのレコードジャケットを模したあんどんがある。「2時間以内1850円でカクテル飲み放題」と書かれている。飲み放題は30年ほど前から。「当時は周囲からいろいろ言われた。でも、やっていなければ今ごろつぶれていた。うちは気取らない店だし、コーヒーだけでなく、食事もできるし、夜は酒を飲んでリラックスして音を楽しんでほしい」
特注のツインターンテーブルやアンプ類などのオーディオ装置

特注のツインターンテーブルやアンプ類などのオーディオ装置

 ドアの右側奥にはレコード棚のほか、オーディオ機器がある。プリアンプはマランツ製、パワーアンプはマークレビンソン製。
スピーカーはJBLの最高水準の名器「K2 M9500」

スピーカーはJBLの最高水準の名器「K2 M9500」

 窓がある左側の広いスペースにある壇上に、米国の音響メーカーJBLの最高級機「K2 M9500」が60席ある客席へ音を届けている。上下に組み込まれた低音域のウーファーと、間に挟まれた高音域のドライバーホーンによる3分割構造で、全体で約400万円の超高級品だ。
 同店は昔からJBLの「パラゴン」と呼ばれる大型スピーカーで名をはせた。「JBLの『パラゴン』と次に『エベレスト』を使ってきたが、この二つは箱で鳴らすタイプ。今のはスタジオモニターとして優秀で、例えばピアノトリオならピアノ、ドラム、ベースの各楽器の音が混ざらず、くっきりと分かれて出てくる。臨場感が違う、今までで一番の音だ」
ミュージシャンのサインがいっぱい。左側数字の下にオーネット・コールマンの文字

ミュージシャンのサインがいっぱい。左側数字の下にオーネット・コールマンの文字

オーネット・コールマンのサイン

オーネット・コールマンのサイン

 店内の壁には国内外のミュージシャンたちのサインが所狭しと書かれている。ビル・エバンス、ソニー・スティット、デクスター・ゴードン、ホレス・シルバー、ジョー・ヘンダーソン、ジャズから少し離れるが、スティングなどの名前もある。

ジャズとの出会い

 札幌・定山渓で生まれる。父親は道内有数の木材会社を経営していた。ジャズを聴きはじめたのは高校時代。「仲間とレコードを聴いて勉強から遠ざかった」と振り返る。

 京都への修学旅行で友人とジャズ喫茶「ビッグボーイ」に入った。「煙もうもうなのでレコードジャケットが見えなかったが、札幌に帰って調べてホレス・シルバーの『ソング・フォー・マイ・ファーザー』だと分かった」。シルバーも初期メンバーだったアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズなどの乗りが良いファンキー・ジャズにはまった。
 23歳で独立し「BOSSA」を始めた。店は現在、立地している南3西4の別の場だった。ラーメン店の2階だった。最初のスピーカーは兄の手作りだった。コーヒーは100円。「レコードは200枚、25席の店だった」。客のリクエストが続き、自分で選ぶ必要が無かったほどだった。
 店名は「ボサノバ」から取った。「そのころのジャズ喫茶は私語禁止というのが多かった。でも気楽に話せる雰囲気にしたかった」。70~80年代に流行するクロスオーバー、フュージョンのレコードもどんどんかけた。
 77年に同住所の五番街ビル3階へ。83年に4階へ、93年に再び3階、そして06年に現在の場所へ。
BOSSAのマッチ。現在は在庫切れだ

BOSSAのマッチ。現在は在庫切れだ

 年に2回、米国シカゴに行き、珍しいレコードを買ってきた。日本では手に入らない、一流演奏家の珍しい音源を求める好奇心が背中を押した。こうした積極性や知識を買われ、レコード店「タワーレコード」札幌店の仕事にも一時関わった。
コーヒーを落とす高橋久さん。札幌医大前の喫茶店でもアルバイトを掛け持ちし修業した

コーヒーを落とす高橋久さん。札幌医大前の喫茶店でもアルバイトを掛け持ちし修業した

 「店をやっていて良かったのはいろいろな人に出会えたこと」。
 「家族の支えもあってやってこられた」。11年に大腸がんで亡くなった妻節子さん(享年63歳)には「苦労を掛けた。余命わずかと分かり、できるだけのことをしてあげたけど…」。
 秋田さんと経営のパートナーの山形法明さん(70)の3人と、半減したものの女性アルバイト4人で切り盛りする。趣味の多様化、サブスクリプション(定額制)の音楽配信サービスなど、店にとり逆風が吹く。「ジャズ喫茶として生き残るのは誰か。心躍らせた、これはというミュージシャンも確かに少なくなったけど、自分はまだやるよ」
 BOSSAは札幌市中央区南3西4、シルバービル2階。営業は午前11時~午前1時。元日のみ休み。電話011・271・5410。
(参考:北海道新聞ニュースエディター)

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