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なまらあちこち北海道|稲作農家をドローンが救う?・音江町

北海道

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現在はどの業界においても人出不足が深刻です。中でも農家は後継者不足もあり、農業そのものが立ちいかなくなる恐れがあります。
そんな農家を助けるドローンの出現はまさに救世主となりそうです。

人手不足の稲作農家、ドローンが救う?

水田に種もみをまく農業用ドローン。自動航行システムにより飛行する=5月13日午前10時、深川市音江町

水田に種もみをまく農業用ドローン。自動航行システムにより飛行する

 道内の米どころで、農業用の小型無人機ドローンを使って空から水田へ種もみをまく直播(ちょくはん)栽培が注目を集めています。苗を育てて田植え機で植える従来の稲作に比べ、作業量を大幅に減らせるのが特徴で、直播用の新品種の開発や栽培技術の進歩により、収穫量や品質が向上。実際に取り組む農家も手応えを感じています。
ドローンの散布装置から舞い落ちる種もみ=5月13日、深川市

ドローンの散布装置から舞い落ちる種もみ

 5月13日、本格的な田植えシーズンの始まった深川市の水田地帯。同市音江町の原聡さん(45)の水田からは、田植え機のエンジン音とは違った音が聞こえてきました。
 「ブーン」というプロペラの回転音です。残雪の山並みを背に、水田の上を農業用ドローンが正確に飛んでいます。機体下部の散布装置から種もみが舞い落ち、水田にパラパラと小雨が降るような水紋が広がりました。ドローンのコントローラーを握り、様子を見つめる原さん。その指はコントローラーのスティックを動かしていません。ドローンは事前に設定したルートを自動航行しているのです。
ドローンのタンクに入った「ななつぼし」の種もみ=5月13日、深川市

ドローンのタンクに入った「ななつぼし」の種もみ

 原さんのドローンは、衛星利用測位システム(GPS)からの位置情報の精度を上げる「RTK(リアルタイムキネマティック)システム」を導入。位置情報の誤差は2~3センチとわずかです。
 あぜ道から離陸したドローンは設定通り高度約2・3メートルを保ち、種もみを水田へ均一にまきます。1回7分ほどの飛行でまける種もみは、10キロほど。種もみをいれたタンクが空になるとドローンは離陸した場所へ戻ります。原さんがタンクに種もみを補充すると飛び上がり、タンクが空になった場所まで正確に移動し、再びまき始めました。
折りたたんだドローンを持つ原さん。1人で持ち運びができる大きさと重さだ=5月13日、深川市

折りたたんだドローンを持つ原さん。1人で持ち運びができる大きさと重さだ

 約70アールの水田におよそ70キロの「ななつぼし」の種もみをまいた原さん。1時間ほどで作業を終えました。田植え機で水田に苗を植えると倍以上の時間がかかり、苗の運搬などで5~6人ほどの人手は必要ですが、ドローンだと見張りをする補助者を含めた2人だけで作業ができました。ビニールハウスで苗を育てる必要もありません。
ドローンでまいた種もみ。水田の土壌表面へ均一に分散していた=5月13日、深川市

ドローンでまいた種もみ。水田の土壌表面へ均一に分散していた

 原さんは昨年末に農業用ドローンを購入し、今年から農作業に活用しています。今年、水田17ヘクタールのうち、約3・5ヘクタールでドローンによる直播を行いました。以前はラジコンボートを使っていた水田の除草剤散布も、今年はドローンを活用。折りたためば縦横高さ約60センチ、重さ約12キロと1人で持ち運べ、取り扱いが楽になったそうです。
 原さんは「作業は圧倒的に楽。水田の位置情報を登録したので、来年以降も全く同じ位置へ種もみをまくことができます。汎用性も高く、いろいろな農作業に使えるのも助かる」と使い勝手の良さを実感しています。
新十津川町内で行われたドローンによる水稲直播の実証試験=5月9日午後0時30分

新十津川町内で行われたドローンによる水稲直播の実証試験

 空知管内新十津川町の山本英之さん(47)の水田でも5月9日、農業用ドローンによる種もみの直播が行われました。昨年度に引き続き、同町やピンネ農協などが実施した実証試験です。20アールの水田に「ななつぼし」の種もみ約15キロを5分ほどでまき終えました。
ドローンのタンクへ積み込まれる「ななつぼし」の種もみ=5月9日、新十津川町

ドローンのタンクへ積み込まれる「ななつぼし」の種もみ

 同町では約4割の稲作農家がドローンを共同または単独で保有し、除草剤などの散布に使用しています。直播の実証試験を見守った新十津川町産業振興課の得地史郎さん(48)は「新十津川町は家族経営の農家が多く、人手は限られています。全ての農作業をドローンで行うことはできませんが、(人手を補う)有効な手段の一つになる」と話します。
山本さんも「手間が掛からないので、少ない人数のまま規模拡大に挑戦できるのではないか。これからも続けていきたい」と期待しています。
圃場(ほじょう)でドローンを操縦する市川範之さん=5月20日午後2時20分、旭川市西神楽

圃場(ほじょう)でドローンを操縦する市川範之さん

 直播は苗の移植に比べ、根が深くまで育ちにくく倒れやすいなどの課題があります。そこで、「ななつぼし」などに比べて茎が短く、倒れにくい直播用の品種が開発されています。2019年からドローン直播を行う旭川市西神楽の農業生産法人市川農場は、今年は直播用品種「さんさんまる」の種もみをまきました。
市川農場が開発した肥料。ドローンで散布しやすい大きさの粒にそろえた=5月20日午後2時20分、旭川市西神楽

市川農場が開発した肥料。ドローンで散布しやすい大きさの粒にそろえた

 「さんさんまる」は道産ブランド米「ゆめぴりか」に近い品種で、食味のよさも特徴です。同農場では21年、大きさや成分などがドローン散布に適した肥料を開発。ドローンに搭載したカメラで上空から稲の状況を確認し、生育が遅れている場所にだけ、この肥料を追加することもあります。肥料を効率的に使えるだけでなく、空から肥料を散布することにより、農機より圃場を傷めなくて済むそうです。
ドローンのタンクへ肥料を入れる市川さん=5月20日、旭川市西神楽

ドローンのタンクへ肥料を入れる市川さん

 情報通信技術(ICT)などを駆使したスマート農業の一角を担う農業用ドローン。同農場代表の市川範之さん(49)は「一般的な田植え機は1台300万~400万円くらいする。(人気の機種で150万円前後の)農業用ドローンの活用はコスト削減になる」と話します。
種もみをまくドローンと苗を移植する田植え機=5月13日午前9時15分、深川市

種もみをまくドローンと苗を移植する田植え機=

 道農政部によると、全道での水稲直播による作付面積は13年の1399ヘクタールから21年には2996ヘクタールと倍増しています。現時点では、水田で専用の機械を操縦し、種もみをまくやり方が主流ですが、ホクレン岩見沢支所営農支援室の技師大上大輔さん(53)は「天候に左右されやすいなどの課題もあるが、より手間と費用のかからないドローン直播は、今後さらに増えていくのではないか」とみています。

(参考:北海道新聞ニュースエディター)

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