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新篠津村に新しい天文台が完成しました。口径50センチの道内有数の大型望遠鏡を備えた設備です。木星の縞模様や土星の輪もくっきりと見えます。
道内でも珍しい「フルオープン」スタイルの天文台です。
しんしのつ天文台 北海道初のユニーク構造、支える2人の天文ファン
石狩管内新篠津村で3日、「しんしのつ天文台」がオープンしました。口径50センチ。道内有数のサイズの大型望遠鏡を備えた本格的な天文台です。建屋を移動させて、基礎に固定した望遠鏡で天体観察を行う「フルオープンスライド式」を採用しており、全国的にも珍しいと話題になりました。開設したのは村ですが、2人の天文ファンの大きな後押しがありました。
しんしのつ天文台の最大の特徴は、箱形の建屋をレール上で移動させ、固定した望遠鏡を出し入れする仕組みです。新篠津村によると、採用している天文台は全国的にも珍しく、道内では初めてだそうです。
道内でも先例がある天井が開く方式も検討しましたが、村の担当者は「より開放的に天体観測が楽しめるようにした」といいます。オープン初日の3日に、多数の人が詰めかけましたが、目の前に望遠鏡があるので皆待つのが苦にならない様子でした。建設費は約4800万円。8月に着工し、10月中旬に完成しました。
望遠鏡は凹面鏡で集光する反射望遠鏡で、50センチの口径は道内の自治体が設置する天体望遠鏡の中では札幌市青少年科学館の60センチに次ぐ6番目の大きさです。補助の望遠鏡として、上部に口径15センチの屈折式望遠鏡が取り付けられています。
オープン初日、雲が空全体を覆うあいにくの天気でしたが、札幌などから200人余りが来場しました。望遠鏡が捉えたのは星ではなく、近くの石狩川にかかる「たっぷ大橋」。それでも、最上部にある照明の細部まではっきり分かり、順番にのぞいた人からは「見えた」と満足そうな声が上がりました。
観測に先立って行われた開会式。石塚隆村長は「新篠津には山も高い建物もありません」と村が天体観測の適地であることをアピールします。さらに2人の名前を挙げて感謝の思いを述べました。一人は望遠鏡を寄贈した山本修さん(66)、もう一人は村との橋渡し役になった林美輝(よしてる)さん(65)です。
奈良市にある東大寺学園中高で長く地学教諭を務めた山本さんは、2020年3月に定年退職し、翌4月から立命館慶祥中高(江別市)で非常勤講師として働き始めました。「ドーム形の天文台のある家に住みたい」。幼いころからの夢をかなえるためで、道内で適地を探すつもりでした。
北海道に来てから間もないころ、札幌市天文台(中央区中島公園)によく行っていた高校の教え子を通じ、知り合ったのが天文台職員の林さんでした。共に天文ファンで年齢も近い2人はすぐ意気投合。林さんの実家のある新篠津に出向き、一緒に星空観察もするようになりました。
ちょうどそのころ、新篠津村は「星座観測スポット」を開設していました。現在、天文台がある場所のすぐ隣です。村が主催する星座観測体験会にも参加するうち、山本さんはこの地に望遠鏡を置きたいと考えるようになりました。
ただ、自分で天文台を持つことは費用面などから現実的でないと考え直します。21年8月、林さんと一緒に石塚村長を訪ね、その思いを伝えました。既に入手していた望遠鏡は中古ですが、新品だと1千万円以上するという高価なものです。村で活用法を検討した結果、23年度の予算で天文台を建設することが決まりました。
山本さんは今年4月に村地域おこし協力隊に転身しました。「天文台に関わりたい」という思いからです。そして迎えたオープン初日。メインスタッフとして、来場者一人一人が望遠鏡をのぞくのを手伝いながら、楽しそうでした。
林さんはパート勤務の札幌市天文台と掛け持ちで、しんしのつ天文台の「星空指導員」を務めます。この日も待っている来場者のために望遠鏡の特徴などを説明しました。「村の人たちにボランティアで運営を手伝ってもらえれば」とアイデアを出すなど意欲満々でした。
2人の天文ファンの物語はまだ続きそうです。
天文台の所在地は新篠津村第48線北17のふれあい公園内。本年度の開館は28日までの金、土曜と祝前日(22日)の午後7~10時。無料。火曜は予約者のみ有料で受け付けます。詳しくは専用サイトhttps://www.vill.shinshinotsu.hokkaido.jp/stargazing/へ。
(参考:北海道新聞電子版、新篠津村公式HP)
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