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ハリオアマツバメって知っていました?5月に北海道にも渡ってくる鳥の一種ですが、常に飛び続けているので、生態がよく分かっていなかったそうです。それを道内の研究者が生態を調査し、少しずつ解明されてきました。
飛びながら睡眠、食事、交尾も 謎の渡り鳥ハリオアマツバメ 道内研究者が生態調査
飛びながら眠り、飛びながらえさを食べ、飛びながら交尾をする―。北海道とオーストラリアを行き来する渡り鳥ハリオアマツバメは、繁殖期で巣にいる時以外、一生のほとんどを空中で過ごすといわれます。
いわれる、と付くのには理由があります。めったに地上に降りないため、鳥類の中でも特に行動観察が難しく、生態は謎に包まれているためです。近年、道内の研究者らにより少しずつ明らかになってきました。
渡りルート解明
2021年、酪農学園大(江別市)の森さやか准教授=札幌市出身=と長崎大などの研究グループにより、ハリオアマツバメの渡りのルートが明らかになりました。繁殖のため十勝管内(詳細な場所は非公表)に飛来した個体に記録装置を付けて追跡。東アジアからオセアニアにかけて大きく8の字を描くようなルートで渡っていました。総移動距離は地球1周に相当する約4万キロにもなり、渡り鳥の中でも非常に特殊なルートでした。
森准教授ら研究グループは15年、ハリオアマツバメの研究に着手しました。10年代より研究用に普及していた重さ1グラム未満のジオロケーターという小型の移動記録装置に着目。道内の繁殖地で捕獲したハリオアマツバメに記録装置を取り付けて放ち、翌年に同じ場所に戻ってきたら再び捕獲して記録装置を回収する計画でした。
ただ最初の3年間は一つも回収することができなかったそうです。森准教授は「装置が脱落したのかもしれません。装着が個体の行動に悪影響を与える可能性もあり、試行錯誤でした」と振り返ります。
18年、十勝管内の営巣地で捕獲した5羽のハリオアマツバメに、装着方法を改良して記録装置を取り付けました。翌年の19年、営巣地へ戻ってきた4羽から記録装置の回収に成功。うち3羽分の記録装置から渡りの経路と越冬地オーストラリアの場所を突き止めました。8の字で渡るルートは翌年にも確認できました。8の字のルートで渡る要因は、食物条件や貿易風などの気象条件の影響が考えられるそうです。
森准教授らはハリオアマツバメの繁殖地での基礎生態調査も進めています。十勝管内ではハリオアマツバメの巣内に小型カメラを設置。巣立ち前のヒナが、巣の内壁に足でしがみついて盛んに羽ばたく様子を確認しました。森准教授は「飛ぶことに特化した鳥。巣立ち前から飛ぶ練習をしているのだろう」と話します。衛星利用測位システム(GPS)記録装置を用いた繁殖個体の行動範囲の調査やひなへの給餌物の調査なども進めています。
環境悪化で個体数減か
越冬地オーストラリアの研究者によると、越冬するハリオアマツバメは過去60年間で80%減少しています。原因は解明されていませんが、繁殖地の環境の悪化にある可能性が高いそうです。森林伐採により、営巣に適した大きな樹洞を持つ大木は減少したと考えられます。餌となる飛翔(ひしょう)性昆虫は地球規模で減少しています。
十勝管内の繁殖地では19年、研究のために観察していたハリオアマツバメの巣が特定外来生物に指定されているアライグマに次々と襲われました。道東では近年アライグマが激増しており、ハリオアマツバメへの影響も心配されます。森准教授は「このままではハリオアマツバメが減少の一途をたどります」と危惧します。
札幌市豊平区の西岡水源池。例年5~9月ごろまでハリオアマツバメの群れが飛来し、飛びながら池の水を飲む様子を観察することができます。謎に満ちたハリオアマツバメの生態を間近に観察できる貴重な場所です。「シュッ」と音を立てながら高速飛行する様子は迫力満点。最近ハリオアマツバメの水飲みを撮影するため、多くの愛鳥家が訪れるようになりました。
6月下旬、池では20人ほどの愛鳥家らがカメラを構えていました。東京都から訪れた公務員の男性は「飛ぶのが速すぎてなかなか撮影できません。でも面白い被写体ですね。明日も撮ります」と意気込みます。
西岡水源池がある西岡公園管理事務所では9月中旬まで、ハリオマツバメの生態に関するコーナーを設けています。8の字を描く渡りのルートや園内に落ちていたハリオアマツバメの尾羽などを展示。「ハリオ」の名の通り、尾羽の軸の先は針のようにとがっていました。公園利用者からも「こんな鳥がいたのね」と好評です。
同事務所の展示を担当する札幌市公園緑化協会の中林晃さん(40)もハリオアマツバメの謎にひかれました。「ハリオアマツバメは西岡公園の目玉です。こんな面白い鳥がいるんだなと、公園を訪れた方に知ってもらいたい」と話します。
(参考:北海道新聞ニュースエディター)
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