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なまらあちこち北海道|開業は簡単でもうかる?キッチンカー

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キッチンカーでの販売がいたる所で見られます。キッチンカーでの営業は簡単に始められるのでしょうか、費用はどれくらいかかるのでしょうか。そんな疑問に答えるレポートが届きました。

開業は簡単? もうかる? 知られざるキッチンカー

 週末の大型イベントで、ショッピングセンターで、はたまた町内会のお祭りで。車1台で身軽に移動し、飲食を販売するキッチンカーを目にする機会が増えました。新型コロナ禍で休業や時短営業を余儀なくされた飲食業が相次ぎ参入し、利用する人が増えつつも、どこか「神出鬼没」のイメージがあるキッチンカー。始めるのは簡単? もうかる? その世界をのぞいてみると―。

苫小牧港西港区で開かれた道内最大級のキッチンカーイベント

苫小牧港西港区で開かれた道内最大級のキッチンカーイベント

 豚丼、ギョーザ、タコライスにかき氷、アップルパイ…。ご飯や軽食、スイーツもあるわあるわ。
 7月上旬の計4日間、苫小牧港西港区の公園で開かれた道内最大級のキッチンカーイベント「キッチンカー21@トマベイウォーターフロント」。地元苫小牧や札幌、十勝管内などから連日、40台超のキッチンカーが集まり、家族連れや友人同士など老若男女の来場者でにぎわいました。

イベント探して出かける

 妻、生後6カ月の長女と訪れた苫小牧市の会社員中島優人さん(30)が購入したのは、ホットドッグ、もつ煮込みと、ホタテのおにぎり。「味の外れがないですね」と満足そうです。
 そして「おいしいものが一度に集まるキッチンカーイベントは大好き。次にどこで開かれるのか、探して出かけるようにしています」と話しました。こうした熱心なキッチンカーファンが増えているようです。
 道食品衛生課によると、道内で自動車を使った飲食の調理、提供の許可を受けた施設は2014年度の548から、21年度には1389と約2・5倍に増えました。札幌市保健所食の安全推進課によると、このうち札幌市内では14年度の166から、22年度には495と約3倍に増えています。
 興味深いのは、道内のキッチンカーは新型コロナウイルスの流行が始まった20年以降に飲食業からの参入によって急激に増えたわけではなく、コロナ禍以前から年々、右肩上がりで増えてきていたことです。
 これはなぜでしょうか。
 東京で学生時代をおくっていた2006年にキッチンカーを開業し、首都圏で6年間たこ焼きを売った後、札幌に戻り飼料用タンクなどを製造する会社を継いだ北新化工(札幌)の栢谷(かやたに)隆司代表取締役(39)に話を聞きに行きました。
キッチンカー業界に携わって15年超。北新化工の栢谷さん

キッチンカー業界に携わって15年超。北新化工の栢谷さん

 社内にケータリング事業部を設立して年間数十台のキッチンカー製作や、登録する道内の200台超のキッチンカーをイベントへ派遣する業務を行うなど、かれこれ15年超、キッチンカーの世界にいる栢谷さん。「もともとは米国で(キッチンカーを意味する)『フードトラック』が流行り、これがおしゃれでカッコイイとして東京でもブームになりました。その流れが北海道にも来たのが2010年代の半ばごろではないでしょうか」と教えてくれました。
 新型コロナ流行で活路を見いだすため飲食店が続々参入してきたのは、流行の第2波といえそうです。
 では、キッチンカーの開業は容易なのでしょうか。

車の費用は250万~300万円

 まず調理には食品衛生責任者の資格が必要です。調理師免許を持っていなくても、所要6時間の養成講習を受ければ取得出来ます。
 次は実際に営業する車をどうするか。栢谷さんによると、車体は各種あり、一番安く約7割の人が選ぶ軽トラックの場合、新車で100万円前後、中古で75万円前後で購入できます。これに厨房(ちゅうぼう)の箱を載せるなどの改造費が180万円ほどかかります。合計すると、車に関しての費用は250万~300万円程度といえそうです。
多くの来場者でにぎわう苫小牧港西港区のキッチンカーイベント

多くの来場者でにぎわう苫小牧港西港区のキッチンカーイベント

 実際に開業すると、平日はショッピングセンターなどで、週末はより多くの人が集まるイベント会場や道の駅などで販売するのが一般的です。経費は売り上げの半分が目安で、内訳は仕入れが30%、出店料15%、燃料費が5%程度といいます。
 コロナ禍がやや落ち着いた今年、栢谷さんが実感しているのは、キッチンカー需要の高まりです。今年は大型イベントで約30、学校祭でも20~30校からキッチンカー派遣の依頼があるといいます。さらにこれまで屋台が主流だった夏祭りでは、主催する町内会の役員たちの高齢化で準備に時間のかかる屋台を出すのが難しくなり、町内会の準備や片付けが不要のキッチンカーを呼ぶ流れが加速しているといいます。

1日の売上高70万円も

 ところで下世話な話ですが、キッチンカーはもうかるものなのでしょうか。数多くの現場を見てきた栢谷さんはこう分析します。かなり稼ぐのは全体の1~2割、まずまずが6割に対し、2割ほどは厳しいといいます。「本当に売れるキッチンカーは大きなイベントなら1日で30万~40万円稼ぎます。60万~70万円販売することもあります」(栢谷さん)。
北新化工が作成したキッチンカー派遣のPRチラシ。依頼の電話がひっきりなしに掛かってきたといいます

北新化工が作成したキッチンカー派遣のPRチラシ。
依頼の電話がひっきりなしに掛かってきたといいます

 稼ぐのは、お客さんの注文を受けると、あまり待たせずに手際よく商品を渡すなど、とにかく熱意のある人だとか。振るわないのは、売り上げが伸びなくても自分が楽しければそれでいいとのんびりエンジョイする人で、プロが見ればすぐに見分けられるといいます。
 もちろん扱う飲食の種類も重要です。キッチンカーで扱うのは、焼き鳥やたこ焼き、ケバブなどの軽食から、タコライスやハンバーガーなどのご飯モノ、そば、おでんなどの汁物に、ドリンク系、さらにはクレープやソフトクリームなどのスイーツ系まで多種多様です。

扱う飲食、タイプは二つ

 何をどう選べばいいのでしょうか。キッチンカーには大きく二つのタイプがあるといいます。一方では季節やイベントに合わせ、扱う商品を臨機応変に変える車。他方ではこだわりの商品に特化するタイプ。どちらも売り上げを伸ばせますが、専門店化した方がファンが付きやすく、イベントにも呼ばれやすいといいます。
 スイーツ系は流行があり、しばらく前にはタピオカドリンクが大人気でした。「流行を先取りしていち早く取り入れるのが重要」と栢谷さん。最近はアメをコーティングした「りんごあめ」や、おしゃれな揚げパン、創作たい焼きなどの人気が高いといいます。

若い女性が続々開業

 キッチンカーでこれらのスイーツ系を展開しているのは、20~30歳代の若い女性たちに多いようです。ここにきて若者の開業が大きく増えてきたのは、インスタグラムやツイッターなどの普及も大きな要因です。SNSを駆使することで、こだわりの一品を紹介したり、いつどこで出店するかをこまめに知らせたりすることで、固定ファンをしっかりつかむことができるからです。
きぶん屋のキッチンカー

きぶん屋のキッチンカー

 その一人、昨年6月に開業した恵庭市の小野あかねさん(21)に話を伺いに、千歳市内のショッピングセンターに向かいました。
 料理好きが高じてキッチンカーを開業した小野さんは恵庭、千歳、北広島市内のショッピングセンターの入り口付近や道の駅などを回っています。今年は学校祭にも参加し、7月は計17日間、店を出します。
 季節やイベントに合わせて、チーズスティックを出したり、お汁粉を出したりとメニューを変幻自在に変えるため店名を「きぶん屋」にしたという小野さん。
千歳のショッピングセンターで販売したメニュー

千歳のショッピングセンターで販売したメニュー

 この日は、主婦や小さい子供連れの女性たちが多い平日のショッピングセンターということもあり、クロワッサンとワッフルを組み合わせた「クロッフル」のキャラメルナッツや、チョコバナナなどに加え、カフェゼリーミルクやシェイクをそろえていました。
 小野さんは1年販売してみて、分かったことがあります。「キッチンカーの売り上げは、やっぱり天気が本当に大事。雨が降るとお客さんが少ないけど、晴れの日には売れる。それに、日曜日にお金を使った反動か、月曜日には売れませんね」
「クロッフルとコーヒーシェイクをどうぞ」 小野さん(右)と祖母の多田さん

「クロッフルとコーヒーシェイクをどうぞ」 小野さん(右)と祖母の多田さん

 午前10時開店のショッピングセンターの場合、準備を始められるのが午前9時。午後5時に販売を終えると、即片付けをするなど忙しいですが、開業以来、ずっと祖母の多田洋子さん(72)が手伝ってくれています。祖母との二人三脚はキッチンカー業界でも珍しく、「もっとたくさんのイベントに出てみたい」と楽しそうです。
 一方、コロナ禍で参入が相次いだ飲食業界。「松尾ジンギスカン」を展開するマツオ(滝川)も21年5月にレンタカーで始め、同年11月には自前のキッチンカーを導入しました。
マツオが展開するキッチンカー

マツオが展開するキッチンカー

 「羊料理の魅力を知ってもらいたい」(同社)と、定番のジンギスカン丼や、ジンギスカンの皿盛りに加え、キッチンカー限定で羊肉のつくねや、羊肉メンチカツなど多彩なラインアップをそろえて、全道各地のイベント会場に出向いています。
 気軽に味を楽しめるキッチンカーをきっかけに、店舗を訪れてもらえる可能性があるとみています。一方で、6月にはキッチンカー16台を集めたイベントを滝川市内の松尾ジンギスカン本店の駐車場で開くなどキッチンカー自体の可能性を高く評価。同社は「将来的には道外を回ることも検討したい」としています。
店舗では提供していないキッチンカー限定商品も多い

店舗では提供していないキッチンカー限定商品も多い

 キッチンカー業界の盛り上がりはどこまで続くのでしょうか。
 2011年に自らキッチンカーを始め、現在は開業支援やイベントへの派遣仲介も行うパンジ(札幌)の河口淳基代表取締役(39)は「売れる場所は、いわば『陸の孤島化』しているところ。分かりやすく言えば、滞在時間が長く、食事からドリンク、デザートまですべてキッチンカーで購入するところで、代表的なのは音楽フェスですね」と話します。
2011年にキッチンカーを始めたパンジの河口さん

2011年にキッチンカーを始めたパンジの河口さん

 ただ、いずれキッチンカーの増加分ほどは、イベントは大きく増えていかないのではないかとも見ています。そうなった場合、大きく増えたキッチンカーでは淘汰(とうた)が起こる可能性があり、「いかに商品にこだわりを持って他との違いを出していくかが重要です。キッチンカーで買うことの価値を高めていかないといけません」と話します。

地方にこそチャンスある

 一方で、河口さんはこんな指摘もしてくれました。北海道内では札幌以外の地方ではキッチンカーが多くなく、物珍しさも相まって、よく売れるそうです。そのため実際に都市を避け、地方を中心に回って利益を上げている車もあるといいます。地方にはキッチンカーの大きなチャンスがありそうです。
(参考:北海道新聞デジタル版)

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