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北海道新聞にも連載されている「ねえ、ぴよちゃん」が連載2500回になりました。作者の青沼貴子さんに「ぴよちゃん」にまつわるお話を伺いました。
「ねえ、ぴよちゃん」本紙連載2500回 作者の青沼貴子さんが語る「昭和の風味」
北海道新聞で2017年4月1日に連載が始まった4コマ漫画「ねえ、ぴよちゃん」が4月26日の掲載分で、2500回を迎えました。小学3年生の花乃ひよこ、通称「ぴよちゃん」が、大好きな飼い猫の又吉(またきち)や家族、学校の友達、ご近所さんらと繰り広げる毎日を、ほのぼのと描いて7年あまり。
全国の地方紙でも掲載されているほか、3月に第10巻が出た単行本(竹書房)はシリーズ累計34万1千部発行され、まとめて読み返すファンも多い人気作です。作者は函館市出身の青沼貴子さん。育児漫画「ママはぽよぽよザウルスがお好き」など数多くのヒットを生み出してきた、キャリア40年あまりのベテラン漫画家です。4月にサイン会で来札したのを機に、作品の裏話などを聞きました。(文化部 渡部淳)
あおぬま・たかこ1960年生まれ。函館東高(現市立函館高)卒業後、東京のデザイン専門学校在籍中に少女漫画誌へ投稿し、1981年に「ブルー・ブルース」でデビュー。1983年連載スタートの「ペルシャがすき!」は魔法少女ものに翻案され、テレビアニメ化。93~96年、長男、長女の子育てを実録風漫画にした連載「ママはぽよぽよザウルスがお好き」がヒットし、テレビアニメやドラマ「板橋マダムス」として映像化された。2005~10年に毎週金曜日の本紙夕刊で4コマ漫画「たんぽぽちゃん」を連載。17年から全国11紙で4コマ漫画「ねえ、ぴよちゃん」を連載中。東京都在住。
――新聞連載の4コマ漫画は、基本的に休刊日以外は毎日載るものです。膨大な本数ですが、どんなペースで描いてるんでしょうか。
月に2回、1度に15本ずつ提出しています。15本描くのに8日間ぐらいかかりますね。フルカラーなので、それだけ時間が必要です。アイデア出しも大変ですし、連載も8年目に入って「このネタ、以前も描いたかな」という心配が増えました。若いアシスタントさんがチェックしてくれるので、助かります。
――長い漫画家キャリアでは、ストーリー物やエッセー物が主で、4コマ漫画はそれほど多くありません。新聞連載を始めるのは大変だったのでは。
以前、雑誌で4コマ漫画を連載したときは、1ページに2本ずつ描いていました。それに換算すれば、1カ月で30本=15ページ。そんなに大変ではないだろうと思いましたが、雑誌と違って話を連続させず、1本で完結させるのが基本なので勝手の違いはありましたね。
コマも、雑誌などに比べると小さい。見栄えがするよう、キャラクターはデフォルメして描いています。手の指は5本きっちりではなく(ミトンの手袋のような)〝ぼっこ〟の手にして。ぴよちゃんの頭には花の髪飾りも忘れずに。背景も線がうるさく見えないよう、状況が分かる最低限の描き込みでシンプルにしています。新聞連載を通じていろいろな気付き、学びがありました。
このあと又吉誕生の秘密、登場人物への思いなどを語っています
――長い連載の中で登場人物それぞれ、さまざまな背景や人間関係があることが一つ一つ分かってきて、それがまた面白いです。
ぴよちゃんの近所の神社の宮司さんは娘と同居しています。その娘の子がぴよちゃんの同級生、気が優しくて柔道が強い梅田まさる君。まさる君のお父さんは入り婿で、いずれ神社を継ぐのかもしれない。キャラクターそれぞれに隠れた設定があって、いつかは描こうと思っています。
ほかにも、ぴよちゃんのお母さん・すみれさんの実家は海辺町で、お父さんが画家という話を描きました。ぴよちゃんは絵がうまいというエピソードが何度か出てくるのも、その血筋なのか…とか。いずれ掘り下げたいですね。
■誰が一番人気者?
――読者の間で、登場人物の誰が一番人気がありますか。
単行本に読者の方が感想を寄せられるはがきが入っていて、その書き込みでは1番が又吉、2番がひみこちゃんみたいです。主人公のぴよちゃんを上回って。やっぱりあの〝ツンデレ〟な感じが良いのでしょうか。
――連載を始めるに当たって、考えたことは。
少女漫画誌でデビューしたときから、「絵柄は少女漫画らしくないけど、子どものキャラクターはかわいいから、子どもだけ描けば」なんて編集者さんから褒められました。確かに子どもを描くのは自分でも好きです。「ねえ、ぴよちゃん」は子どもを中心に据えて、楽しく描いています。
もともと新聞連載の4コマ漫画が大好きで、小学校に上がる前から北海道新聞で佃公彦先生の「ちびっこ紳士」(途中から「ほのぼの君」に改題)を読んでいました。単行本も持っています。ほかにも長谷川町子先生の「サザエさん」など、大先輩の名作をたくさん読んできました。「新聞でファミリーもの4コマ漫画連載」を依頼され、それらとは何かひと味違うものにしなければと思い、考えたのが「しゃべる猫」を出すことでした。
40年近く前に少女漫画誌で妖怪コメディー漫画「おどろんエンジェル」を連載したとき、「又吉」というキャラクターを出しました。関西弁でしゃべるオリジナルの化け猫で、割と人気があったのでこれを踏襲しようと考えました。体のしま模様なども、今の又吉と似ています。単に「ニャー」と鳴くだけでは話が続かないと思いました。
さすがに「ぴよちゃん」の作品世界では妖怪ではなく普通の猫ですが、動物同士でしゃべり合い、人の言葉を理解する。そんな漫画にしようと。歩き方は人間のように2本足にするか四つんばいにするか、連載開始直前まで迷いました。コマが小さい新聞連載では2本足で立った方が収まりが良いので、そのようにしました。
ちなみにその「おどろんエンジェル」連載中に腰痛に悩まされ、「妖怪漫画を描き始めたから、たたられたんだ」と思い込んだことがあります。そしたら担当編集さんが直接あの妖怪漫画の巨匠、水木しげる先生に電話で問い合わせて、先生が「僕はたたられたことないけどね」っておっしゃったそうです(爆笑)。じゃあ私も、たたりじゃないんだな、と。
若い人には新鮮? 「昭和飛び」
――「ねえ、ぴよちゃん」では、あえて昭和の作風で描くことを心掛けているそうですね。
「サザエさん」のように、自分がたくさん読んできた昭和のほのぼの4コマ的世界って、おそらくこれから出てくる若い漫画家さんは実感がなく、描けないかも。そういう風味を、せめて私が引き継ぎたいと思っています。
例えば4コマ目のオチで、登場人物がずっこけてピョーンと飛ぶ。最初、私は何も考えず自然に描いたんですが、若いアシスタント…そのとき手伝ってくれた息子ですけど…が原稿にベタ塗りしながら「これ、昭和(時代の作品)しか描かないよ」って指摘して。そうなのか!と気付いてから、意識して積極的に取り入れるようになりました。うちの仕事場では「昭和飛び」と呼んでいます(笑い)。若い世代が読むと、新鮮に映るみたいですね。
――エッセー的なものや、昭和テイストの4コマ漫画など、複数の作品を並行して描き続けてきましたね。「ねえ、ぴよちゃん」はこの先もまだまだ行けそうですか。
7年あまり2500回、子どもたちを含め若いアシスタントさんの協力もあり、やって来られました。あと同じくらい、倍ぐらいの期間はいけると思います(笑い)。とにかく、健康に注意して、ですね。
(参考:北海道新聞メールサービス)
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